いわさきあきらの音人的生活

京都のキーボーディスト岩崎明のブログです。音楽の知識、機材の紹介、日記など。

思い出のシンセ・機材「TASCAM PORTA TWO」

2009年10月31日 | 思い出のシンセ・機材 ~録音機材編~
 前回のTEAC20-4は、4トラックでした。

 4トラックというのは、
 4つの音を重ねて録音できるということです。
 例えば、歌ものを作ろうとすると、
 オケ(伴奏)は、3トラックしか使えません。

 こういう時に使う技で、

「ピンポン」

 というのがあります。


 例えば、1トラック目にドラム、2トラック目にベース、
 そして、3トラック目にピアノを入れたとします。

 その1と2と3をミックスして4トラックに入れるわけです。

 そして、1、2,3トラックの上から、
 また音を重ねていくわけです。

 こういう具合に、
 一つのトラックへ、いくつかの音をまとめる技を
「ピンポン」と言うのです。


 多重録音の名盤として、
 ビートルズの
「サージャント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」
 がありますが、これは、8トラックを2台シンクロさせて、
 さらにピンポン録音を多用したと言われる作品です。


 けれど、ピンポンはかなり音が悪くなります。
 そして、一度まとめた音は、
 後でバランスを取り直すことができません。

 機械の性能とそれを使う技術がかなり要求されます。


 もう一台MTRがあれば、
 そういった問題のかなりの部分が解消されます。
 そこで、知り合いにその頃出始めて、
 主流になりつつあった、
 カセットMTR タスカム・ポータ2を借りて、
 作品を作っていました。

 TASCAM(タスカム)は、
 TEAC(ティアック)のリネームしたメーカー名です。

 244というカセットMTRが大ヒットしたと思います。

 倍速(一般のカセットは4.8cm/1秒、これは9.6cm/1秒)と、
 dbx(ディー・ビー・エックス)という
 ノイズリダクションが特徴でした。

 カセットテープの宿命は、
 ヒスノイズと言われる「サー」という音と、
 トラック幅が少ないので
 ダイナミックレンジ(音量幅)が狭いということでした。

 dbxはコンプレッサーを使った方式で、
 大きい音は小さめに、小さい音は大きめにして記録します。
 そして、再生時にそれを戻すことで、
 小さなヒスノイズは、さらに小さくなり、
 ダイナミックレンジは大きくなるという、
 画期的な方式でした。

 カセット式のMTRは
 ミキサーも組み込まれていることもあり、
 ミュージシャンが自宅で手軽にデモを作るのに、
 大変重宝されました。

 私もその後、AKAIのMG614を買うことになりますが、
 それは、また次回に。



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思い出のシンセ・機材「TEAC 20-4」

2009年10月24日 | 思い出のシンセ・機材 ~録音機材編~
 マイク・オールドフィールドの「チューブラベルズ」というアルバムは、
 エクソシストのテーマとして有名ですが、

 これは、マイク・オールドフィールド一人がさまざまな楽器を演奏して、
 オーバーダビングすることによって作り上げられた作品です。


「多重録音」

 という、音を重ねて一人で作品を作り上げている方式を
 当時、高校生ぐらいだった私は知ったわけです。


 音楽をやっている友達もほとんどいなかったので、
 この一人で作品を作る方法が、とても魅力的に見えました。


 最初は、カセットテープ同士で音を重ねる作業をしたのですが、
 とにかく、ノイズがどんどん増えて、
 2回ぐらいダビングすると、もうノイズの方が大きくなります。

 そこで、当時呉服商として、羽振りが良かった親に頼んで、
 大学の入学祝いとして買ってもらったのが、この

 TEAC(ティアック)20-4

 という4トラック・オープンテープのマルチレコーダーです。


 唯一ともいえるギターをやっている友人が、
 SONYのミキサーを持っていたので、
 それを借りて、ミックスダウンをしていました。

  
 フェンダー・ローズ、YAMAHAのCS10、そして、アップライトピアノと、
 手動でパターンを切り替えるアナログのリズムマシン(名前はもう覚えてません)
 を使って、私の多重録音人生の第一歩を踏み出したという、
 本当に思い出深い機材です。

