第1部ではがか座β星のデブリ円盤の構造についてみてきました。
デブリ円盤の構造から、より内側に惑星が存在するかもしれないことが分かってきました。
円盤以外にも、がか座β星には複数の微惑星帯からなる複雑な構造があることが分かってきており、他にも大規模な彗星群の存在も示唆されています。
さらにそこからは、惑星が存在するというより確かな証拠も得られました。
第2部では微惑星帯やその他の構造について触れます。
【微惑星の存在】
第1部で解説したデブリ円盤は、どのようにして形成されたのでしょうか。
恒星から出る光には、放射圧と呼ばれる圧力が存在するため、円盤を構成する粒子は放射圧に押されてより外側へと次第に吹き飛ばされていきます。それにも関わらずがか座β星の円盤には豊富なデブリが存在します。がか座β星が若い恒星であることも理由の一つですが、このようなデブリ円盤を維持する仕組みがあるはずです。
NASAの遠紫外線分光観測衛星(FUSE)は、円盤に炭素を多く含むガスが大量に存在することを発見しました。酸素が豊富だったと考えられる原始太陽系とは異なる特徴です。炭素が豊富であったために、放射圧の影響をより受けにくく、現在のような円盤を維持できたのだとも考えられます。
円盤が維持されてきた第3の理由は、円盤を構成するちりやガスが現在も絶えず供給され続けていることです。モデル計算によると、半径約180kmの微惑星どうしの衝突によって、半径約100AUのデブリ円盤が形成されることが分かりました。がか座β星には豊富な微惑星が存在すると考えられています。
【微惑星帯・ギャップの発見】
円盤の内側部分の詳しい観測によって、円盤の濃い部分が発見され、そこに微惑星が豊富に存在する微惑星帯があると考えられています。
2003年のケックⅡ望遠鏡による観測では、半径14、28、52、82AUの微惑星帯が発見されました。いずれも主要な円盤から傾いており、28AUの微惑星帯は14±4度傾いていました。
さらに、2004年のすばる望遠鏡による観測では、ケイ酸塩に富む領域が中心から6.4、16、30AUにみられました。16、30AUの微惑星帯はケックの観測で明らかになっていた14、28AUの微惑星帯と同じものと考えられます。すばるの観測によって、6.4~16AUの領域にちりが極端に少ないことが発見されました。
2006年のすばる望遠鏡による偏光赤外線観測により、中心から100AUの領域にちりが少ないことが分かり、ここにもギャップが存在するらしいことが分かりました。
これらの微惑星帯やギャップなどの構造は、巨大な惑星の重力の影響を受けて、微惑星が弾き飛ばされたり、一箇所に集められたりした結果だと考えられ、惑星の存在を示す強い証拠とされてきましたが、それについては第3・4部で。
【彗星群が存在か?】
がか座β星のスペクトルを観測すると、短時間のうちに急激に変化する現象が時々起こります。具体的には、様々な吸収帯の赤方偏移が観察されます。赤方偏移とは、物質が高速で遠ざかっているときに、そこから出る光の波長が長くなることです。つまり、地球からがか座β星の方向に向かって、何らかの物質が星表面に落ちていくのを捉えています。その正体は、恒星のすぐ近くまで接近する長い楕円軌道を回る彗星の集団と考えられています。また、頻度は少ないものの青方偏移も観測され、複数の彗星群が存在することを示しています。
スペクトルの解析から、天体はちりと氷の混合物からなり、表面は非揮発性の物質で覆われていると想像されています。こうした天体はfalling evaporating objects“落下蒸発天体”などと呼ばれ、太陽系の彗星とは少し異なるようです。
円盤面から離れた高緯度に広がるガスは、こうした天体群から放出されたものなのかも知れません。
【太陽系にやってくるがか座β星の粒子】
星間空間を漂う物質は、太陽系内にも流れ込んできています。2000年のAMORによる観測の結果、がか座β星の方向からやってくる粒子の流れが確認されました。しかもそれが、太陽系内の星間物質流の主要な放出源らしいことも分かりました。直径数十µmと比較的大きな粒子からなるのが特徴で、その速度から推定するとがか座β星を25m/sで脱出してきた計算になります。
第1部・第2部でみてきたように、がか座β星系は非常に複雑な構造をしています。惑星など他の天体を想定しなければ、このような複雑な系がどのようにできあがったのかを説明するのは難しいと思われます。
第3部では、惑星がか座β星b(beta Pic b)の存在が予言され、実際に撮影されるに至った経緯についてまとめます。
デブリ円盤の構造から、より内側に惑星が存在するかもしれないことが分かってきました。
