E-6に存在する豪邸。その門の前に、一人の青年が立っていた。
学生服を着た利発そうな顔立ちのこの青年は、名を兎屋高雪という。
CLAMP学園高等部1年B組に所属する成績優秀な生徒であり、怪奇現象研究会という同好会のメンバーでもある。
「まったく、何だってこんな事に……」
苦虫を噛み潰したような表情で呟きながら、高雪はハンカチで額の汗を拭う。
すでに何度も同じ行為をしているにもかかわらず、汗はいっこうに引いてくれない。
会の活動中、命の危機に瀕したことは何度もある(まあ、学生のクラブ活動でそうなるのは正直どうかと思うが)。
しかし、それを切り抜けてこられたのは会員全員の力を合わせてきたからだ。
今の自分たちはバラバラにされ、陰に日向に会を支えてくれている「教授」のサポートも受けられない。
他者に助けてもらえないこの状況では、体力に難のある高雪が不安になるのも無理はない。
いや、あながち誰も助けてくれないというわけでもない。たった一人、今すぐにでも彼に協力してくれるかも知れない人物が一人いる。
「こいずみ、いるか?」
ふいに、そんな言葉を呟く高雪。すると突然、彼の背後から古風なメイド服を着た少女が姿を現した。
「はいー。お呼びですか、高雪様?」
宙を滑り、高雪の正面に周りながらメイド少女は言う。
彼女の名は「こいずみさん」。地方の名家である高雪の実家に何代も前から仕えている、「メイドの幽霊」である。
本来幽霊は霊感を持つ人間にしか見えないが、高雪と魂の一部を共有しているこいずみさんは誰の目にも見ることが出来る。
そして高雪の命令の下、実質的な6人目のメンバーとして研究会のために日夜働いているのだ。
「こいずみ、事情はわかっているか?」
「はい、大変なことになってしまいましたね……」
「言うまでもないだろうが、僕はこんなばかげたゲームに付き合うつもりはない。一刻も早く他のみんなを見つけて、ここを脱出する方法を見つけようと思う。
そこでだ、こいずみ。まずは君にこの周辺を見回ってきてほしい。
幽霊の君なら、殺し合いに乗った参加者に見つかっても危険はないだろう」
「あの……それがですね」
「どうかしたのか?」
プロ意識の強いこいずみさんは、高雪の命令を断ることなどめったにない。
その彼女が拒絶の意思を見せたことに、高雪は首をかしげる。
「どういうことなのかわかりませんが、私と高雪様の結びつきが不自然に強くなっていて……。
今の私では、高雪様からそれほど離れられないんです」
「何だって?」
「今、実際にご覧に入れますね?」
驚く高雪から、こいずみさんはスーッと遠ざかっていく。そして、ある地点でぴたりと止まった。
「このあたりが限界のようですー」
「だいたい、500mぐらいか……。わかった、こいずみ。戻ってこい」
高雪は、すぐさまこいずみさんを呼び戻す。
「まあある程度は離れられるといえ、これは不便だな……。あの少年が、何かしたのか?」
「あの、それからですね……」
「まだ何かあるのか?」
「結びつきが強くなったせいで、万が一高雪様が亡くなられた場合……」
「君も現世にとどまっていられなくなる……。そういうことだな?」
こいずみさんの表情から、高雪は彼女が言わんとすることを理解した。
「す、すいません、高雪様! メイドが主人に向かってこんな不吉なことを言うなんて……」
「気にするな、こいずみ。それを聞いて、ますます生き延びたいという気分になったよ」
平謝りのこいずみさんに、高雪は優しく笑いかける。だがその額には未だびっしりと汗が浮かんでおり、無理をしていることが一目でわかる。
「さあ、まずは会長やみんなを見つけないとな。行くぞ、こいずみ」
「かしこまりました、高雪様」
「現在地がE-6だとすると……。東に行けば大きな道に出るみたいだな。そこから北上してみるか……」
地図を片手に、幽霊を従えた少年は夜の闇に溶けていった。
【一日目 深夜 E-6 豪邸前】
【兎屋高雪@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル】
【状態】精神的疲労(小)
【装備】こいずみさん
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:ゲームには乗らない
1:研究会メンバー(ユウキ、美冬、光司、りおん)と合流。
2:この島からの脱出方法を見つける。
※原作終了後からの参戦です
※こいずみさんについて
高雪に仕えるメイドの幽霊。高雪の意思によって現世に出現したり引っ込んだりする。
現世にいる間は、全ての人間が存在を視認できる。
飛行、物質の透過が可能。家事全般は一流だが、昔の人間のため現代科学に関する知識はほとんどない。
今回は主催者が課した制限により、高雪から500メートル以上離れることは不可能。高雪の死亡により成仏する。
