寅さん(アルベルト)の人脈でスペインのフラメンコダンサー達とも知り合えた。
まずは日本だと挨拶は軽く握手をしたりするもんだが、スペイン人とだと頬を重ね触れ合い軽く抱き合う感じで挨拶するのでなんとなく恥ずかしい。
その中で一人の女性の部屋にお邪魔した。陽気さの中にも時折見せる物悲しさとたとえようの無い妖気さが合い混じった不思議な女性だった。
自分以外全てがスペイン人の空間にいると日本にいることを忘れどこか知らない異国の地にいる気分になった。
そこでは日本語をまじめに少し教えたりして遊んでいたが、寅さんには相変わらず出鱈目を教えておいた。
とあるファミリーレストランで食事をしていた時、寅さんから「このお茶は何茶だ?」と質問され、
ワインのテイスティングをする如くそのお茶を口に含み、なかば空を見上げ少し考えるしぐさで
「うん。これは加藤茶だ!」とそのお茶の銘柄を教えてあげた。
数日後また寅さんは例の如く仲間達に自慢げにお茶を出される度、口に含み少し考え「このお茶は・・・加藤茶だ!」
といかにも言い当てたかのように自慢するのであった。
そんなお茶目な寅さんだったが、日本に来た本当の目的。それは日本の女性と結婚するという事だった。
その目標をわずかな期間で達成しその日本の女性をつれてスペインへと帰国していった。
出鱈目で人に頼り気分で生きている為計画性が無いように見えるがきちんと自分の目標を達成した事はかっこいいと思う。
その一点だけを目指し他は面白おかしく出鱈目で生きるのも、自分に素直で本来の人間的でいい生き方だと思う。
しかし仕事人間だった頃の自分とはその頃徐々に馬が合わなくなりそんな寅さんとは最後は喧嘩別れとなるのだが・・・・
どうしても人目を気にしてしまうのは国民性と性格とモラルの大小の個人差で変わるわけだが、ある時アルベルトがこんな話をしてくれた。
人が大勢いる駅で好きな彼女と待ち合わせ。
今か今かと待っていると、ようやく彼女が現れる。うれしさの余り人目を気にせずキスをし抱き合う。
好きさを目いっぱい表現する。
人目を気にしたところで周りの誰も知らない人であって、どうせ人は死ぬ。誰も気にしなくなる。
といった事を説明してくれた。
国民性の違いは大いにあるにせよ、これは例として言っているだけであって実際人目を気にせずキスをし抱き合ったならば
相手の彼女の方が迷惑だと思う。抱き合うだけならまだしもそのまま勢いで地べたになだれ込むことになろうものなら犯罪だ。
要は、ベクトルは他に向けるのではなく自分に向けて心地よいとすれば、それがハッピーなら、自分の好きなように少しは行動し
周りは余り関係ないよ。生きているのは自分であって自分は自分が常に主人公で素直に生きなきゃ人生あっという間だよ。
死ぬ間際でもっとこうしたらよかったああしたらよかったと思うのは悲しすぎるから今の内に精一杯やろうよといったことを
遠まわしに言いたかったんだと自分なりに解釈したわけだ。
もっと過大に押し広げて考えみると、人生は限りあるものだが人はなかなかそこにわかっていても目を向けない。
永遠に続くとは思っていないが終わるとは今は考えられない。
例えるならば地球の寿命は太陽が地球の近くまで膨張し地球が炙られる為、今から約50億年余りの寿命だから小さくまとまらずに今のうちに
好きなことをやって今を生きろと言う事を広大なスケールの規模で考え伝えてくれたんだと思う。
でも多分奴はそこまで考えて言ってくれてない気がする。
元気にやってるか?
終わり
TANAHASHI