お月様が公転している

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ホラー映画「残穢」

2020-07-19 21:18:00 | 感想

ホラー映画「残穢─住んではいけない部屋─」を見ました。
ずっと見ようと思っていたので、やっと視聴できました。ネタバレ含む感想をつらつらと書いていきます。

この作品は2015年に映画化されました。小野不由美さんの本が原作です。私は原作は読んでおりません。

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「残穢」は「ざんえ」と読みます。字の通り「残っている穢(けが)れ」がこの作品のテーマ。
その土地で起こった不幸が、その後もずっとずっと不幸の連鎖を引き起こす。

一言でいうと、最高でした。
良いホラーに出会えたなと思いました。
原作は読んでいませんが、最初から最後まで本を読んでいるような展開の仕方です。
ビックリホラー要素も多少ありますが、あまり下品ではない。どちらかというと、静かに怖い、私好みのホラーです。

見終わったあとも、その日は恐怖感を引きずりました。
というのも、実際にあり得る内容だったからです。

冒頭は、怪談話をするかのような、ぼそぼそとした主演の竹内結子の声から始まりますが、粗い映像とよく合って、最初から雰囲気がとても良い。

オカルト作家をしている「私」は読者から送られる恐怖体験をもとに作品を書いていました。

そして、読者「久保さん」からの手紙が物語の始まり。
いや、厳密にいうと、もう既に始まっていたのですが。

久保さんの住む部屋で、何かが畳を擦る音がする。畳の間の戸を開けた瞬間、着物の帯を見た気がした、という話から二人は、着物を着た女が首を吊り、帯が揺れて畳を擦っているのではないか、と想像します。
その想像したシーンがかなりセンセーショナル。数秒間、首吊りの女が揺れている映像。このシーンは序盤ですが、かなり印象深いです。気持ち悪さが半端ない。直視するのがしんどい、見てて良いのか?と思わされる。

私と久保さんはやりとりを重ねるうちに、手紙からメール、電話するようになり、直接会うようになります。距離感が近くなっていくのが地味に面白い。
二人は久保さんの部屋で起こる現象について調べていきます。
その部屋だけでなく、マンション全体で何かが起こっている。引越した人の後を追うと、引越先で死んだ人もいた。

「何かある」と思った二人は、マンションが建っている土地自体を調べることになり、過去を探っていきます。すると次から次へと驚愕の話が出てくる。
昔の地図を照らし合わせて、誰の土地だったのか何があったのかを調べるシーンは恐怖とワクワク感がありました。
多くの奇妙な話の辻褄が合ったとき、ゾッとします。

次第に話は遠く離れた地域に伝わる話に繋がっていく。
かつて「私」に寄せられた他の読者の恐怖体験とも繋がり、業の深い、ヤバい話に触れることになります。
九州の館に行ったシーンでは、悪霊から守るために作られた仏壇と神棚が続く部屋が、妙な気持ち悪さを出していた。

冒頭のシーンが繋がったように、最終的に「私」にも繋がっていくんだろうと途中から予想しつつも、最後まで飽きずにドキドキしました。
炭坑封鎖による死者の怨念が根元。
そこから派生して、さらに派生して、穢れが残っていく。

ただ、ラストは少しチープでしたね。
オフィスで影が襲ってくる。部屋で首吊りの女がこちらを見ている。いかにも、怖いでしょ?て感じの見せ方。逆に冷める。
ラストだけ惜しいなーと思いました。でも後から考えると、最後はそれくらいチープでよかったかもしれない。でなければ本当に怖すぎる。

首を突っ込んで調べるのはやめて、それぞれ何事もなかったようにもとの生活に戻るけれど、後ろに赤ちゃんうつってるよ?!とか、子供が空(くう)をみてるよ!?とか、結局何も解決していないんですよね。
そしてきっとまた広がっていくんだ。
救いのない終わり。

見聞きしただけで呪われるっていうのが、「リング」や「らせん」ぽさを感じました。でもそれらの作品はかなりファンタジーです。
「残穢」の何がリアルって、実際に土地にまつわるヤバい話ってあると思うんですよね。

なぜかは分からないけど事故が頻発する場所とか、立地の問題もあるだろうけど頻繁に店が変わる土地とか、身近に結構あるんですよね。胡散臭いオカルトマニアみたいな発想ですが、「何かある」と思ってしまう。
日々起こる事故や火災、殺人事件、戦で死者がたくさん出た場所も日本各地にあるわけで、「何か」が残っている場所は珍しくないのかもな、と。
そう思うと、怖くありませんか?

とにかくとても良いホラー作品でした。