注意:残虐描写が含まれます
B-4。ちょうど森林部と都市部の境目に当たる、川のほとり。
そこに、二人の参加者がいた。
一人は学生服の少年……狗神使い、犬上小太郎。一人はゴスロリ服の少女……神鳴流剣士、月詠。
二人は同じ世界の出身者であり、以前同じ人間に雇われ共に仕事を行ったこともある。
しかしこの地での二人の再会は、穏やかなものとはならなかった。
現在、小太郎と月詠は戦闘を行っている。いや、その言い方は不正確だろう。
正しくは、月詠が一方的に小太郎を攻めていた。
「なんで攻撃してけえへんのです、小太郎はん? せっかくお祭りに呼ばれたんやさかい、楽しまな損ですえ?」
「アホ! お前も知っとるやろ! 俺は女は殴らん!」
月詠が目にも止まらぬ速さで振るう刃をかわしながら、小太郎は叫ぶ。
「いけずやなあ。うちは全力の小太郎はんと戦いたいのに……」
「勝手なことぬかすな! こっちはお前と戦いたくないっちゅうんじゃい!」
「う~ん……。そこまで言うなら仕方ありませんか。そもそもうちは男の子より女の子と戦う方が好きやし……。
戦ってくれへん小太郎はんには、さっさと死んでもらいます~」
その刹那、月詠の纏う空気が変わる。彼女の中の「気」が、その両腕と刀に集中していく。
「神鳴流奥義、ら~いめ~いけ~ん」
間の抜けた叫びと共に、月詠が刀を振り下ろす。するとその剣先から、電撃がほとばしる。
電撃は文字通り電光石火の速さで、小太郎に襲いかかった。
「ちぃっ!」
それに対し、小太郎は高速移動術である「縮地」を発動。間一髪で電撃の直撃を回避し、そのまま都市部へ逃げ込む。
「逃がしまへんえ~」
しかし大技を一度かわされた程度で諦めるほど、月詠も諦めがよくはない。
彼女も小太郎を追い、都市部へと足を踏み入れる。
(ああもう、面倒やな……。あいつの相手なんぞしてる暇はないっちゅうに……。
千鶴姉ちゃんやのどか姉ちゃんも巻き込まれてるんや、早いところ見つけて守ってやらんと……。
この辺は建物多いし、隠れながら少しずつ移動すれば逃げ切れるか?
敵に背中見せるんは不本意やけど、だからといって女殴るわけにもいかんしな)
建物の陰でそんなことを考えながら、小太郎が縮地で一歩を踏み出そうとしたその時。
その男は現れた。
(なんやこいつ……。いつの間に……)
突如視界の中に出現した男に、小太郎は驚愕を隠せずにいた。そして、次にわき上がっているのは警戒心。
裏社会の住人としての、小太郎の勘が告げる。「こいつはやばい」と。
男は、微笑みを浮かべて小太郎を見ている。その笑みが、かえって男の不気味さを際だたせていた。
「こんばんは」
男が口を開く。
「早速で悪いけど、死んでもらえるかな」
刃、一閃。小太郎の胸が切り裂かれ、血しぶきが上がる。
(ちっ、やっぱりか! この兄ちゃん、めっちゃ強いやないか!)
