最後になりましたが、いよいよ小林・益川理論の登場です。
【カビボ角】
さて、再び弱い相互作用の話です。
前に説明したように、弱い相互作用は、素粒子が他の素粒子に変いるものです。
uクォークとdクォークは対になっていて、弱い相互作用によってuからdに、dからuに移り変わります。
同様に電子と電子ニュートリノも弱い相互作用によって互いに入れ替わります。
しかし、実はこの関係は1対1ではありません。
uクォークはdクォークだけではなく、一部はs(ストレンジ)クォークに変化します。
このようにクォーク同士の対応は完全に1対1ではなく、やや傾いています。
この傾きの大きさをカビボ角といいます(カビボ角が0なら1対1の対応になります)。
また、元の素粒子に対して、弱い相互作用によって生成する素粒子を対応させる行列をカビボ行列といいます(カビボ行列が単位行列なら1対1の対応になります)。
【小林・益川理論】
uクォークはdクォークだけでなく一定の割合でsクォークに変化することを説明したのがカビボの理論でした。
その発表の翌年にK中間子でのCP対称性の破れが発見されました。
2×2のカビボ行列ではCP対称性の破れを説明することができません。
そこで小林・益川両氏は、カビボ行列を3×3の行列に拡大することを考えました。
3×3行列は、すなわち3種類のクォークともう3種類のクォークとの対応を示す行列なので、計6種類のクォークの存在を前提とするものでした。
当時はまだu、d、sしか発見されてなく、他に3種類あることを予言する理論でした。
小林・益川両氏が提案した行列はカビボ・小林・益川行列と呼ばれていますが、クォーク間の混合を示す角度の他に、複素数を導入することによって複素位相の自由度を盛り込んでいるというのが特徴です。
この複素位相がCP対称性の破れを意味しています。
CP対称性の破れを説明するために、6種類のクォークの存在を予言した小林・益川理論ですが、その後の実験によって予想と一致する結果が次々に出てきました。
クォークも現在では6種類発見されています。
さらに、前に紹介したB中間子でのCP対称性の破れも、小林・益川理論から予想されていた現象です。
小林・益川理論は現在の素粒子物理の基礎となりました。
【標準理論、今後の発展】
現在、素粒子の世界を説明する理論が標準理論です。
素粒子は6つのクォークと6つのレプトンからなるとし、それら素粒子間にはたらく相互作用としての強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用を場の量子論で記述しています。
具体的には、小林・益川理論とワインバーグ=サラム理論、量子色力学(強い相互作用を記述する理論)の3つの柱からできています。
標準理論は、様々な素粒子の振る舞いを説明してきました。
しかし、ヒッグス粒子が発見されていないなど、標準理論が前提とするもの全てが確かめられているわけではありません。
また近年、従来の標準理論では説明できない現象も発見されてきています。
その一つがニュートリノ振動です。
標準理論では、3種類のニュートリノが互いに入れ替わることはないとされていましたが、実際には種類が入れ替わるニュートリノ振動と呼ばれる現象が発見されました。
これはニュートリノに質量があることを示しています。
さらに、標準理論は宇宙の相互作用を統一的に説明することはできていません。
弱い相互作用と電磁相互作用は統一的に説明することができますが(ワインバーグ=サラム理論)、強い相互作用をも統一するような理論はまだ発見されていません。
そして第4の基本相互作用である重力相互作用については、量子力学の世界でどのように作用するのか全く分かっておらず、標準理論には重力は登場すらしていません。
ここまでみてきたように、自発的対称性の破れを導入した南部氏、CP対称性の破れを説明する理論を作り上げた小林・益川両氏、3氏の業績によって現在の素粒子物理の基礎が築かれました。
現在の理論を破る現象が次々に発見され、そこから新しい考え方が生まれ、次の新しい理論が作られる、今後も究極の理論を目指した努力が続いていくはずです。
ここまで読んで下さった方々、ご苦労様です。
素人説明ではありましたが、物理や宇宙に一層興味を持って頂けたら幸いです!
