以前から何度か読んでいたが、元九州大学の精神科医・神田橋條治先生の講演録がネット上に公開されている。
専門医同士の講演録であるのだが、患者である自分が読んでも神田橋先生の人柄や患者に対する暖かい視線を感じることができる。
神田橋先生いわく、「双極性障害は気分屋的に生きれば、気分は安定する」そうである。
講演を読んでいても判るが、神田橋先生の診断は患者の細かい動作や反応から傾向を見ている。長年培われた名人芸的なものだ。神田橋先生は初診の時に「あなたのおじいちゃんとかおばあちゃんとかにも気分の揺れとかなかった?」と訊くそうだ。「中学とか高校のときに、調子のいいときと悪いときとかなかった?」とも訊くそうだ。ボクも全部当たっている・・・。その後に「体質だよ。気分調整薬のんだらいいよ。」となるそうだ。
ボクは最初に5年以上続けてきた鬱病治療から、自殺未遂をして変更した医者からある日「双極性Ⅱ型障害」と告知され、投薬を変更された。つい昨日まで飲んでいた抗うつ薬が自分が「双極性障害」であるとするなら病気を悪化させた可能性のある薬であったことになる。長いうつ病から躁うつ病(双極性障害)に病名が変更になったショックと、害になる抗うつ薬を飲んでいたショックと二つのショックがあった。それはとても受け入れがたいものだった。
自分ももし最初から神田橋先生のような精神科医にかかっていたならば、いまに至るほど病状を悪化させることはなかっただろう。
そんなことを思っても仕方ないのだが、いわゆるうつ病学会双極性障害委員会のメンバーとはまた違ったアプローチの仕方で面白いと思う。
ボクの現在の担当医は武闘派精神科医であるので、当然神田橋先生のような患者と精神科医のゆるりとした関係、ゆるりとした精神療法ではない。けれど、人間味の伝わってくる診察をしてくれたのはたぶん彼が初めてであろう。
患者に対する態度はそれぞれであるが、患者へのある種の覚悟と眼差しのある医者に出会えることは幸福である。
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