法華寺は平城京跡の北東にあり、総国分尼寺として有名だ。ここ数ヶ月門を閉ざしていたが、もうそろそろいいのではないかと行ってみることにした。
本堂は入口からすぐ左手にある。靴を脱いで上がると、中央に2つの厨子が配置されていた。左は古色蒼然としており、扉は閉じられている。右の厨子はやや新しく、扉は開かれていた。
その中に美しい十一面観音像が安置されていた。高さ1m、像全体が黄土色であり、説明によるとインドから取り寄せた白檀を彫ったものであるという。右腰がややくびれ、これは仏というより生身の女性を思わせる。右手は膝の部分の衣を軽く摘まみ右脚を踏み出そうとしている。説明で気付いたが、普通は膝まで手は届かない。つまりデフォルメされているのだが、少しも違和感がない。セザンヌか!
光背は板ではなく、蓮の葉や蕾が茎ごと多数背後から伸びている。こんな光背見たことない。
もう一度全身を見る。美しい。さすが国宝、と思ったら、これはレプリカとのこと。本物は左の厨子に安置され、普段は開扉されない、年に2回(6/5-10、10/25-11/10)、期間限定で開帳されるそうだ。
本堂を出て西の庭園を探したが扉は閉まっていた。ここはカキツバタが有名なのだが、既に時期を過ぎている。6月10日まで開いていたが、それ以降は閉めるらしい。
反転して「から風呂」を見る。
ここは光明皇后が開いたという蒸し風呂である。
言い忘れたが、この地は不比等の館跡であり、娘の光明皇后が後を継いで尼寺とした。皇族以外が皇后になった嚆矢となっている。
帰りに平城宮跡の東にある宇奈多理座高御魂神社に寄る。ウナタリにいますタカミムスビ神社と読む。元は法華寺の鎮守だったという。神社は今日も閉まっていた。格子の隙間から中を撮影した。