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学生服を着た利発そうな顔立ちのこの青年は、名を兎屋高雪という。
CLAMP学園高等部1年B組に所属する成績優秀な生徒であり、怪奇現象研究会という同好会のメンバーでもある。
「まったく、何だってこんな事に……」
苦虫を噛み潰したような表情で呟きながら、高雪はハンカチで額の汗を拭う。
すでに何度も同じ行為をしているにもかかわらず、汗はいっこうに引いてくれない。
会の活動中、命の危機に瀕したことは何度もある(まあ、学生のクラブ活動でそうなるのは正直どうかと思うが)。
しかし、それを切り抜けてこられたのは会員全員の力を合わせてきたからだ。
今の自分たちはバラバラにされ、陰に日向に会を支えてくれている「教授」のサポートも受けられない。
他者に助けてもらえないこの状況では、体力に難のある高雪が不安になるのも無理はない。
いや、あながち誰も助けてくれないというわけでもない。たった一人、今すぐにでも彼に協力してくれるかも知れない人物が一人いる。
「こいずみ、いるか?」
ふいに、そんな言葉を呟く高雪。すると突然、彼の背後から古風なメイド服を着た少女が姿を現した。
「はいー。お呼びですか、高雪様?」
宙を滑り、高雪の正面に周りながらメイド少女は言う。
彼女の名は「こいずみさん」。地方の名家である高雪の実家に何代も前から仕えている、「メイドの幽霊」である。
本来幽霊は霊感を持つ人間にしか見えないが、高雪と魂の一部を共有しているこいずみさんは誰の目にも見ることが出来る。
そして高雪の命令の下、実質的な6人目のメンバーとして研究会のために日夜働いているのだ。
「こいずみ、事情はわかっているか?」
「はい、大変なことになってしまいましたね……」
「言うまでもないだろうが、僕はこんなばかげたゲームに付き合うつもりはない。一刻も早く他のみんなを見つけて、ここを脱出する方法を見つけようと思う。
そこでだ、こいずみ。まずは君にこの周辺を見回ってきてほしい。
幽霊の君なら、殺し合いに乗った参加者に見つかっても危険はないだろう」
「あの……それがですね」
「どうかしたのか?」
プロ意識の強いこいずみさんは、高雪の命令を断ることなどめったにない。
その彼女が拒絶の意思を見せたことに、高雪は首をかしげる。
「どういうことなのかわかりませんが、私と高雪様の結びつきが不自然に強くなっていて……。
今の私では、高雪様からそれほど離れられないんです」
「何だって?」
「今、実際にご覧に入れますね?」
驚く高雪から、こいずみさんはスーッと遠ざかっていく。そして、ある地点でぴたりと止まった。
「このあたりが限界のようですー」
「だいたい、500mぐらいか……。わかった、こいずみ。戻ってこい」
高雪は、すぐさまこいずみさんを呼び戻す。
「まあある程度は離れられるといえ、これは不便だな……。あの少年が、何かしたのか?」
「あの、それからですね……」
「まだ何かあるのか?」
「結びつきが強くなったせいで、万が一高雪様が亡くなられた場合……」
「君も現世にとどまっていられなくなる……。そういうことだな?」
こいずみさんの表情から、高雪は彼女が言わんとすることを理解した。
「す、すいません、高雪様! メイドが主人に向かってこんな不吉なことを言うなんて……」
「気にするな、こいずみ。それを聞いて、ますます生き延びたいという気分になったよ」
平謝りのこいずみさんに、高雪は優しく笑いかける。だがその額には未だびっしりと汗が浮かんでおり、無理をしていることが一目でわかる。
「さあ、まずは会長やみんなを見つけないとな。行くぞ、こいずみ」
「かしこまりました、高雪様」
「現在地がE-6だとすると……。東に行けば大きな道に出るみたいだな。そこから北上してみるか……」
地図を片手に、幽霊を従えた少年は夜の闇に溶けていった。
【一日目 深夜 E-6 豪邸前】
【兎屋高雪@CLAMP学園怪奇現象研究会事件ファイル】
【状態】精神的疲労(小)
【装備】こいずみさん
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:ゲームには乗らない
1:研究会メンバー(ユウキ、美冬、光司、りおん)と合流。
2:この島からの脱出方法を見つける。
※原作終了後からの参戦です
※こいずみさんについて
高雪に仕えるメイドの幽霊。高雪の意思によって現世に出現したり引っ込んだりする。
現世にいる間は、全ての人間が存在を視認できる。
飛行、物質の透過が可能。家事全般は一流だが、昔の人間のため現代科学に関する知識はほとんどない。
今回は主催者が課した制限により、高雪から500メートル以上離れることは不可能。高雪の死亡により成仏する。
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