世界中を震撼させたVW(フォルクスワーゲン)の不正ソフト事件。三菱自動車の燃費数値不正操作事件。未だに解決しないタカタの「殺人エアバック」問題。車をめぐる問題は、後を絶ちません。今、HV(ハイブリッド)PHV(プラグインハイブリッド)PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)と並んで「クリーンディーゼル」が注目され、売れています。「五月蠅い・遅い・臭い」「いいのは燃料代が安いだけ」「大気汚染の元凶」と揶揄され、一時乗用車から姿を消した「ディーゼルエンジン」が復権していますが、本当に「クリーン」になったのでしょうか?ディゼルエンジンの仕組みから調べてみましょう。
1.ディーゼルエンジンは液体燃料を圧縮着火させる。液体燃料は圧縮加熱された空気
中で自己発火する。油滴の拡散燃焼が拡がり、燃焼ガスの膨張でピストンを押し出
す「圧縮着火拡散燃焼機関」である。ディーゼルエンジンの本質は点火装置の不要
な内燃機関である。
2.空気だけを圧縮した中で燃料が自己発火するため、予混合燃焼ガソリンエンジンで
問題となるノッキングやデトネーションが発生しない。そのため過給による吸入充
填量の増加で気筒容積あたりの低出力を補うことが容易。特にスロットルバルブを
持たず低速でも排気圧力が高いのでターボチャージャーにより排気エネルギーの
一部を回収し、効率を維持したまま、排気量1ℓ当たりの出力を100馬力程度に
することも可能。
3.ガソリンエンジンは点火方式が「火花点火」、燃焼方式が「均一予混合燃焼」であ
る。あらかじめ燃料を気化させた混合気をシリンダーに吸入、圧縮したのち、電気
火花により点火する。均一混合気に満たされた燃焼室に火炎面伝播が発生し燃焼域
が半球状に広がって間欠燃焼する。シリンダー直径が大きすぎると火炎伝播速度が
間に合わずシリンダーの外周に近い混合気まで点火できなくなるので、シリンダ直
径(ボア)に限界がある。一方で予混合燃焼ではPMは発生しない。ただし圧縮行
程で燃料噴射する直噴ガソリンエンジンは気化できない液滴の残る不均一な成層
燃焼なので、PMが発生する。(あくまで例外的に)ディーゼルエンジンは拡散燃
焼なので容積に制限はない。ただし、高圧下の拡散燃焼速度は遅いので大容積エン
ジンは低回転に限られる。これは、むしろ大型船舶やポンプ、発電機などの大出力
エンジンにとって都合が良い。ただし速度変化の激しい車両には多段変速機が必要になる。ガソリンエンジンは混合気の吸入量をスロットルバルブによって絞ることで出力を制御するのに対し、ディーゼルエンジンは燃料噴射量だけで出力制御するため、ポンピングロスが少なく、効率が良い。また同じ理由でディーゼルは負荷変動によって空燃比も変わり、全般的にも希薄燃焼であり、理想空燃比は実現できない。これは容積あたりの燃料の充填が少ないことを意味し、気筒容積あたりの出力が低い傾向にあるが、過給により補完できる。特にスロットルがないため低回転から排気量が多いのでターボチャージャーとの相性が良い。
少々難しい言葉もありましたが、熱効率が高くて低回転からパワーを引き出せる事は分かってもらえましたでしょうか?燃料の精製が不十分でも作動するので、開発途上国などでは、欠かせない存在でもあります。さて、いい事だらけの様に見えるディーゼルエンジンですが、どうしても克服できない「排気ガス処理」の問題がある事はご存知ですか?PM(黒煙・粒子)とNOx(窒素酸化物)。二律相反するこの2つの処理方法こそがディーゼルエンジンの最大の問題であり、アキレス腱なのです。すなわち、
自動車用ディーゼルエンジンの価格はガソリンエンジンの倍になる(国産車の車体価格差で40万-50万円高い)。スロットルと点火装置が要らない代わりに、高価な燃料噴射系と補機類が必要となりエンジン全体は高コストになる。拡散燃焼なので、黒煙やPMが発生しやすいうえに、燃焼室内が高温高圧かつ希薄燃焼域(軽負荷時は30:1から60:1)で酸素と窒素も過多であるためNOxも発生しやすい。排気対策をするにも、排気中の残留酸素が多い酸化性雰囲気では三元触媒を使えないため、PMとNOx対策に別々の後処理装置が必要となり高コスト化する。
三元触媒とは、CO(一酸化炭素)HC(炭化水素)NOx(窒素酸化物)を浄化するもので、ガソリンエンジンでは必須のものです。吸入空気量・燃料噴射タイミング及び量・排ガス中の酸素濃度等々を総合的にコントロールすることで、排ガス問題をクリアしているのです。三元触媒が使えないとなると、排ガス処理はどうするのか?どちらか一方に的を絞るか、両方の対策を取るかの2択にならざるを得ません。すなわち、PMを抑えて、NOxを吸蔵触媒で処理する。NOxを抑えて、PMを吸蔵触媒で処理する。または、両方を同時進行させる。これ以外はありません。現在、国内で販売されているディーゼルエンジン車は、もちろん国の規制をクリアしてはいます。しかし、これから車が年を重ねる毎に排ガス浄化装置も劣化します。そしてその時に、規制値を超える排ガスを拡散させたらどうするのか?今のところ、まだ誰も分からないのです。法的な規制もありません。本当に「クリーン」は「クリーン」であり続けられるのか?ディーゼルエンジンに対する疑問符は、払拭されたとはとても言えません。ディーゼルエンジンは「エコ」では無いと言って差し支えないでしょう。
