やぎの宇宙ブログ

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火星に「頭蓋骨」!?

2009-05-06 15:18:32 | 特集
ここのところ、火星探査機が撮影した写真に「頭蓋骨」が写っていた!なぁ~んていう話題が世間を騒がせています。
こういうネタは過去にも繰り返し出ていて、「またか」といった感もありますが…w
ま、たまにはそんな話題も取り上げてみよっかなぁ~と思います。

とは言っても、私はと言えば、勿論「こんなのたまたま『頭蓋骨』のように見える岩石だろ」と思っているわけですが。
世間には「火星人の頭蓋骨だ」とか「先に火星に降り立った人類がいたんだ」とか「いやいやこれはそもそも火星の写真ではないのだ」などなど、色々な話が出ています。

まぁ、今更ここでそういう「論争」について語るつもりはないワケで。
今回はこの「頭蓋骨」の話題について、「真面目に」考えてみようかなと思います。



今回も「やぎの宇宙ブログ」っぽく13枚のオリジナル画像を作ってみました。
各画像はオリジナル画像のコーナーで配信します。
オリジナル画像No.349 火星の「頭蓋骨」岩石(拡大アニメーション)
オリジナル画像No.350 火星の「頭蓋骨」岩石(拡大、立体画像)
オリジナル画像No.351 火星の「頭蓋骨」岩石(拡大、立体視)
オリジナル画像No.352 火星の「頭蓋骨」岩石周辺の立体画像
オリジナル画像No.353 火星の「頭蓋骨」岩石周辺の立体視画像
オリジナル画像No.354 火星の「頭蓋骨」岩石周辺のモザイク画像
オリジナル画像No.355 火星の「頭蓋骨」岩石周辺の地表(立体)
オリジナル画像No.356 火星の「頭蓋骨」岩石周辺の地表(立体視)
オリジナル画像No.357 火星の「頭蓋骨」岩石周辺のパノラマ画像
オリジナル画像No.358 火星の「頭蓋骨」岩石に接近(拡大)
オリジナル画像No.359 火星の「頭蓋骨」岩石に接近(立体)
オリジナル画像No.360 火星の「頭蓋骨」岩石に接近(立体視)
オリジナル画像No.361 火星の「頭蓋骨」岩石に接近するスピリット



さて、問題の「頭蓋骨」岩石ですが、これは2005年にNASAの火星探査車スピリットが撮影した火星の地表の画像に写っていたものです。
現在火星の地表では双子の火星探査車マーズ・エクスプロレーション・ローバー(スピリットとオポチュニティ)と、同じくNASAの火星探査着陸機フェニックスが探査を行っています。
画像はグセフ・クレーターの内部を走行しながら探査していたスピリットが撮影したものです。

スピリットは、人間が両目で立体視するのと同じように、左右2つのカメラで撮影して立体画像を得ることができます。
上はその「頭蓋骨」岩石のアップです。
左上がドーム状で、右側の2つの窪みが確かに眼窩のようにも見えます。



ある意味、天文はあくまで趣味で解剖の方が専門だったりする私から見れば、人間の頭蓋骨に似ているとはとても言えませんw
真面目な話をすれば、鼻腔が狭いあるいは無い、頬骨突起が無い、上顎突起が一部欠損している、側頭窩及び翼口蓋窩が無い(咬筋等の筋付着部位が無い)、などなど挙げればキリがありません。
「それは人間と火星人の違い」という反論が聞こえてきそうですが、これ以上深入りは避けましょうw

ぶっちゃけ、丸い頭のような形と、2つの眼窩のような窪み以外には、「頭蓋骨」っぽいところは余りないわけです。
ただぱっと見、「頭蓋骨」のようにも見えてしまうのも事実です。
また真面目な話をすると、一種の「類像現象」と呼ばれる現象と考えられます。

人間の視覚は本当に不思議なもので、幼稚園児が描いた顔の絵や、顔文字、「へのへのもへじ」までもが「顔」として認識されます。
それだけにとどまらず、雲の形や木目なんかが、ふと顔のように見えることがあります。
心霊写真もその延長線上にあるワケですね。
薄暗い部屋でふと「お化け!」って思ってよくよく見たら何かの模様だった、なんて経験はよくあります。
人間は顔のような模様や図形に敏感に反応し、なおかつそれが(例えば顔文字が)実際の人間の顔ではないと分かっていながら「顔」として認識することがあるんです。

