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レハノステルという家門には、一族という概念はない。どちらかと言えば傭兵ギルド的な立ち位置だ。だから、レハノステルの名を受ける者は、生まれも育ちもバラバラだ。そしてレハノステルの門を出た後は、その名を背負うも消すも本人の自由だ。いわゆる名字として扱っているのは私ぐらいなものだろう。まあ、私の場合は世話になったので、このぐらいはなんてことはない。
歴史自体は多少長いらしいが、門下は圧倒的に少ないようだ。記憶があやふやだが、私が入った時には、同期と呼べる者は存在せず、私が独り立ちしてまだそれほど時間は経っていないが、ほんの数えるぐらいの数しか所属していないようだった。
だから、そんな数少ない同門の李鈴麗から依頼解決を手伝って欲しいとの連絡があったのには、少し驚いた。同じ門下として彼女は、ふとした時に私に挨拶に来ていた。ふわっと丸い髪型が特徴的で、まだ幼さの残るその顔といでたちは、誰が見ても新米冒険者だったが、すでに冬の山に登った後だと聞いて驚いたのを覚えている。
そんな彼女が助けが必要といってきた。話を聞こうとカルフェオンに行くと彼女は別件で外出していて、部屋に書き置きだけが残っていた。
そこに書かれていた言葉に私はまたも驚いた。ブラックスターに関する依頼だった。
ブラックスター。アヒブとカルフェオンとエリアンがうごめきひしめき躍起になって追い求めている魔石。あのウミガメの木彫りの家族だけではない数多くの人々の未来を変えた、力が宿る石。
いつかは決着をつけなくては、と思いつつ敬遠していた私は、熱くて冷たい重いモノが腹に溜まっていく感覚に陥った。いわゆる後輩の彼女が、傷を怖れず果敢にチャレンジしているというのに、いくらいまだ未熟とはいえレハノステルの名を背負う者が、同門に助力を請う屈辱をおしてでも進もうとしているのに、私は何をやっているというのか。
書き置きのそばに置かれていた赤い水晶のようなモノをひっつかみ、私は星の墓場へ向かった。
結果から言えば、李鈴麗の助けにはなれなかった。
相も変わらず超常現象の起こったところに出張ってきていたマルタ・キーンに話を聞き、瓦礫の上にある火鉢に赤い水晶をかざしたが何も起きなかったのだ。この水晶を使う資格が、私にはないようだ。
余談ではあるが、もう一度マルタ・キーンに話を聞こうと来た道を戻っていたところ、橋のたもと、崩れた斜面の中程に、腰から下を地面に埋めている影に気づいた。近寄ってみると、まがまがしい鎧に白い肌の女性。アヒブの一人か。
ひどく苦しそうだったが、命に別状はないようだった。ポーションを与え、少し介抱してやると、山の上にいる仲間にこのことを伝えてきて欲しいと頼まれた。
瓦礫と化した神殿らしき建物の中を通り、見覚えのある分かれ道に到着したが、そこにいたアヒブの見張りの一人はしかし、私がいくら説明しても信用できないという。もう一度ケガをしたアヒブのところへ戻り、鏃と手紙をもらって、山頂にとって返した。だがそれでも私という人間を信用するに足る根拠がないという。まあ、その通りだ。下心があったわけではないが、だからこそ向こうからしたらその善意が信用ならないのだろう。彼女たちはそういう環境にいるのだから。
そんなちょっとしたより道はあったが、ともかく李鈴麗の手紙に書いてあった亀裂の残滓というアイテムを手に入れて、私もこのブラックスターの依頼をなぞってみる事にした。
亀裂の残滓を手に入れ、三度星の墓場でマルタ・キーンに会い、カルフェオンのゴルガスに知恵を借りつつフローリンでカプラスの書物を漁り、凝縮したボスのオーラを作るために、取引所にプールしておいたシルバーを持ち出してクザカ、ヌーベル、オピンの名を冠した武器を手に入れ加熱して、最終的に作り上げた赤い水晶。さすがにこれだけの額を持ち出したのはマズい。近々金策を練らねば。
