子どもを泥棒にしないために
「絵本に公序良俗を求めるなんて、時代錯誤のオバサン」と嗤われるかもしれません。それでも、言わせてください。
最近の絵本コーナーを席巻している「パンどろぼう」シリーズ。
何をかくそう、これは泥棒の話である。着ぐるみを着た小動物が、パン屋で万引きする話、である。店にしのびこむスリルや、盗んだ罪悪感をごまかそうと努力する姿が、面白おかしく描かれ、帯には「楽しいユーモア絵本」と銘打ってある。
しかし。ユーモアと称して、こんなお話を子どもに読ませて良いのか?
窃盗した事実を、笑ってすませて良いのか?
どうかお願いです、賢い保護者の方々!
子どもの将来に責任がある先生方!
窃盗を、まるで楽しい事であるかのように描く絵本に出会わせるより先に、
この「うさこちゃんとキャラメル」を読み聞かせてあげてください。
この絵本を読み聞かせてもらう時、子どもたちは「盗んではならない」という絶対に大切なルールを、心で学ぶことができます。数ページで、もう、戸惑い・疑問・怒りや悲しみが湧いてきます。大人と子どもの間で、窃盗をめぐって、自然に対話が始まることでしょう。そして「ミッフィー、こんなことしちゃダメだったよね」と嘆き合う…。
それが、作者の狙いです。
作者ディック・ブルーナが、「うさこちゃん」を世に送り出したのは1955年。
本作は2008年の作品です。五十年以上もかけて愛し、育てて来た、あの愛すべきミッフィーに、こんなことまでさせて…!それでも作者は、読者の子どもの心に植え付けたかったのです、「盗んではならない。きゃらめる一つも、盗んではならない」と。
それは聖書の十戒にも含まれる、本当に大切な教えです。
どうか、良心ある書店の方々! オバサンの、切なる願いです。
どろぼうを楽しむ話ではなく、この「うさこちゃんときゃらめる」を店頭に平積みしていただけませんか。長い目で見れば「万引きは犯罪です」のステッカーより、ずっと抑止力があるはずです。