反射的に傷口を押さえながら、小太郎は心の中でこぼす。
彼には理解できていた。あとほんの少し飛び退くのが遅れていたら、自分は今の一撃で死んでいたということを。
たった一度の攻撃で、小太郎は相手の力量を十分すぎるくらいに理解した。
だが強大な敵を前にしても、小太郎に怯えや焦りの色はない。むしろ、その目は輝きを増していた。
主義主張の違いこそあれ、彼も月詠と同じ戦闘狂(バトルマニア)なのである。
「オッケー、相手にとって不足はないわ。そんなら兄ちゃん、やろうやないか」
牙と爪をあらわにし、小太郎は不敵な笑みを浮かべながら呟く。
「参ったねえ。素直に死んでくれるとありがたいんだけど。
僕は戦いがしたい訳じゃなくて、早くこの世界から出たいだけなんだ」
「そんだけ強くて、何言うとんねん、兄ちゃん。俺を殺したかったら、正々堂々勝負に勝って殺せや!」
困ったような表情を浮かべる男に、小太郎は問答無用とばかりに跳びかかる。
だが彼の爪が男に届く前に、その脇腹を衝撃が襲った。
(な、なんや! まだ兄ちゃんの間合いには……)
「逃がしまへん言いましたやろ、小太郎はん?」
(し、しもた!)
小太郎の視線の先にいたのは、月詠。たった今小太郎を襲ったのは、月詠の技・斬空閃だ。
(何やっとるんや、俺! 兄ちゃんの殺気が強すぎて、月詠の殺気が近づいてるのに気づかんやなんて……)
小太郎の脳内を、後悔がよぎる。だが、今更悔やんだところでどうしようもない。
吹き飛んだ小太郎の体は地面に叩きつけられ、そのままアスファルトの上を転がって近くの川の中へ落下した。
「申し訳ありまへん、獲物を横取りするような真似をしてしもうて。
せやけど、あの子と最初に戦ってたのはうちなんどす。堪忍な」
「別に謝る必要はないよ。僕の目的は、あくまで生き残って次の世界に行くことだ。
人数が減るのなら、誰が殺そうとかまわないさ」
「そうどすか~。けど、うちは違います。うちは、強い相手と戦いたいんどす。
小太郎はんが期待はずれやったさかい、お兄さんが代わりにうちの相手してくれまへんか~?」
月詠は惚けたような笑みを浮かべながら、刀の切っ先を男に向ける。
「悪いけど、遠慮しておくよ。さっきも言ったように、僕の目的は生き残ることだ。
さっきの子は見つけたとき殺し合いに消極的な感じがしたから攻撃したけど……。
君のように他の参加者を積極的に殺していきそうな人とは、まだ潰し合いたくない。先は長いだろうからね」
「なんや、お兄さんもいけずやなあ。そう言わんと……うちと遊んでいっておくれやす!」
一転、月詠の表情が修羅のそれへと変わる。男に突進し、袈裟斬りに刀を振るう。
男はそれを、大きく後ろに飛んで回避する。カウンターはおろか、反撃の糸口をつかもうという気すら感じられない。
それは、完全なる逃げの行動だった。
「そんなにうちの相手をするのがいやどすか? 乙女として傷つきますわ~」
緊張感のない口調で愚痴りながら、月詠は男に追撃をしかける。
だが、当たらない。男は完全に攻撃を捨てた大きな回避で、月詠の刃から逃れ続ける。
たとえ相手が逃げに徹しようと、それが並の相手なら月詠にとってしとめるのはたやすい。
彼女の剣は「速さ」を重点的に磨いたものなのだから。
だが、男はその速き剣をかわし続けている。月詠が本来の二刀流でないことを差し引いても、その事実は男の力量が月詠以上であることを示していた。
「たまりまへん……。ゾクゾクして来ますわぁ……」
休むことなく刀を振るいながら、月詠は恍惚の声を漏らす。
楽しくてたまらない。彼女は心の底からそう思っていた。
戦闘狂の血が騒ぐ。こんなに強い相手と戦えるなんて、嬉しくて仕方がないと。
