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2月7日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM )
平穏無事な日の体験
体験というものは、失敗なり成功なり何か事があったときだけに得られる、というものでしょうか。決してそうではないと思います。平穏無事の一日が終わったとき、自分がきょう一日やったことは、果たして成功だったか失敗だったかを心して考えてみると、あれはちょっと失敗だったな、もっといい方法があったのではないか、というようなことが必ずあると思います。それについて思いをめぐらせば、これはもう立派な体験と言えるのではないでしょうか。
形の上での体験だけでなく、日々お互いがくりかえしている目にみえないささいなことも、みずからの体験として刻々に積み重ねていく姿勢が大切だと思うのです。
【コラム】筆洗
2014年2月6日 東京新聞TOKYOWeb
▼高円寺竜三。五木寛之さんが一九六六(昭和四十一)年に書いた小説『艶(えん)歌』に出てくる、音楽ディレクターである
▼演歌専門。有能だが、影のある人物で、人呼んで「艶歌の竜」。舛田利雄監督の映画「わが命の唄 艶歌」(六八年)では芦田伸介さんが竜三を演じた
▼こんな場面がある。録音。何度も歌わせるが、竜三は気に入らない。何回目かの録音で歌手の音程が外れる。声が割れる。「よしできた」。竜三がいう
▼上ずった音程、割れた声。これこそ日本人の悲しさ、苦しさを込める演歌に似つかわしいのか。モデルは音楽ディレクターの馬渕玄三さん、と聞く。九七年に亡くなったが、島倉千代子さんの「からたち日記」などを担当した
▼馬渕さんも在籍した日本コロムビアで騒ぎが続く。日本最古のレコード会社は音楽配信会社フェイスの子会社となる。五日には両耳が聞こえぬ作曲家、佐村河内守さんにゴースト作曲家がいたことが判明した。同社がCDを出していた。ファンはがっかりしているだろう
▼佐村河内さんが悪い。悪いが、こうも思う。作品自体に罪はない。佐村河内さんも公表まで事実の重さに苦しんだと思いたい。どうしようもない人間の弱さ、愚かさ。代作という心の闇を裏に抱えることになった作品が不憫(ふびん)でならない。曲に心を揺さぶられた人がいる。作曲者が誰でもその事実は変わらない。
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