「十一番目の志士(上)(下)」
著者 司馬遼太郎
めらめら度★★★★☆
20210913MON-20210927MON
9月27日に読了した本を今更になって振り返る…。主人公の天堂晋助は、かの宮本武蔵が創始した二天一流を使う長州の人斬りである。この人物像だけで堪らなく面白いよなァ。史実に忠実な作品が多い司馬さんなので、途中まで、天堂晋助が実在の人物だと思って読んでいた。しかし、あまりにも劇的な存在で、無茶苦茶、暗躍しまくりだ。調べてみると、案の定、架空の人物だった。
登場人物こそ創作色が強いが、幕末の長州の姿は、かなり史実に基づいている。司馬さんの小説は、史実か、創作か、どちらかに偏っている場合が多いので、ここまで史実と創作が入り混じった作品は珍しいのかも。史実と創作のバランスが素晴らしく、最高に面白かった。この人斬りは、幕末の激動を生き抜くのか? 明治まで暗躍し続けるのか? 上下巻が短く感じるほどだった。
が、しかし…。結末が何とも呆気ない。投げっぱなしのエピソードを回収していないのだ。妹は、どーなったの? 敵討ちのお嬢様は、どーなったの? 天堂晋助と出会った女たちの行く末が描かれてないんだよねェ。終盤までは、過去に読んだ司馬作品の中でもトップクラスの面白さだったが、この結末は、正直、ワーストだ。ちゃんと最後まで創作人物たちを描いて欲しかった。
文藝春秋「十一番目の志士(上)新装版」770円
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