だが、今の恍惚感ですら完璧なものではない。相手はまだ、こちらに攻撃をしかけてこないのだから。
お互いが相手を殺す気でぶつかり合ってこそ、真の戦闘だ。まだ足りない。この男から引き出せる楽しさは、こんなものではない。
「いい加減、その刀を使ってはもらえませんか~?」
そういいながら繰り出す唐竹割りも、やはり空振り。回避した男は、数メートル後ろに下がって止まる。
「なるほど。確かにこのままでは埒が開きそうにないしね」
男はそう呟くと、今まで使おうとしなかった刀を構えた。
彼の行動を見て、月詠は歓喜する。これでようやく、まともな戦いになると。
しかし彼女の思いは、あっけなく裏切られることになる。
男が放ったもの、それは斬撃ではなく火炎だった。
「きゃっ!」
予想外の攻撃に、思わず怯む月詠。とっさの回避で炎の直撃は避けたものの、その拍子にかけていたメガネを落としてしまう。
「あわわ、メガネメガネ……」
慌てて地面をはいつくばり、メガネを探す月詠。なんとかメガネを見つけ拾い上げるものの、その時にはすでに男の姿は消えていた。
「ふう、うちとしたことが、つまらんミスをしてしまいましたなあ。
あのお兄さんも、神鳴流と同じような技を使えたとは……。世界は広いどすなあ」
メガネをかけ直し、月詠は溜め息を漏らす。
「まあ、逃げられてしもうたもんは仕方ありまへん。次の獲物を探しに行きますか~。
今度は刹那先輩みたいな、可愛い女の子がええどすな~」
月詠は今一度緊張感の感じられない笑みを浮かべると、夜の街を駆けていった。
【一日目 深夜 B-5 市街地】
【月詠@魔法先生ネギま!】
【状態】疲労(小)
【装備】桃太郎の刀@らき☆すた(小説版)
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:強者(特に女性)と戦う。
1:男との再戦を狙う。
※修学旅行編終了~魔法世界編開始の間からの参戦です
(なんとか撒けたみたいだねえ……)
月詠の前から消えた男……星史郎は、追跡がないことを確認するとほっと息を漏らした。
(こんなゲーム、早く終わらせて次の世界に行きたいところだけど……。さすがに僕一人で50人殺すのは大変だからね。
彼女みたいに、積極的に他の人たちを殺そうとしている人にはできるだけ頑張ってもらわないと)
そんなことを考えながら、星史郎は一度止めた足を再び動かし始めた。
彼は殺人鬼でも、戦闘狂でもない。よって、無益な争いは好まない。
だが同時に、彼は目的のためならばどんな犠牲もいとわない。
異世界を渡り歩き、「双子の吸血鬼」を見つけるという目的の為なら。
その犠牲がたとえ、かつて短くない時間を共にした友人の命であっても。
(僕の魔法具は没収されちゃってるみたいだし……。この世界から出るには最後の一人まで生き残るしかない。
小狼、悪いけど君や君の友達にも死んでもらうよ?)
軽快な足取りで、夜の街を往く星史郎。その顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
【一日目 深夜 B-5 市街地】
【星史郎@ツバサ】
【状態】健康
【装備】緋炎@ツバサ
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:最後の一人になり、この世界から脱出する。
1:殺し合いを積極的に行っている人間は、できるだけ殺さない。
※桜都国編終了~日本国編開始の間からの参戦です。
※右目の魔法具は、ただの義眼に交換されています。
(死なん……。俺はまだ死なんぞ、ボケ……!