 マイクはテクニクス(パナソニックの昔のオーディオ・レーベル名)の
 コンデンサー・マイク(1本1万5千円ぐらいだったかな?)を2本持っていました。

 その頃は、電車や波や鳥の声などの自然音を録音するのがブームで、
 オーディオメーカーから、マイクなどが色々出ていました。

 肩からつり下げて持ち運べる、
 ソニーのデンスケなんていうカセットデッキも出ていたのを
 今、思い出しました。

 TEAC 20-4は、
 とにかく音が太かったように覚えています。

 後に、これの新型バージョンを知人が持っていて、
 聴き比べたところ、
 新型の方が値段は安くなっていたのですが、
 音は軽くなっていました。

 ただノイズリダクションは搭載されていなかったので、
 ピンポン(トラックからトラックへの録音)をすると、
 やはり、ノイズが多くなりました。


 多重録音の開始とともに、
 色々な録音技術の壁に遭遇していくわけです。


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思い出のシンセ・機材「Kurzweil K2000R」

2009年10月16日 | 思い出のシンセ・機材 ~シンセ編~
1990年代には、音楽制作の現場では、サンプラーがスタンダードになっ
ていました。

やはり、音がいい。

プレイバックサンプラー式のシンセでは、
メモリーに限りがあるため、
かなり音のデータを圧縮していたようで、
音のクオリティーという面では、
サンプラーに軍配が上がったようです。

ただ、サンプラーはいちいち音色をロードしなければなりませんでした。

その頃は、フロッピーディスクがメインだったため、
そして、クオリティーの高いデータは何枚ものディスクになり、
ひとつの音色を呼び出すのに、ずいぶんと時間がかかりました。

なので、「差し替え」という方式、

つまり、呼び出しが早いシンセ音源で音色を決めて、
シーケンスデータを作成し、
後で、音をサンプラーで「差し替え」ていく方式が
プロの音楽制作現場では主流でした。

その後、CD-ROMなどの出現で、多少音色のロード時間も短縮され
ますが、
それでも、音色選びにはかなりの時間がかかります。

マニュピレーターという、
シンセ、サンプラーなどの音色の機械操作などを専門にした
仕事が全盛だったのもこの頃です。

キーボードは、生楽器の代わりという役割が多くなって行き、
キーボーディストも、演奏者というより、
アレンジャー、音楽制作の方をメインとしている人が多くなりました。

サンプラーの出現によって、
ドラムスやオーケストラなどの仕事は激減したようです。

バブルの崩壊の影響もあって、
音楽制作の費用も少なくしようという流れもあったのだと思います。


そんな中、私がその頃買ったのが、

カーツゥエルK2000R(写真)で、

圧縮していない波形のプリセット音色に、
さらにサンプラー機能もついた音源モジュールです。

約40万円ぐらいだっと思うのですが、
過去に買った機材の中では一番といえる高額な機材です。

この機種の売りは、
その頃サンプラーとしてスタンダードだった
AKAIのSシリーズのデータを読み込むことができたことです。

その他、海外で有名だったサンプラーメーカー
ENSONIQ(エンソニック)のデータも読むことができました。


サンプラーは、その一方で、「ブレイクビーツ」という、
過去のアナログレコードからサンプリングされたリズムパターンを使う
ジャンルも生み出し、
それは、今のMACのガレージバンドなどに見られるような、
データの切り貼りで曲を作る方法の原型になります。

サンプラーの出現で、音楽制作の方法が根本的に変わってきたんですね。

思い出のシンセ・機材「Steinberg The Grand 2」

2009年10月08日 | 思い出のシンセ・機材
 サンプリングのピアノ音源の決め手になるのが、


  サンプリング周波数(デジタルの音の精度)

  スプリット(ひとつのサンプルでいくつの鍵盤をまかなうか)

  ベロシティ・スプリット(弾く強さによってサンプルをいくつにわけるか)

