中野坂上駅・2019年10月
公式っぽい書式の「途中階から階段になります」
都営大江戸線・中野坂上駅の改札階にこんなサインが掲示されている。ホームに降りていくためのエスカレーターがあるのだが、エスカレーターは途中で終わってしまいそこから先は階段しかない、ということを図示している。階段の昇降を避けたい人にとっては罠のような構造だ。
実はこのサイン、以前は野良サインとして掲示されていたものだった。
中野坂上駅・2018年10月
野良サイン時代の「途中階から階段になります!!」
「公式化」前後で見比べると、文言の「!!」がなくなったり、見た目部分の細かい調整はされているが、大まかなレイアウト・テキスト内容・図の構造は完全に一致している。
こうした「出世」に気づくと、野良サインの存在が肯定されている感じがしてなんだかうれしくなる。野良サインが単なるワークアラウンドのまま終わるのではなく、サインシステム側のアップデートに繋げられているようにも思えて、なんとなく希望を感じる。
上野駅・2016年8月
方面ごとに改札口が異なるタイプの駅なので、改札外にこういう案内がある
銀座線・上野駅のサイン。柵に取り付けているあたりに野良っぽさがあるものの、平面的な見た目は東京メトロのオフィシャルのフォーマットになっている。
これも前世は野良サインだった。
上野駅・2009年9月
ビーポップの明朝体で書かれた「浅草/田原町/稲荷町」
公式化の前後で記載内容はだいぶ整理されているが、「浅草方面に行きたい人はこちらへ」という趣旨と柵本体は変わっていない。おそらくこの野良サインがなければ、上の公式サインは生まれなかっただろう……。
新橋駅・2012年
ホーム柱の注意喚起サイン
東京メトロの公式のサインらしい書体・配色だが、これも以前は野良サインだった。
新橋駅・2009年9月
ホーム柱に掲示されたビーポップの文字 (撮影者:JTC)
文言や改行位置が、原作である野良サイン時代のものに忠実につくられている。
公式化にあたって、「足元にご注意ください」の行がより強調され、より適切にメッセージが伝わる様になったように見える。
自分が見た範囲で思い出せる出世サインはこの3種類だけなのですが、おそらく実際にはもっとたくさんの事例があるだろうし、多分そのほとんどには気づけていないと思う。
こうした事例に気づくためには定点観測的に同じ場所に何度も行くこと、「なんてことのない野良サイン」も記録していくことが必要なのですが、なかなか難しいですね……。