待っとれ、千鶴姉ちゃん……。必ず俺が見つけて、守ったるからな……)
負った傷は決して浅くなく、意識は朦朧としている。
それでも確固たる誓いを胸に秘め、小太郎は川の流れに運ばれていく。
【一日目 深夜 B-6 川】
【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
【状態】ダメージ(大)、意識朦朧
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:無力な知り合いと合流し、守る。
1:強い奴(男限定)がいたら戦いたい。
※麻帆良祭終了後からの参戦です。
※支給品紹介
【桃太郎の刀@らき☆すた(小説版)】
小説「スーパー童話大戦」で、かがみ・桃太郎が使っていた日本刀。
【緋炎@ツバサ】
桜都国で小狼が購入した刀。使用者の意志によって火炎を発生させることができる。
前の話
次の話
B-4。ちょうど森林部と都市部の境目に当たる、川のほとり。
そこに、二人の参加者がいた。
一人は学生服の少年……狗神使い、犬上小太郎。一人はゴスロリ服の少女……神鳴流剣士、月詠。
二人は同じ世界の出身者であり、以前同じ人間に雇われ共に仕事を行ったこともある。
しかしこの地での二人の再会は、穏やかなものとはならなかった。
現在、小太郎と月詠は戦闘を行っている。いや、その言い方は不正確だろう。
正しくは、月詠が一方的に小太郎を攻めていた。
「なんで攻撃してけえへんのです、小太郎はん? せっかくお祭りに呼ばれたんやさかい、楽しまな損ですえ?」
「アホ! お前も知っとるやろ! 俺は女は殴らん!」
月詠が目にも止まらぬ速さで振るう刃をかわしながら、小太郎は叫ぶ。
「いけずやなあ。うちは全力の小太郎はんと戦いたいのに……」
「勝手なことぬかすな! こっちはお前と戦いたくないっちゅうんじゃい!」
「う~ん……。そこまで言うなら仕方ありませんか。そもそもうちは男の子より女の子と戦う方が好きやし……。
戦ってくれへん小太郎はんには、さっさと死んでもらいます~」
その刹那、月詠の纏う空気が変わる。彼女の中の「気」が、その両腕と刀に集中していく。
「神鳴流奥義、ら~いめ~いけ~ん」
間の抜けた叫びと共に、月詠が刀を振り下ろす。するとその剣先から、電撃がほとばしる。
電撃は文字通り電光石火の速さで、小太郎に襲いかかった。
「ちぃっ!」
それに対し、小太郎は高速移動術である「縮地」を発動。間一髪で電撃の直撃を回避し、そのまま都市部へ逃げ込む。
「逃がしまへんえ~」
しかし大技を一度かわされた程度で諦めるほど、月詠も諦めがよくはない。
彼女も小太郎を追い、都市部へと足を踏み入れる。
(ああもう、面倒やな……。あいつの相手なんぞしてる暇はないっちゅうに……。
千鶴姉ちゃんやのどか姉ちゃんも巻き込まれてるんや、早いところ見つけて守ってやらんと……。
この辺は建物多いし、隠れながら少しずつ移動すれば逃げ切れるか?
敵に背中見せるんは不本意やけど、だからといって女殴るわけにもいかんしな)
建物の陰でそんなことを考えながら、小太郎が縮地で一歩を踏み出そうとしたその時。
その男は現れた。
(なんやこいつ……。いつの間に……)
突如視界の中に出現した男に、小太郎は驚愕を隠せずにいた。そして、次にわき上がっているのは警戒心。
裏社会の住人としての、小太郎の勘が告げる。「こいつはやばい」と。
男は、微笑みを浮かべて小太郎を見ている。その笑みが、かえって男の不気味さを際だたせていた。
「こんばんは」
男が口を開く。
「早速で悪いけど、死んでもらえるかな」
刃、一閃。小太郎の胸が切り裂かれ、血しぶきが上がる。
(ちっ、やっぱりか! この兄ちゃん、めっちゃ強いやないか!)
反射的に傷口を押さえながら、小太郎は心の中でこぼす。
彼には理解できていた。あとほんの少し飛び退くのが遅れていたら、自分は今の一撃で死んでいたということを。
たった一度の攻撃で、小太郎は相手の力量を十分すぎるくらいに理解した。
だが強大な敵を前にしても、小太郎に怯えや焦りの色はない。むしろ、その目は輝きを増していた。
主義主張の違いこそあれ、彼も月詠と同じ戦闘狂(バトルマニア)なのである。
「オッケー、相手にとって不足はないわ。そんなら兄ちゃん、やろうやないか」
牙と爪をあらわにし、小太郎は不敵な笑みを浮かべながら呟く。
「参ったねえ。素直に死んでくれるとありがたいんだけど。
僕は戦いがしたい訳じゃなくて、早くこの世界から出たいだけなんだ」
「そんだけ強くて、何言うとんねん、兄ちゃん。俺を殺したかったら、正々堂々勝負に勝って殺せや!」
困ったような表情を浮かべる男に、小太郎は問答無用とばかりに跳びかかる。
だが彼の爪が男に届く前に、その脇腹を衝撃が襲った。
(な、なんや! まだ兄ちゃんの間合いには……)
「逃がしまへん言いましたやろ、小太郎はん?」
(し、しもた!)
