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第2部♪南部理論からの発展

2008-10-09 00:52:05 | 特集
第2部では、南部理論がその後どのように素粒子物理学の発展に貢献したかについてさらっとみていくことにします。


【弱い相互作用】

その前に、量子力学で出てくる弱い相互作用について簡単に説明しておきます。

弱い相互作用は、自然界に存在する4つの基本相互作用のうちの一つです。
物質を構成するクォークやレプトンといった素粒子の間にはたらく相互作用です。
弱い相互作用によって、素粒子は他の種類の素粒子に入れ替わることができます。
dクォークがuクォークに変わり、その際に電子と反電子ニュートリノが発生するβ崩壊と呼ばれる反応も、この弱い相互作用によって起こります。

相互作用が素粒子間で伝わるためには、それを媒介する何かが必要です。
弱い相互作用を媒介するのはウィーク・ボソンと呼ばれる粒子です。
素粒子がこのウィーク・ボソンをいわばキャッチボールすることによって、自らは他の種類の素粒子に姿を変えるのです。

他の3つの基本相互作用も、それぞれある粒子によって媒介されています。
しかし、ウィーク・ボソンだけが、陽子の80~90倍という非常に大きな質量をもっています。
この謎が、他の基本相互作用と共通の理論を探るときに障害となっていました。


【ヒッグス機構】

ウィーク・ボソンにはなぜ大きな質量があるのか、それを説明したのがヒッグス機構です。

この仮説によると、宇宙にはヒッグス場と呼ばれる場で満たされています。
宇宙が誕生した後、先ほどの自発的対称性の破れが起こって、その結果ヒッグス場の真空期待値(ワイン・ボトルでいうところの瓶底の円周上の点)が生まれました。
このヒッグス場と素粒子が相互作用することにより、素粒子はある種の抵抗を受けます。
抵抗を受ける素粒子は動きにくく、この動きにくさこそが素粒子の質量にあたります。
つまり、素粒子は、宇宙空間に潜むヒッグス場と相互作用することによって初めて質量をもつことになります。
自発的対称性の破れが起こる前の宇宙では、そのような相互作用がはたらかず、素粒子は質量を持たなかったことになります。
ヒッグス場によって質量が与えられる仕組みをヒッグス機構といいます。
逆にヒッグス場と相互作用しない粒子は質量をもたないことになります。

このヒッグス機構によって推定されるウィーク・ボソンの質量が実験結果とよく一致することが確かめられました。

ただし、このヒッグス場を媒介するヒッグス粒子の存在は、今のところ実験で確認されるには至っておらず、世界中でその発見に向けた実験が行われています。


【ワインバーグ=サラム理論】

自然界の4つの基本相互作用のうちのもう一つに、電磁相互作用があります。
電磁相互作用というと難しいですが、電気や磁気の力の元となるものです。
電場や磁場を思い出してもらうと分かりますが、その力は距離の2乗に反比例します。
このように電磁相互作用は遠く離れていてもはたらきます。
一方先程の弱い相互作用は、10の-15乗m程の素粒子レベルのごく狭い範囲でしか作用しません。

また、電磁相互作用はフォトン(光子)が媒介します。
フォトンは質量が0です。
この点もウィーク・ボソンが大きな質量をもつことと異なります。

このように電磁相互作用と弱い相互作用は全く異なった特徴を持っています。

しかし、先程のヒッグス機構によれば、自発的対称性の破れが起こる以前の宇宙ではヒッグス機構がはたらかず、ウィーク・ボソンも質量をもっていなかったことになります。
するとウィーク・ボソンはヒッグス場から開放されて遠くまで自由に動き回ることができます。
このような考えに立つと、ウィーク・ボソンの振る舞いは、フォトンの振る舞いと共通の物理法則で説明ができるようになります。

なお、フォトンが現在も質量を持たないのは、フォトンがヒッグス場と相互作用しないからということになります。

ワインバーグ氏とサラム氏はこれを理論化し、電弱統一理論(ワインバーグ=サラム理論)を完成させました。
両氏はノーベル物理学賞を受賞しています。



第1部 南部理論の登場
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/05c0b90271cd27f2b6a6d5c708086e76


第2部

第3部 CP対称性の破れ
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/7773aa8181b15c46c8a0b08369b3737b


第4部 小林・益川理論と素粒子物理学の行方
http://blog.goo.ne.jp/new_petty75/e/d42bd8f58a5521121ae5801e162ce7e9


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