第1部 南部理論の登場
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/05c0b90271cd27f2b6a6d5c708086e76
第2部 南部理論からの発展
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/9794160b601946874a5869b3a50372bf
第3部 CP対称性の破れ
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/7773aa8181b15c46c8a0b08369b3737b
第4部
【カビボ角】
さて、再び弱い相互作用の話です。
前に説明したように、弱い相互作用は、素粒子が他の素粒子に変いるものです。
uクォークとdクォークは対になっていて、弱い相互作用によってuからdに、dからuに移り変わります。
同様に電子と電子ニュートリノも弱い相互作用によって互いに入れ替わります。
しかし、実はこの関係は1対1ではありません。
uクォークはdクォークだけではなく、一部はs(ストレンジ)クォークに変化します。
このようにクォーク同士の対応は完全に1対1ではなく、やや傾いています。
この傾きの大きさをカビボ角といいます(カビボ角が0なら1対1の対応になります)。
また、元の素粒子に対して、弱い相互作用によって生成する素粒子を対応させる行列をカビボ行列といいます(カビボ行列が単位行列なら1対1の対応になります)。
【小林・益川理論】
uクォークはdクォークだけでなく一定の割合でsクォークに変化することを説明したのがカビボの理論でした。
その発表の翌年にK中間子でのCP対称性の破れが発見されました。
2×2のカビボ行列ではCP対称性の破れを説明することができません。
そこで小林・益川両氏は、カビボ行列を3×3の行列に拡大することを考えました。
3×3行列は、すなわち3種類のクォークともう3種類のクォークとの対応を示す行列なので、計6種類のクォークの存在を前提とするものでした。
当時はまだu、d、sしか発見されてなく、他に3種類あることを予言する理論でした。
小林・益川両氏が提案した行列はカビボ・小林・益川行列と呼ばれていますが、クォーク間の混合を示す角度の他に、複素数を導入することによって複素位相の自由度を盛り込んでいるというのが特徴です。
この複素位相がCP対称性の破れを意味しています。
CP対称性の破れを説明するために、6種類のクォークの存在を予言した小林・益川理論ですが、その後の実験によって予想と一致する結果が次々に出てきました。
クォークも現在では6種類発見されています。
さらに、前に紹介したB中間子でのCP対称性の破れも、小林・益川理論から予想されていた現象です。
小林・益川理論は現在の素粒子物理の基礎となりました。
【標準理論、今後の発展】
現在、素粒子の世界を説明する理論が標準理論です。
素粒子は6つのクォークと6つのレプトンからなるとし、それら素粒子間にはたらく相互作用としての強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用を場の量子論で記述しています。
具体的には、小林・益川理論とワインバーグ=サラム理論、量子色力学(強い相互作用を記述する理論)の3つの柱からできています。
標準理論は、様々な素粒子の振る舞いを説明してきました。
しかし、ヒッグス粒子が発見されていないなど、標準理論が前提とするもの全てが確かめられているわけではありません。
また近年、従来の標準理論では説明できない現象も発見されてきています。
その一つがニュートリノ振動です。
標準理論では、3種類のニュートリノが互いに入れ替わることはないとされていましたが、実際には種類が入れ替わるニュートリノ振動と呼ばれる現象が発見されました。
これはニュートリノに質量があることを示しています。
さらに、標準理論は宇宙の相互作用を統一的に説明することはできていません。
弱い相互作用と電磁相互作用は統一的に説明することができますが(ワインバーグ=サラム理論)、強い相互作用をも統一するような理論はまだ発見されていません。
そして第4の基本相互作用である重力相互作用については、量子力学の世界でどのように作用するのか全く分かっておらず、標準理論には重力は登場すらしていません。
ここまでみてきたように、自発的対称性の破れを導入した南部氏、CP対称性の破れを説明する理論を作り上げた小林・益川両氏、3氏の業績によって現在の素粒子物理の基礎が築かれました。
現在の理論を破る現象が次々に発見され、そこから新しい考え方が生まれ、次の新しい理論が作られる、今後も究極の理論を目指した努力が続いていくはずです。
ここまで読んで下さった方々、ご苦労様です。
素人説明ではありましたが、物理や宇宙に一層興味を持って頂けたら幸いです!
第1部 南部理論の登場
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/05c0b90271cd27f2b6a6d5c708086e76
第2部 南部理論からの発展
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/9794160b601946874a5869b3a50372bf
第3部 CP対称性の破れ
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/7773aa8181b15c46c8a0b08369b3737b
第4部
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