1.ディーゼルエンジンは液体燃料を圧縮着火させる。液体燃料は圧縮加熱された空気
中で自己発火する。油滴の拡散燃焼が拡がり、燃焼ガスの膨張でピストンを押し出
す「圧縮着火拡散燃焼機関」である。ディーゼルエンジンの本質は点火装置の不要
な内燃機関である。
2.空気だけを圧縮した中で燃料が自己発火するため、予混合燃焼ガソリンエンジンで
問題となるノッキングやデトネーションが発生しない。そのため過給による吸入充
填量の増加で気筒容積あたりの低出力を補うことが容易。特にスロットルバルブを
持たず低速でも排気圧力が高いのでターボチャージャーにより排気エネルギーの
一部を回収し、効率を維持したまま、排気量1ℓ当たりの出力を100馬力程度に
することも可能。
3.ガソリンエンジンは点火方式が「火花点火」、燃焼方式が「均一予混合燃焼」であ
る。あらかじめ燃料を気化させた混合気をシリンダーに吸入、圧縮したのち、電気
火花により点火する。均一混合気に満たされた燃焼室に火炎面伝播が発生し燃焼域
が半球状に広がって間欠燃焼する。シリンダー直径が大きすぎると火炎伝播速度が
間に合わずシリンダーの外周に近い混合気まで点火できなくなるので、シリンダ直
径(ボア)に限界がある。一方で予混合燃焼ではPMは発生しない。ただし圧縮行
程で燃料噴射する直噴ガソリンエンジンは気化できない液滴の残る不均一な成層
燃焼なので、PMが発生する。(あくまで例外的に)ディーゼルエンジンは拡散燃
焼なので容積に制限はない。ただし、高圧下の拡散燃焼速度は遅いので大容積エン
ジンは低回転に限られる。これは、むしろ大型船舶やポンプ、発電機などの大出力
エンジンにとって都合が良い。ただし速度変化の激しい車両には多段変速機が必要になる。ガソリンエンジンは混合気の吸入量をスロットルバルブによって絞ることで出力を制御するのに対し、ディーゼルエンジンは燃料噴射量だけで出力制御するため、ポンピングロスが少なく、効率が良い。また同じ理由でディーゼルは負荷変動によって空燃比も変わり、全般的にも希薄燃焼であり、理想空燃比は実現できない。これは容積あたりの燃料の充填が少ないことを意味し、気筒容積あたりの出力が低い傾向にあるが、過給により補完できる。特にスロットルがないため低回転から排気量が多いのでターボチャージャーとの相性が良い。
少々難しい言葉もありましたが、熱効率が高くて低回転からパワーを引き出せる事は分かってもらえましたでしょうか?燃料の精製が不十分でも作動するので、開発途上国などでは、欠かせない存在でもあります。さて、いい事だらけの様に見えるディーゼルエンジンですが、どうしても克服できない「排気ガス処理」の問題がある事はご存知ですか?PM(黒煙・粒子)とNOx(窒素酸化物)。二律相反するこの2つの処理方法こそがディーゼルエンジンの最大の問題であり、アキレス腱なのです。すなわち、
自動車用ディーゼルエンジンの価格はガソリンエンジンの倍になる(国産車の車体価格差で40万-50万円高い)。スロットルと点火装置が要らない代わりに、高価な燃料噴射系と補機類が必要となりエンジン全体は高コストになる。拡散燃焼なので、黒煙やPMが発生しやすいうえに、燃焼室内が高温高圧かつ希薄燃焼域(軽負荷時は30:1から60:1)で酸素と窒素も過多であるためNOxも発生しやすい。排気対策をするにも、排気中の残留酸素が多い酸化性雰囲気では三元触媒を使えないため、PMとNOx対策に別々の後処理装置が必要となり高コスト化する。
三元触媒とは、CO(一酸化炭素)HC(炭化水素)NOx(窒素酸化物)を浄化するもので、ガソリンエンジンでは必須のものです。吸入空気量・燃料噴射タイミング及び量・排ガス中の酸素濃度等々を総合的にコントロールすることで、排ガス問題をクリアしているのです。三元触媒が使えないとなると、排ガス処理はどうするのか?どちらか一方に的を絞るか、両方の対策を取るかの2択にならざるを得ません。すなわち、PMを抑えて、NOxを吸蔵触媒で処理する。NOxを抑えて、PMを吸蔵触媒で処理する。または、両方を同時進行させる。これ以外はありません。現在、国内で販売されているディーゼルエンジン車は、もちろん国の規制をクリアしてはいます。しかし、これから車が年を重ねる毎に排ガス浄化装置も劣化します。そしてその時に、規制値を超える排ガスを拡散させたらどうするのか?今のところ、まだ誰も分からないのです。法的な規制もありません。本当に「クリーン」は「クリーン」であり続けられるのか?ディーゼルエンジンに対する疑問符は、払拭されたとはとても言えません。ディーゼルエンジンは「エコ」では無いと言って差し支えないでしょう。