 
 であると、前回までにお話ししました。


 さらにもうひとつ、「サンプリング・タイム」というものも大事です。

 ピアノは弾いて、そのまま押さえていると、かなりの長い時間音が鳴っています。
 これをデータにすると、かなりのメモリーの量が必要になります。

 それに、実際の曲では、そこまでの長い時間
 鍵盤を弾きっぱなしにするというのはまれです。

 なので、ほとんどのシンセのピアノ音源では、途中からループ、
 つまりある部分を繰り返しながら音量を下げて、
 メモリーを節約しています。

 鍵盤を弾きっぱなしにして、耳を澄ませると、
 途中から急に音の揺れがなくなる部分がわかることがあります。


 すべての88鍵盤を何段階もの音で、
 高いサンプリング周波数で、
 音が切れるまでサンプリングする。

 これが、サンプリングのピアノ音源の理想なのですが、
 メモリーの容量が限られているハードのシンセサイザーでは、
 むつかしいものがあります。
(それでも、最近はかなりのメモリー量を使ったピアノの音色もありますが)


 最近は、ソフト音源で、
 色々な種類のピアノ音源が見られるようになりました。

 ソフト音源とは、コンピュータのハードディスクを使い、
 コンピュータをシンセ化する音源で、
 これなら、多くのメモリーを確保することができます。

 例えば、写真は私が使っている「The Grand 2」というソフト音源ですが、
 これは、2台のグランドピアノをいろいろなベロシティーで、
 ループを使用せずにサンプリングしているため、
 音が切れるまで、不自然な感じがありません。

 ただ、メモリーは3.5GB(ギガバイト)とかなりの量です。
 つい最近、「The Grand 3」が発売されましたが、
 これは、さらにメモリー量が増えているようです。


 ソフト音源は、音のクオリティーは高いのですが、
 コンピュータが変われば使えなくなったりするので、
 このコンピュータがコロコロと新しくなるご時世では、
 使える期間が限られるのが難点かもしれません。

 ピアノのサンプリングについて書いていきましたが、
 次回は、いよいよ最後です。

 ピアノ音だけではなく、ノイズというものもピアノの音のひとつの成分になっている。
 そういうことを、お話ししたいと思います。



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思い出のシンセ・機材「KURZWEIL MP-1」

2009年10月01日 | 思い出のシンセ・機材
(写真は、カーツゥエル ME-1、私が持っていたMP-1の後継機種。ピアノのサンプリングの老舗といえるカーツゥエル、今でも、MP-1は中古市場で人気が高いようです)

 前回は、サンプリング周波数についてお話ししましたが、

 ピアノのサンプリングの決めてとして、他に、

「スプリット(分割)」

 が、あります。

 そして、「スプリット」も2種類あって、
 まず、鍵盤上にどれだけのスプリット・ポイントを設けるか?

 理想的には、88鍵盤のすべての音をサンプリングして、
 ひとつの鍵盤にひとつの音を割り当てれられればいいのですが、
 メモリーなどの問題で、ひとつの鍵盤の音のピッチを変えて、
 いくつかの鍵盤に割り振るわけです。

 ピッチが変わると、もちろん音質も変わるので、
 あまりピッチが高かったり、低かったりすると、
 ピアノの音からかけ離れてしまいます。

 なので、ある程度のポイントが必要で、
 このポイントが多ければ多いほど、
 理屈的には、音がリアルになる、ということです。

 ただ、そのサンプルが変わるところで、
「あ、ここで、変わった」
 と思われると、不自然な感じになるので、
 そのつながり具合も、大事になります。


 もうひとつの「スプリット」は、

「ベロシティー・スプリット」

 ベロシティーとは、音の強さのことです。
 ピアノは弾く強さによって、弦の響きも変わります。

 この弾く強さを何段階かにわけて、サンプリングして、
 鍵盤を弾く強さで、段階的にそれに応じたサンプリングを再生するのが、
 この「ベロシティー・スプリット」です。

 これも、理屈的には、多ければ多いほど、
 リアルなピアノになる、ということになります。
 
 最近のピアノ音源では、上等のものでは、
 3段階から4段階のベロシティー・スプリットになっているようです。


 つまり、スプリット・ポイントが多いほど、
 ピアノは、よりピアノらしくなるはずですが、
 逆に、そのポイントが多いほど、それぞれのサンプルを不自然なくつなげるのが
 むつかしくなります。


 一鍵盤ずつ、そして、いろいろな強さで、
 実際に弾いて、確かめてみるのがいいでしょう。

 まだ、他にも、「サンプリング・タイム」というのも音の決めてになります。
 それは、また次回に。