やぎの宇宙ブログ

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第3部♪CP対称性の破れ

2008-10-10 23:49:03 | 特集
さて今回は、素粒子の世界の対称性についての話です。
引き続き、斜め読みでお願いします。


【クォークとレプトン】

ここで気分を変えて、そもそもこの世の物質は何からできているのか、素粒子にはどんな種類があるのかについて紹介しておきましょう。

皆さんもご存知かと思いますが、物質は主に原子からできています。
原子は原子核とその周りを回る小さな電子からできています。
さらに原子核は陽子と中性子などの核子から、核子はu(アップ)クォークとd(ダウン)クォークからできています。
つまり、多くの物質はuクォークとdクォーク、そして電子からできています。
また、これらの素粒子の反応によって発生するニュートリノも、直接物質を作っているわけではありませんが、素粒子の一種です。

電子は電荷-1を持っており、電気の力(電磁相互作用)によって+の電荷をもつ原子核の周りを回っています。
そこにエネルギーを与えると、電磁相互作用に打ち勝って電子を外に取り出すことができます。

また、ニュートリノは電荷ももっておらず、電磁相互作用もはたらきません。
そのため多くの物質と相互作用をせず、その中をすり抜けてしまいます。
実際、この瞬間もとてつもない数のニュートリノが私達の体を貫通していますが、体にはほとんど何の影響もありません。

このようにある程度自由に動ける電子やニュートリノの仲間とは違って、クォークは核子の中から取り出すことができません。
それは、クォークが強い相互作用というもう一つの基本相互作用によって非常に強く結び付けられているからです。
一方、電子やニュートリノのように強い相互作用がはたらかない素粒子をレプトンといいます。
強い相互作用を媒介するのはグルーオンですが、言い換えればグルーオンと相互作用するのがクォーク、相互作用しないのがレプトンということになります。


【粒子と反粒子】

物質は素粒子からできていることを説明しました。
しかし、ミクロの世界にはこうした粒子と反対の性質をもつ反粒子が存在します。
クォークに対して反クォークが、電子に対して陽電子(反電子とは言わない)が、ニュートリノに対して反ニュートリノが対応します。
ウィーク・ボソンの一種であるWボソンにも、互いに粒子・反粒子の関係にあるW-ボソンとW+ボソンがあります。
ただし、フォトンの反粒子はフォトン自らとなります。
このように素粒子には反素粒子が存在するのです。

粒子と反粒子を衝突させると対消滅し、両者の質量は全てエネルギーに変換されます。
逆に、両者の質量に相当するエネルギーよりも大きなエネルギーを与えると、粒子と反粒子の対が誕生し、この現象を対生成と呼びます。
つまり、粒子と反粒子は共に生まれ、共に消えます。
ということは、この世に存在する粒子と同じ数だけの反粒子が存在しているはずです…これについてはまた後程。

「反対の性質をもつ」と言いましたがあまりに大雑把ですね。
質量やスピンなどの量は同じなのに電荷の符号が逆になったものを反粒子と呼びます。
このように電荷の符号を逆にすることをC(荷電共役)変換と呼びます。
C変換を行っても物理法則が成り立つことをC対称性といいます。


【CP対称性】

身の回りの物理法則は、左右を入れ替えても(鏡に映しても)同じように成り立ちます。
このように空間座標を反転することをP(パリティ)変換といい、P変換を行っても物理法則が成り立つことをP対称性といいます。

C対称性とP対称性は身の回りの世界では成り立つように思えます。
しかし、量子の世界ではいずれも成り立たないことが研究や実験によって証明されました。

ニュートリノを例に説明します。
素粒子はスピンという量をもっており、ここでは深く説明しませんが、素粒子の自転のようなものだと考えて下さい。
進行方向に対して左巻き(スピンが反対方向)の場合と、右巻き(スピンが平行)の場合の2種類が考えられます。
左巻きニュートリノをP変換すると、回転方向が逆になるので、右巻きニュートリノになります。
しかし実際の世界に存在するのは左巻きニュートリノばかりで、右巻きニュートリノは(ほとんど)存在しません。
P対称性が破れています。
一方、左巻きニュートリノをC変換した左巻き反ニュートリノも実際には(ほとんど)存在しません。
C対称性も破れています。
しかし、CP変換(C変換とP変換を1回ずつ行う変換)を行った右巻き反ニュートリノは存在します。
C変換やP変換に対しては対称性が破れていますが、CP対称性は保たれていることになります。


【CP対称性の破れ】

CP対称性とは、言い換えれば電荷やスピンが逆の粒子と反粒子は同じ性質をもつということです。
ところが、このCP対称性も実は破れていることが分かりました。
エネルギーが高く不安定な粒子は、より安定な粒子の組み合わせに変化し、これを崩壊といいます。
K0中間子と反K0中間子が崩壊する様子を詳しく調べた結果、両者に違いがあることが分かりました。
粒子と反粒子の性質の違い、それはCP対称性の破れを意味します。

最近ではB中間子で、より大きなCP対称性の破れが観測されています。
例えばB0中間子がK+中間子とπ-中間子に崩壊する過程と、反B0中間子がK-中間子とπ+中間子に崩壊する過程を比べると、後者の方が10%多く観測されることが分かりました。
反B0中間子の方が寿命が短く壊れやすいことを示しています。

このように、一見瓜二つの性質をもっているかに思えた粒子と反粒子の性質には実は違いがありました。
この宇宙には反粒子より粒子の方が圧倒的に多い理由も、粒子と反粒子の性質の違いによると考えられています。

尚、時間の進む向きを逆にすることをT(時間)変換といいます。
反粒子は粒子をT変換したもの、つまり時間を遡っている粒子が反粒子として見えている、と解釈されています。
CP対称性には破れがあり、粒子と反粒子には性質に違いがあるので、T対称性も破れていることになります。
しかし、CP変換にさらにT変換を行うと、物理法則がきちんと成り立つ、すなわちCPT変換については対称性が保たれていると考えられています。



第1部 南部理論の登場
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/05c0b90271cd27f2b6a6d5c708086e76


第2部 南部理論からの発展
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/9794160b601946874a5869b3a50372bf


第3部

第4部 小林・益川理論と素粒子物理学の行方
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/d42bd8f58a5521121ae5801e162ce7e9


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