小太郎の視線の先にいたのは、月詠。たった今小太郎を襲ったのは、月詠の技・斬空閃だ。
(何やっとるんや、俺! 兄ちゃんの殺気が強すぎて、月詠の殺気が近づいてるのに気づかんやなんて……)
小太郎の脳内を、後悔がよぎる。だが、今更悔やんだところでどうしようもない。
吹き飛んだ小太郎の体は地面に叩きつけられ、そのままアスファルトの上を転がって近くの川の中へ落下した。
「申し訳ありまへん、獲物を横取りするような真似をしてしもうて。
せやけど、あの子と最初に戦ってたのはうちなんどす。堪忍な」
「別に謝る必要はないよ。僕の目的は、あくまで生き残って次の世界に行くことだ。
人数が減るのなら、誰が殺そうとかまわないさ」
「そうどすか~。けど、うちは違います。うちは、強い相手と戦いたいんどす。
小太郎はんが期待はずれやったさかい、お兄さんが代わりにうちの相手してくれまへんか~?」
月詠は惚けたような笑みを浮かべながら、刀の切っ先を男に向ける。
「悪いけど、遠慮しておくよ。さっきも言ったように、僕の目的は生き残ることだ。
さっきの子は見つけたとき殺し合いに消極的な感じがしたから攻撃したけど……。
君のように他の参加者を積極的に殺していきそうな人とは、まだ潰し合いたくない。先は長いだろうからね」
「なんや、お兄さんもいけずやなあ。そう言わんと……うちと遊んでいっておくれやす!」
一転、月詠の表情が修羅のそれへと変わる。男に突進し、袈裟斬りに刀を振るう。
男はそれを、大きく後ろに飛んで回避する。カウンターはおろか、反撃の糸口をつかもうという気すら感じられない。
それは、完全なる逃げの行動だった。
「そんなにうちの相手をするのがいやどすか? 乙女として傷つきますわ~」
緊張感のない口調で愚痴りながら、月詠は男に追撃をしかける。
だが、当たらない。男は完全に攻撃を捨てた大きな回避で、月詠の刃から逃れ続ける。
たとえ相手が逃げに徹しようと、それが並の相手なら月詠にとってしとめるのはたやすい。
彼女の剣は「速さ」を重点的に磨いたものなのだから。
だが、男はその速き剣をかわし続けている。月詠が本来の二刀流でないことを差し引いても、その事実は男の力量が月詠以上であることを示していた。
「たまりまへん……。ゾクゾクして来ますわぁ……」
休むことなく刀を振るいながら、月詠は恍惚の声を漏らす。
楽しくてたまらない。彼女は心の底からそう思っていた。
戦闘狂の血が騒ぐ。こんなに強い相手と戦えるなんて、嬉しくて仕方がないと。
だが、今の恍惚感ですら完璧なものではない。相手はまだ、こちらに攻撃をしかけてこないのだから。
お互いが相手を殺す気でぶつかり合ってこそ、真の戦闘だ。まだ足りない。この男から引き出せる楽しさは、こんなものではない。
「いい加減、その刀を使ってはもらえませんか~?」
そういいながら繰り出す唐竹割りも、やはり空振り。回避した男は、数メートル後ろに下がって止まる。
「なるほど。確かにこのままでは埒が開きそうにないしね」
男はそう呟くと、今まで使おうとしなかった刀を構えた。
彼の行動を見て、月詠は歓喜する。これでようやく、まともな戦いになると。
しかし彼女の思いは、あっけなく裏切られることになる。
男が放ったもの、それは斬撃ではなく火炎だった。
「きゃっ!」
予想外の攻撃に、思わず怯む月詠。とっさの回避で炎の直撃は避けたものの、その拍子にかけていたメガネを落としてしまう。
「あわわ、メガネメガネ……」
慌てて地面をはいつくばり、メガネを探す月詠。なんとかメガネを見つけ拾い上げるものの、その時にはすでに男の姿は消えていた。
