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エンカロシャー。
多くを語ろうとは思わない。だが、この血脈に近づいたからこそ、私の過去の一端を知ることができたのだ。
ただ私にとって、イソベル・エンカロシャーはいまもってなお憎みきれない存在になっている。
彼女は最初から、私に依頼を投げておきながら、お供のポビオスを連れてその現場まで出張ってきた。
廃城跡、山賊の鎮圧、デルペ騎士団城から前線基地まで。
ハーピーと戦闘状態にある騎士団城までくるとは豪胆なのか馬鹿なのか。
デルペ前線基地の団長とそりが合わないらしい。ポビオスがやり合う2人を見て、苦虫を噛んだような顔をしていたのが面白かった。
まあ実際のことろ、団長は一緒に来ていた私に対しても冷ややかな視線を送ってきていたが、少し前にデルペ前線基地で依頼をこなしていたこともあって、「貴様も大変だな」と顎をしゃくって見せた。
ところがイソベルは、北部小麦農場の塔で、ノーマン・レートの手腕をうらやみながら、その場で倒れてしまった。
ノーマン・レートがイソベルの世話をしてくれたようだが、なぜか私にケプランの町に向かえという。いま思えば、ここで気づくべきだったのだろう。シアン商会とレート商会は一枚岩ではないということを。
グリッシー洞穴で戦って、マルニの実験場で戦って、トロルと戦って。
イソベルの旅の最終目的地であるカルフェオンに入れたかと思うと、突然、私がシアン商会の英雄だともてはやされて、議会だの教皇だのに会いに行くことになってしまっていた。さすがにきな臭いと感じた。事実、エンカロシャーはくせ者だった。
案の定、同盟を結んでいたレート商会がシアン商会を陥れようと暗躍し、シアン商会のハイデルでの権利剥奪を議会で盛大にぶち上げたのだ。その場にいた私も巻き込まれて問い詰められた。
だが、自分でも不思議だったのは、あの塔の上で聞いたイソベルの独白を、その時の泣き笑いの表情を、私は疑っていなかったのだ。だから言った。「彼女を信じる」と。
周囲の人間たちは皆驚いた顔で私を見ていた。
その時、イソベルが議会に乗り込んできて、強引に全部ひっくり返してしまったのだ。不敵に笑いながら、レート家の企みをいとも簡単に暴いてしまった。最後にちらと私を見た彼女は、まぎれもなくイソベル・エンカロシャーだったのだ。
カルフェオンの橋の上。夕闇迫る中イソベルは少し頼りなく見えた。いつものように尊大で思わせぶりな口調からふと漏れるしおらしさがそうさせているのか。
そして彼女は私との契約を一方的に切ってしまった。「あなたのような澄んだ目の持ち主は遠ざけた方がいい」と。
さらに、さみしそうに、それでいて信じるかのように、進む道の頂で会おうといった。
私は肩透かしを食らった気分だった。しかしそれはつまり、私は彼女の仕事をまだ請け負ってもいいと思っていたのか。
私たちはそこで別れた。
この後私は、彼女の父親であるエンリック・エンカロシャーからの接触を受け、エンカロシャー家の呪いと過去の自分に相対すのだが、それはまた別の機会に書くことにしよう。
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はい、黒い砂漠日記です。
イソベルのエピソードは大まかにしか覚えてないので、薄味になってしまいました。
彼女はまあツンデレだと思いますが、(この段階では)エピソードが短いので、そこまでのインパクトがなかったのが残念です。でもね、きらいじゃないのよ?
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