改めて火鉢に赤い水晶を捧げると、そこから見下ろせる、ブラックスターの落下でできた荒れ地に、不浄の化身が現れた。李鈴麗はこのモンスターに手こずっていたのだ。
どんよりと辺りが暗くなり始めた中に立つその姿形は、メディアにある溶岩洞窟のフェリードを思い起こさせるが、その雰囲気はより激しく凶悪なものだった。こちらの攻撃が効いているのかいないのかわからないほど全体的に硬い。向こうの攻撃も苛烈だ。何度も体ごと吹っ飛ばされた。気配を隠してはあらぬところに姿を現し奇襲をしかけてくる狡猾さも持っている。
鋭く突き出た石柱が2本、突如として現れた。障害物でしかないこのやっかいな柱を破壊すると、不浄の化身が怒り狂って激しく攻撃してきた。何度か死にそうにもなった。その都度大きく距離をとって体制を立て直し…そんな事を繰り返して、ようやく倒す事に成功した。
荒い息が続く。こう言ってはなんだが、李鈴麗のレベルでこのモンスターはさすがに無理があるだろう。彼女は先を急ぎすぎているのかもしれない。そう思った。
その後、手にした石をよく観察すると、どうやら加工が可能なようだ。そういえば、カルフェオンに有名な鍛冶屋がいたはず。彼に見せれば何かわかるかもしれない。もしかするとこれが、あの「ブラックスターソード」の核となるかもしれない。カルフェオンの奴らやエリアン教会に渡さないどころか、対抗しうる文字通りの武器になるかもしれない。
愛馬に鞭打ち、細い崖道を駆け抜け、カルフェオンのカノバスに会いに行った。しかしカノバスは、自分の手には負えないから、メディアのバラタン・ランソーへ持って行けば何かわかるかもしれないと言った。すぐにカブト族駐屯地にいるバラタンのもとへ向かった。
しかし、バラタンもまたどうすればいいのかわからないという。八つ当たりにも似た苛立ちを感じたが、カブト族の洞窟の奥深くにいるドーリン・モルグリムならひょっとすると、と言い始めた。ああ、彼ならあるいは。私もそう思った。
曲がりくねった洞窟の奥深く、果たしてドーリンはそこにいた。初めて見る素材を前に、異常なまでに興奮し始めた。彼の後ろにある大きな水晶が怪しく輝き始め、ドーリンが大きな鎚を振り回し水晶に激しくたたきつけた。
悲鳴にも似た金属音が洞窟の壁を震わせ、赤黒い衝撃が私の体を襲う。反射的に瞑っていた目を開くと、水晶に突き刺さっている黒深紅の剣が見えた。ドーリンに当てられたかもしれないが、私も興奮を覚えた。
ブラックスターソード。
冒険者の憧れであり類い希な強武器。それがいま私の目の前にあるのだ。
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ちなみに後から聞いた話では、私がブラックスターソードを手に入れようとしている間、李鈴麗はわけのわからぬままレマ島に向かい、ヘカルの狩りに失敗したあと、別の依頼を進めていたそうだ。
なんだか彼女は彼女で大変だったようだ。
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はい、黒い砂漠日記です。
今さらですがブラックスター武器のクエストをやってみました。
後から作ったLNのキャラで始めたのですが、Lv60でもA220前後D300前後程度では不浄の化身には歯が立ちませんでした。
召喚アイテムである暗黒の目を他キャラに渡せばそのまま進行できるかな、と思って実際にやってみたのですが、そもそも元になるクエストを受注してないので、シナリオ自体進みませんでした。あたりまえだ。
なので、WRで改めてシナリオを進めて、無事ブラックスターソードを手に入れました。すぐさま強化したのですが、+12あたりから躓き始めて記憶の欠片が底をついて、真II止まりになりました(´・ω・`)
あと、海洋生物の狩りはホントに苦手です…(涙
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