そのヒミツは脳にあります。
網膜の視覚情報は、一度大脳の後頭葉の一次視覚野に送られ、物の位置や輪郭などが認識されます。
その後、情報は二次視覚野、頭頂葉や側頭葉の高次視覚野に伝えられ、さらに分析されます。
位置情報の変化からは動きが、3つの波長域の情報からは色が、輪郭の組み合わせからは図形が、という風に各部署毎に異なる処理が行われます。
単純な図形(○や□など)を認識する場所は側頭葉にあります。
側頭葉ではそれらの図形を組み合わせて、文字の認識なども行われます。
「顔」の認識も、図形の組み合わせによって側頭葉で行われることが分かっています。
サルでは「顔」に反応する神経細胞も発見されているそうです。
さらに詳しい処理が行われて、性別や人物の特定、表情の読み取りなどが瞬時に行われると考えられます。
実際、側頭葉の障害によって「顔」の認識が障害されることがあります(相貌失認と言います)。
そんなワケで、実際の顔ではなくても、ある図形の組み合わせや配置によって、「顔」と認識されることがあるんです。

人間は、視野に入ってくる膨大な視覚情報の中から必要な情報を選び出し、そこに意識を集中させます。
側頭葉にある「顔ニューロン」にもそのような役割があって、視野の中から「顔っぽい」形を抽出してそこに意識を向けさせます。

スピリットが撮影した画像は、現在までに11万5000枚を超えます!!!
今回の「頭蓋骨」岩石ですが、よくもまぁ膨大な画像データの中から探し出してきたものですね。
きっとそれも側頭葉の賜物なんでしょう。
「顔ニューロン」がビビッときたに違いありません。




ここでもう一度この岩に注目してみましょう。
「頭蓋骨」に似ているかどうかはさておき、角ばった岩石が多い中でこの岩は丸みを帯びています。
「頭蓋骨」のように見えたのも、そのような形の特徴を持っているからです。
辺りを探すと、同じように丸い石や岩がちらほら見えます。
火星の地表にはかつて大量の水が存在したと考えられています。
こうした丸い石や岩は、流れる水の中で角が削られてできた可能性があります。
そういう意味では、この「頭蓋骨」岩石を「ただの岩」と片付けるのではなく、火星の歴史や火星の生物の可能性について教えてくれる貴重な資料の一つかも知れないワケです。



「頭蓋骨」の話から、側頭葉やら火星の水の話にまで至ってしまいました…
今回の「頭蓋骨」騒動、ちょっと別の角度から考えてみると、また違った発見があるかも知れません。


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3 コメント

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またすごいですね ()
2009-05-06 20:14:45
ちょっと覗いてみたらブログの1ページ目が全部「頭蓋骨」になってるし(笑)。一挙に13枚配信とは、相変わらず容赦ないですね。
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瘴気マスクに見えます (bbsawa)
2009-05-07 20:11:39
こんばんは。ご無沙汰しております。
危ない方向に転進かとびっくりしましたが、専門的見地から苦言を呈するための画像だったのですね。
私には、風の谷のナウシカに出てくる、瘴気マスクに見えます。アニメフィルター作動中。
顔ニューロンと、デジカメの顔検出は関係あるんでしょうか?
返信する
勉さん、bbsawaさんへ (管理人やぎ)
2009-05-08 09:22:22
>一挙に13枚配信

まぁ似たような画像も含まれてますからね。
ただ、火星の画像をオリジナル画像で取り上げたのは初かも知れません。


>危ない方向に転進かと

ちょっと悪乗りしてみましたwww
これを火星人だ等と言って煽りたてる方々も困ったものですが、一方で「くだらん」と言って片付けてしまうのも夢が無いなと思うワケです。

>顔ニューロンと、デジカメの顔検出

どちらも「顔」をパターン認識している点で似ているのではないでしょうか。
ただ、顔ニューロンの詳細は明らかではありませんし、デジカメの機能についてもその筋ではないので詳しくは分かりません。
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