円盤以外にも、がか座β星には複数の微惑星帯からなる複雑な構造があることが分かってきており、他にも大規模な彗星群の存在も示唆されています。
さらにそこからは、惑星が存在するというより確かな証拠も得られました。
第2部では微惑星帯やその他の構造について触れます。
【微惑星の存在】
第1部で解説したデブリ円盤は、どのようにして形成されたのでしょうか。
恒星から出る光には、放射圧と呼ばれる圧力が存在するため、円盤を構成する粒子は放射圧に押されてより外側へと次第に吹き飛ばされていきます。それにも関わらずがか座β星の円盤には豊富なデブリが存在します。がか座β星が若い恒星であることも理由の一つですが、このようなデブリ円盤を維持する仕組みがあるはずです。
NASAの遠紫外線分光観測衛星(FUSE)は、円盤に炭素を多く含むガスが大量に存在することを発見しました。酸素が豊富だったと考えられる原始太陽系とは異なる特徴です。炭素が豊富であったために、放射圧の影響をより受けにくく、現在のような円盤を維持できたのだとも考えられます。
円盤が維持されてきた第3の理由は、円盤を構成するちりやガスが現在も絶えず供給され続けていることです。モデル計算によると、半径約180kmの微惑星どうしの衝突によって、半径約100AUのデブリ円盤が形成されることが分かりました。がか座β星には豊富な微惑星が存在すると考えられています。
【微惑星帯・ギャップの発見】
円盤の内側部分の詳しい観測によって、円盤の濃い部分が発見され、そこに微惑星が豊富に存在する微惑星帯があると考えられています。
2003年のケックⅡ望遠鏡による観測では、半径14、28、52、82AUの微惑星帯が発見されました。いずれも主要な円盤から傾いており、28AUの微惑星帯は14±4度傾いていました。
さらに、2004年のすばる望遠鏡による観測では、ケイ酸塩に富む領域が中心から6.4、16、30AUにみられました。16、30AUの微惑星帯はケックの観測で明らかになっていた14、28AUの微惑星帯と同じものと考えられます。すばるの観測によって、6.4~16AUの領域にちりが極端に少ないことが発見されました。
2006年のすばる望遠鏡による偏光赤外線観測により、中心から100AUの領域にちりが少ないことが分かり、ここにもギャップが存在するらしいことが分かりました。
これらの微惑星帯やギャップなどの構造は、巨大な惑星の重力の影響を受けて、微惑星が弾き飛ばされたり、一箇所に集められたりした結果だと考えられ、惑星の存在を示す強い証拠とされてきましたが、それについては第3・4部で。
【彗星群が存在か?】
がか座β星のスペクトルを観測すると、短時間のうちに急激に変化する現象が時々起こります。具体的には、様々な吸収帯の赤方偏移が観察されます。赤方偏移とは、物質が高速で遠ざかっているときに、そこから出る光の波長が長くなることです。つまり、地球からがか座β星の方向に向かって、何らかの物質が星表面に落ちていくのを捉えています。その正体は、恒星のすぐ近くまで接近する長い楕円軌道を回る彗星の集団と考えられています。また、頻度は少ないものの青方偏移も観測され、複数の彗星群が存在することを示しています。
スペクトルの解析から、天体はちりと氷の混合物からなり、表面は非揮発性の物質で覆われていると想像されています。こうした天体はfalling evaporating objects“落下蒸発天体”などと呼ばれ、太陽系の彗星とは少し異なるようです。
円盤面から離れた高緯度に広がるガスは、こうした天体群から放出されたものなのかも知れません。
【太陽系にやってくるがか座β星の粒子】
星間空間を漂う物質は、太陽系内にも流れ込んできています。2000年のAMORによる観測の結果、がか座β星の方向からやってくる粒子の流れが確認されました。しかもそれが、太陽系内の星間物質流の主要な放出源らしいことも分かりました。直径数十µmと比較的大きな粒子からなるのが特徴で、その速度から推定するとがか座β星を25m/sで脱出してきた計算になります。
第1部・第2部でみてきたように、がか座β星系は非常に複雑な構造をしています。惑星など他の天体を想定しなければ、このような複雑な系がどのようにできあがったのかを説明するのは難しいと思われます。
第3部では、惑星がか座β星b(beta Pic b)の存在が予言され、実際に撮影されるに至った経緯についてまとめます。
少し前まで、サンプルが、我が太陽系しかなかったせいか、小さな原始惑星系円盤しか想定してなかった。
半径50AU外に天体が少ない太陽系と違って、構成員が多そうです。
分子雲から分裂するきっかけの違いとかあるのかもしれません。
彗星の供給源オールトの雲は、中から飛ばされた微惑星といわれているけど、本当のところはどうなんでしょう。