初めての試練!?
先日、小学校1年生のKちゃんのお家を訪ねると、Kちゃんの笑顔がいつも違う。
「あ! 歯がぬけたね!」
「うん。そこにあるから、見てー」と、Kちゃんはリビングの棚を指さす。見ると、ジップロックの中に、白いかけらのような歯が一つ。見落としそうに、小さい。それでも彼女は、「血もついてる」と誇らし気だ。
そのあとも「学校で歯がずっとグラグラして気持ち悪かった」「お父さんに抜いてもらった」と、Kちゃんの話は尽きなかった。
歯が抜ける―
子どもにとっては、大事件である。自分の体の一部が、口の中で損なわれていく。痛みを伴い、血も流れる。しかもそれが、何度も繰り返される。子どもたちにとって、それは初めての試練かもしれない。
そんな試練を取り上げた絵本は、たくさんあります。中でもおススメは、次の四冊!
まずは、タイトルもそのままに「歯がぬけた」(中川ひろたか:作 大島妙子:絵 PHP研究所) 画風といい展開といい、めちゃくちゃに面白い。子どもたちの初めての試練を、思い切り笑い飛ばしてくれます。まだ一本も抜けていない子も、これから歯が抜けるのが楽しみになるはず(笑)!
二冊目は「ロージー、はがぬける」(マリアン・マクドナルド:作 メリッサ・スイート:絵 まつのまさこ:訳 富山房)原題はROSIE’S BABY TOOTH. 初めて抜けた大事な乳歯と、これから抜けていく口の中の歯。両方ともが気になって、落ち着かないロージー。外国では「抜けた乳歯を枕の下に入れておくと、妖精が銀貨と交換してくれる」という習わしがあるようですが、それを逆手に取ることにします。戸惑いに押しつぶされないロージーと、見守る家族の姿が素敵です。
三冊目は「うみべの朝」(ロバート・マックロスキー:作 石井桃子:訳 岩波書店)
原題はONE MORNING IN MAINE. 朝、サリーが「歯が 一本 ぐらぐらしている」と気づくところから、一日が始まります。結果的にそれは、昨日と同じではない、かけがえのない一日の始まりにふさわしい出来事となりました。サリーがその一日の尊さに気づくのは、日暮れを迎えてからでしょうか? それとも、大人になってから…? 大きな海と小さな歯が心に残る、大型の古典的名作です。
そして、もう一冊、ぜひおススメしたいのが「ねずみとおうさま」(岩波の子どもの本)なのですが…。これは、裏話もたっぷりな重厚な作品なので、次回じっくり、一冊まるごとで紹介させて頂くことにしましょう。
試練の時は、成長の時。
これらの絵本はしっかりと、歯抜けの子どもたちの心の栄養分となってくれるに違いありません。その笑顔、最高だよ~!