駅でよく見かけるが、駅以外ではあまり見ない謎の書体、というのがある。
新宿駅・2019年11月
でかいハートの上にある、これのことです。
「テプラ」を巨大化したみたいなシールとこの丸ゴシックの書体のセット、駅でサインとして使われているところをよく見かけるのです。
とにかくいっぱいある
新宿駅・2018年2月
同じく新宿駅で。文字が縦に長くなっているが、多分これも同じ書体……。
このシールに注目して過去に撮った野良サイン画像を掘り返してみると、本当にいっぱい出てくる。
新宿駅・2019年10月
西国分寺駅・2016年11月
市ケ谷駅・2019年9月
青山一丁目駅・2015年8月
秋葉原駅・2008年12月
目白駅・2015年12月
末広町駅・2009年9月
末広町駅・2009年9月
角ゴシックもある
「帯状のテープの幅いっぱいに文字が印字されたシール」の写真を探していると、丸ゴシック体の文字だけでなく角ゴシック体の文字もたまにある。これも似たような雰囲気を感じるので同じマシンで刷られているのかもしれない……。
高田馬場駅・2019年10月
上野御徒町駅・2014年4月
外苑前駅・2015年8月
一体なんなの→検索→発見
DTPで使用されるような一般的な書体にはない、どことなく不思議な雰囲気があるこの丸ゴシック体。かたちが不自然というか、クオリティがあまり高くないような……。
そもそもこの「テプラ」をでっかくしたみたいなシールはなんなのか。そういう機械があるのだろうか。テプラにはこんなにでかいシールを印刷できる機種はなさそうだしほかのメーカーだろうか。業務用かなにかかな。この書体も、このシールマシンに搭載されているものなのか……。
この未知のシールマシンのことが気になり、Google検索でちょっと検索してみるが見つからない、ということを何度も繰り返してきて、10年近く経ってしまった。
そろそろ正体を知りたい……!と思い、改めて本気出してGoogle検索をすることにしたのが2019年夏。
検索キーワードを少しずつ替えて懸命に画像検索を続ける。が全然それらしいものがヒットしない。
検索チャレンジを開始して数時間、なんとなく「例のテープ」はカートリッジとして販売されているのではないか?という仮定から、その商品ページを探しだすことはできないだろうか……と思った。
そのアプローチで検索バーに入れたキーワードが [シール 巻 100mm プリンタ] というものだった。
ヒットした画像を見ていると……おや……??というものが。
なんだか例の丸ゴシックぽい……!!!
型番らしきものが出ているのでこれを検索してみます。
右の「5Sの徹底」の画像をみて声が出てしまいました。例の丸ゴシック体だ!それにしても、なんて現場みのある利用例なのでしょう……。これはやはり業務用だったのですね。
長年気になっていたシールメーカーの正体はどうやら、事務用品メーカー・マックスが「サインプリンタ」として販売している機器「ビーポップ」だったようです。
入手
マックス PM-100(USED)
これはぜひ手元に1台持っておきたい……(何のために?) という気持ちでいっぱいになってしまったがかなりのお値段。でもほしい……(なぜ?)。
いつか富豪になったら新品で買います……などと言いながら今回は中古市場で入手してしまいました。(※インクリボン・ラベルシールは一般流通されているものを定価購入しました。許してください)
PM-100はパソコンにUSB接続して印刷するタイプの機種でした。専用のアプリケーションを使用して印字内容を作成できるのですが、これに付属しているのがTrueTypeフォント「MAX太丸ゴシック体」「MAX太角ゴシック体」。すなわち例の書体の正体でした。
#よき電話マーク MAX ☎️ pic.twitter.com/0QGossecvx
— ちかく (@ooooooooo) November 10, 2019
駅以外でも見えるようになってきた
ビーポップの実機に触れて以降、駅でビーポップ・サインの存在に気づきやすくなってきた。というか、駅以外で使われているところにも遭遇するようになった。
「カッティング機能をつかって文字のかたちにシートを切り取ることができる機種」の存在を知ったということもあるだろう。とにかく以前よりもあきらかに「見える」ようになってきた。一体なんなんだこの能力は……。
小岩・2019年12月
小岩・2019年12月
駒込・2020年3月
船堀・2020年7月
鹿浜・2020年2月
付記
この記事は、2020/5/30にYouTubeで配信された「文字の話をしよう #1」にゲスト出演した際のトーク内容をベースに書きました。
ビーポップ以外にも野良サインや、高島屋とタミヤの制定書体についての話などをしています。是非あわせてご覧ください!
付記2
この記事で紹介したビーポップ・サインも含め、これまでに見つけた事例をたくさん載せた同人誌『えきなか まちなか ビーポップ』を発行しました。
(購入情報などは、↑のリンク先をご覧ください)