「必殺ノック返し」

近所にいいお店を見つけた。

グラスワインが美味しくて、コースの前菜もスープもサラダもメインも美味しい。あっパンも。

インテリアがクラシックで纏めてあって落ち着く。

人気の通りから少し角を曲がっただけなのに静かで予約のテーブルもあるけれど、フラッと立ち寄れる気軽さもある。

ワインレッドの別珍のカーテンで仕切られたコーナーの奥に姿見と化粧室があった。

照明も壁に掛かっている絵もコーナーに置かれている小物たちも違和感無くクラシックな物ばかりなのに、やや奥行きの長い化粧室の扉を開けた時に目に飛び込んで来たのは、不釣合いなテニスボールの黄色だった。

誰かが忘れていったのかな？
どうしてボールなんて持って入るのかな…

暫くしてボールが置いてあった真鍮製の入れ物にテプラで作られたシールが貼ってあるのを見つけた。

【必殺ノック返し】

ん？
あ～扉まで遠いからね。