「ふう、うちとしたことが、つまらんミスをしてしまいましたなあ。
あのお兄さんも、神鳴流と同じような技を使えたとは……。世界は広いどすなあ」
メガネをかけ直し、月詠は溜め息を漏らす。
「まあ、逃げられてしもうたもんは仕方ありまへん。次の獲物を探しに行きますか~。
今度は刹那先輩みたいな、可愛い女の子がええどすな~」
月詠は今一度緊張感の感じられない笑みを浮かべると、夜の街を駆けていった。
【一日目 深夜 B-5 市街地】
【月詠@魔法先生ネギま!】
【状態】疲労(小)
【装備】桃太郎の刀@らき☆すた(小説版)
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:強者(特に女性)と戦う。
1:男との再戦を狙う。
※修学旅行編終了~魔法世界編開始の間からの参戦です
(なんとか撒けたみたいだねえ……)
月詠の前から消えた男……星史郎は、追跡がないことを確認するとほっと息を漏らした。
(こんなゲーム、早く終わらせて次の世界に行きたいところだけど……。さすがに僕一人で50人殺すのは大変だからね。
彼女みたいに、積極的に他の人たちを殺そうとしている人にはできるだけ頑張ってもらわないと)
そんなことを考えながら、星史郎は一度止めた足を再び動かし始めた。
彼は殺人鬼でも、戦闘狂でもない。よって、無益な争いは好まない。
だが同時に、彼は目的のためならばどんな犠牲もいとわない。
異世界を渡り歩き、「双子の吸血鬼」を見つけるという目的の為なら。
その犠牲がたとえ、かつて短くない時間を共にした友人の命であっても。
(僕の魔法具は没収されちゃってるみたいだし……。この世界から出るには最後の一人まで生き残るしかない。
小狼、悪いけど君や君の友達にも死んでもらうよ?)
軽快な足取りで、夜の街を往く星史郎。その顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
【一日目 深夜 B-5 市街地】
【星史郎@ツバサ】
【状態】健康
【装備】緋炎@ツバサ
【道具】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:最後の一人になり、この世界から脱出する。
1:殺し合いを積極的に行っている人間は、できるだけ殺さない。
※桜都国編終了~日本国編開始の間からの参戦です。
※右目の魔法具は、ただの義眼に交換されています。
(死なん……。俺はまだ死なんぞ、ボケ……!
待っとれ、千鶴姉ちゃん……。必ず俺が見つけて、守ったるからな……)
負った傷は決して浅くなく、意識は朦朧としている。
それでも確固たる誓いを胸に秘め、小太郎は川の流れに運ばれていく。
【一日目 深夜 B-6 川】
【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
【状態】ダメージ(大)、意識朦朧
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:無力な知り合いと合流し、守る。
1:強い奴(男限定)がいたら戦いたい。
※麻帆良祭終了後からの参戦です。
※支給品紹介
【桃太郎の刀@らき☆すた(小説版)】
小説「スーパー童話大戦」で、かがみ・桃太郎が使っていた日本刀。
【緋炎@ツバサ】
桜都国で小狼が購入した刀。使用者の意志によって火炎を発生させることができる。
前の話
次の話
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます