limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

life 人生雑記帳 - 39

2019年06月26日 17時18分59秒 | 日記
「きっかけは、この手紙でした。“塩川が不当な事を女生徒に強いている”と言う告発文です。翌日には、生徒会長の原田の元にも同じモノが届いています。そこで、僕等は極秘裏に調査を開始。差出人の特定と他にも“被害者”が居ないか?から手を付けました。そして、調べて行く過程で現像室の“不可解な使用”と“証拠のネガフィルム”に辿り着いた訳です。写っていたのは、女生徒たちの“恥ずかしい姿”。恐らく“脅迫”の原版だと思われます!現像室でプリントした写真のありかは不明ですが、多分塩川のデスクかロッカーか官舎にあるものと推察します。残念ですが、僕等の手でこれ以上の証拠を集める事は不可能です!塩川に察知されたら全て隠蔽されるでしょう!“被害者”からの聞き取りを行った記録がこちらのノートにまとめてあります。“授業を受けさせずに廊下に立たされる”とか“単位が欲しければ写真を撮らせろ!”と強要されたり、“写真をバラ撒かれたくなければ、金を寄越せ!”など脅迫内容は多岐に渡ります!いずれも教職員にあるまじき行為です!」僕の話を聞いていた中島先生と佐久先生の顔からは血の気が失せていた。2人とも呆然とネガフィルムとノートに眼を落している。「Y、これは本当なんだな?」佐久先生が意を決して聞いてくる。「ええ、全て事実です。授業中に塩川が女生徒達に罵声を浴びせているテープもありますよ。お聞きになれば分かります!」両担任にヘッドフォンを付けさせるとテープを再生した。「外道が!」佐久先生はヘッドフォンを叩きつけて憤怒の表情を見せる。中島先生は佐久先生に眼で合図を送った。“話すぞ!”と言わんばかりだ。「Y、実は我々も同じことを追っていたのだ!4月半ばに4期生の保護者から苦情が相次いでな、その内容が“塩川教諭が授業を受けさせてくれない”と“写真を撮られて金銭を強要させられている”と言うものだったのだ。校長が塩川を呼んで問い質したが、“事実誤認”だと主張して逃げ切られたのだ。だが、どうも様子がおかしいので、ずっと水面下で調べ続けていたんだが、どうにも尻尾が掴めなかったのだ!」「俺は出張を名目にして、前任地の学校を徹底的に調べ上げたんだが、証拠は掴めなかった。既に隠滅した後だったのだ!それが本校での案件では、お前の手に証拠が渡り、今、目の前にある訳だが言語道断だ!」佐久先生は人を殺めた様な顔つきになっている。「ともかく、お前の手で証拠は揃えられた。これは僥倖だったよ!知っているは査問委員会のメンバーと生徒会のメンバーだけだろうな?」中島先生が誰何して来る。「はい、限られたメンバー以外は何も知りません。特にネガフィルムについては、僕と西岡と小佐野以外は眼にしていません!」「相変わらず手回しがいい!核心を知り得ているのは、限られた一部の者だけか。正着だな!」「お前の言う通り、ここから先は壁が厚い!下手をすれば“濡れ衣”を被せられていただろう!塩川には悟られていないだろうな?」佐久先生も聞いてくる。「今のところ大丈夫ですが、ネガフィルムをすり替えた事実を知られればそれまでです」僕は正直に答えた。「確かにそうだ。直ぐにもこれは“親父”に知らせなくては、証拠隠滅の恐れがある!中島先生!」「うむ、ワシから連絡しよう!Y、西岡、佐久先生と校長室へ急げ!」受話器を手に中島先生は僕等を急がせた。「Y、西岡、証拠を持って付いて来い!“親父”に直談判だ!」佐久先生は僕等を護衛しながら校長室へ急いだ。「校長の前でも同じように報告しろ!証拠を手にした経緯はどうでもいい!塩川の悪行を裏付ける事をしかと伝えるんだ!」佐久先生と僕と西岡は、相次いで校長室へ雪崩れ込んだ。「信夫!尻尾を掴んだらしいな?」「はい!私ではなくY達が突き止めました!話を聞いて下さい!」佐久先生は直立不動で校長と相対した。「Y君、西岡さん、聞かせてもらえるかね?」「勿論です!」僕等も直立不動の姿勢を取る。「まあ、座りなさい。話はそれからだ」校長はお茶を用意する様に佐久先生に命ずると、僕と西岡をソファーに座らせた。「何があったのだ?きっかけはどこだね?」校長はゆっくりと聞き取りを始めた。

校長の聞き取りは、子細な事にまで及んだ。きっかけとなった手紙や塩川が撮影したと思われるネガフィルムの見聞、授業中の塩川の罵声も聞き取った。西岡からは、“被害者”となった女生徒からの証言について、その場の様子まで聞き取った。「ふむ、随分と子細に調べ上げたものだ。信夫、2人の証言は充分に信用できるな!証拠も揃っている。直ぐに“ガサ入れ”の手筈を取れ!急がぬと証拠を消されてしまう!裏の裏まで徹底的に洗って来い!」「はっ!」直立不動の姿勢を取ると佐久先生は勇んで校長室を出て行った。代わりに中島先生が入って来る。「校長、これで塩川の犯罪は白日の下に晒されますが、次の一手を打たなくては県教委を説得できません!」「分かっておる。塩川の父親は県教委の大物。これきし事は揉み消してしまうだろう。それでは、“被害者”となった女生徒達を救済した事にはならん!」珍しく校長が語気を強めて言った。「原田君を呼んでくれ!」校長は原田を呼ぶように中島先生に命じた。「はい、生徒会長に何を?」「反乱だ!」「はぁー?」中島先生は素っ頓狂な声を上げる。「Y君と西岡さんには分かるだろうて」校長は含み笑いをしつつ答えた。僕と西岡には“ある図式”が浮かんでいた。僕等は互いに眼を見てクスリと笑った。「生徒総会で“塩川の処分が軽すぎる”と決起するんですね!」「そうだ。“生徒が反乱を起こしている”と知れば、県教委としても揉み消しは図れまい。何らかの処分を下さざるを得ない状況を作り出すんだ。派手に乱を“演出”して欲しい」「校長先生、お呼びですか?」原田が出頭してきた。「生徒会長、Y君、西岡さん、くれぐれも頼んだよ。派手に“反乱”を演出してくれ!」「Y、どういう事だ?“反乱”とは何をするんだ?」原田は意味が分からずに狼狽えた。「説明してやるよ。塩川に鉄槌を下すには、全校生徒が“反乱”を起こさなきゃならないんだ!」僕と西岡がダイジェストで事の次第を説明すると「うーん、そう言う事か。ならば、出来る限り“派手”にやらなきゃならないな!」原田は算段を立て始めた。「僕等は、塩川をあぶり出した。後は会長にお任せだ!」「いいだろう。筋書さえ描いてしまえば、連鎖反応式に事は拡大していく。署名活動もやるか?」「それがいい!全員の意思表示を届ければ否応なしになる!」校長も乗った。「そうすると、時系列で事を進行させないとマズイな。事が表に出るのはいつです?」原田を交えて僕等と中島先生と校長の謀議は静かに進行して行った。

その頃、佐久先生を先頭にした“捕獲部隊”は、授業中の塩川の教室へ突撃して確保。有無を言わさずに職員室へ連行していた。「何なんだ?何の権利があってこんな事をする?!」塩川は狼狽え気味に言うが「ネタは挙がってるんだよ!この破廉恥野郎が!」とドスの利いた声で佐久先生に睨まれると大人しくなった。相手は生徒達から“人間装甲車”と呼ばれている巨漢である。抵抗は無駄に過ぎなかった。「あったぞ!これこそが動かぬ証拠だ!」塩川のデスクの奥深くに“コレクション”のアルバムは眠っていた。佐久先生は「この破廉恥な写真は何だ?」と雷鳴の様な声で塩川に詰め寄った。塩川が言い訳を告げる筈も無く、佐久先生は頸動脈を絞めた。柔道家でもある先生の手にかかった塩川はグッタリと意識を失った。周囲に居た他の先生方が驚く中、「心配ない。“落ちた”だけだ!」と言い捨てると、証拠のアルバムを抱え塩川を担ぐと使われていない“校用技師室”へ塩川を放り込んだ。後ろ手に粘着テープを巻き、口元はガムテープで覆った。出入口に外から南京錠をかけると塩川の身柄確保と証拠品の押収はとりあえず完了した。校長室へ取って返した佐久先生は「塩川の身柄を確保!職員室のデスクから証拠品を押収しました!」と直立不動で報告した。「やはり出たか。アルバムは?」校長が誰何すると、先生は黒い表紙のアルバムを差し出した。「間違いない様だな。信夫!官舎も洗って来い!過去の黒歴史が出れば更に打撃を与えられる!天井裏から配管まで徹底的に洗い出せ!」と命じた。「はっ!直ちに急行します!」佐久先生は忙しかった。「これで、謹慎処分を申し渡せる。まずは、1週間だな。県教委に報告を挙げて処分が下るまで2~3日だろう」校長が推察すると「約10日後ですね。処分内容が通知されて来るのは。それが“漏洩”してしまう!それを受けて生徒総会を開く。“処分が軽すぎる”として授業のボイコットを開始する。そして、署名活動もスタートさせる!」原田が筋書を語り出す。「“漏洩”するのは4期生達のところ。それを聞いた3期生も気勢を上げる。下からの突き上げを喰らって、生徒会として“やむを得ず”総会を開く。僕達はあくまでも聞き役から入って、怒りを共有して“生徒会長権限”を発動してボイコットと署名活動を展開する。今回はあくまでも“下からの突き上げを喰らった”と言う図式にしろよ!僕等は塩川に教鞭を取ってもらって無いんだから、そうしないと整合性が取れない。総会を開くにしても、4期生と3期生からの要望に応えて“生徒会長権限”で開け!僕等はあくまでも“静”で居なくちゃならない。“動”であるのは下級生達だ!」僕は原田に釘を打った。「なるほど、確かにそうしないとやたら滅多には動けないな。本当にボイコットをするのか?」「1回か2回はやらなきゃならないだろうな。全部をボイコットしてたら、収束させるのに苦労する。要は、校長先生が“生徒達が荒れています”って報告出来ればいいんだ。貼り紙とか怪文書の類は用意しとかないとマズイかも知れないが・・・」「おいおい、そこまでやるのか?」原田が狼狽える。「“反乱”を起こすんだ!小道具は必要になるさ。証拠写真に使えるようにな!」僕は徹底した“準備”を主張した。「そうだとしたら、今から準備しないと間に合わないぞ!」「だから、君に来てもらったんだよ。生徒会としても下準備に入ってもらいたい。段取りが分かる人員を決めて来るべき“漏洩”に備えてくれ」校長の口元がわずかに緩んだ。「分かりました。Y、西岡、君達は主要メンバーとして加わってもらう!筋書は長官とYで描いてくれ!西岡は僕の下部組織と連携して総会を“盛り上げる”算段を始めてくれ!僕は4期生・3期生のクラス委員長達と決起に向けた作戦を練る!いずれにしても、大車輪でかからないと間に合わない!」クソ真面目な原田の口元もわずかに緩んでいる。「世紀のビッグショーだ。上手くかじ取りをしてくれよ!」「任せろ!徹底的にやってやる!」原田は腹を括った。こうなるとコイツは無類の強さを見せる。校長も微かに笑っていた。こうして謀議は終わった。

授業は2時限目に入っていた。朝から校長室での長時間の謀議があったので、僕と西岡はすっかり出遅れてしまった。「今から戻ってもチンプンカンプンだがどうする?」僕は階段を昇りながら西岡に聞いた。「そうですね。始まったばかりだしサボリますか?」彼女は笑って返して来た。空き部室へ入り込むと、マットレスに腰を下ろす。「とんでもない事を計画した訳ですが、本当にやるんですか?」「ここまで来たら後戻りは出来ないよ。やるしか無い!塩川を追放するまでは、戦争は終わらない!」僕が言うと「あたし達も後戻りは出来ない関係ですもの。少し休んでいきましょうか?」と言うと西岡はキスをして来た。「悪い趣味だな。この前も・・・」と言いかけると胸元へ手が引き込まれる。小ぶりだが形のいい胸に触れさせると「抱いて下さい」と彼女が言い出す。後は彼女のなすがままだった。細い体を激しく動かして彼女は満足そうに行為を終えた。半裸の状態で抱き合っていると「もう一度頑張れる?」と聞かれる。「欲張りさんだな」と返すと彼女は不敵な笑みを浮かべて2回戦を挑んできた。激しく抱き合って行為を終えると「あたし、あなたの愛人になりたいのよ」と言う。「恋人になりたい訳ではないの。ただ、時々こうして抱いてくれればいい。あなたに抱かれたい女は大勢いるのよ」と耳元で囁く。「抜け駆けじゃないか?」と返すと「そうよ、誰もこんな事しないでしょう?」と小悪魔の様に微笑む。「乳臭い、上田や遠藤には、まだ早いし渡すつもりもないわ。参謀長の愛人の座は、あたしだけのものよ」と言って僕の胸に顔を埋める。スラリとした美しい体形、細く長い手足。才女の仮面の下には、甘えん坊が隠れていた。時計を見ると2時限目も終わりに近かった。そそくさと互いに服を纏うと、空き部室から忍び出る。「内緒よ」彼女が言う。「ああ、内緒だ」僕等は何食わぬ顔で教室へ戻った。校長が持たせてくれた遅延証明で咎められる事は無かった。

「おおよそ10日後に“反乱”を起こす訳か。時間的にはやや厳しいな!」長官が言う。「下級生からの“嘆願書”や“上奏文”の作成も絡んでますから、ギリギリになるのは止むを得ませんね」西岡も言う。「筋書は僕と長官が描くとして、“嘆願書”や“上奏文”の草稿の作成とビラや貼り紙の作成はどうします?」僕が言うと「手分けをして個々に当たるしか無いだろう。どの道、主要な作戦の立案は我々が担うのだ!こっちの都合に見合う様にするしかあるまい」長官がカップの紅茶を流し込む。僕はアールグレイを飲みながら「では、査問委員会のメンバーを頭に実働部隊を編成するしかありませんね。表立っては動けませんが、塩川が逮捕された今となっては動きにも余裕を持たせられます。赤坂と有賀に“嘆願書”と“上奏文”草稿の作成、久保田と竹ちゃんにビラと貼り紙の作成、千里と小松と西岡に下級生の演説草稿の作成と指導でどうです?」「おおよそ、その線で行くしかあるまい。学校側の“取り調べ”はどうなる?」「既に、あたし達で8割方の証言は集めてあります。その確認と補足分の聴取だけですから、短期間で終わるはずです!」西岡が見通しを述べた。「僕等よりも、塩川の取り調べに時間を割きたいでしょうから、実害は最小限に留まるのではないかと。大枠は、原田も承知してますし、派手に打ち上げる算段も組み上げてあるでしょう。問題は細部の骨格を組み上げる作業ですよ!原田にも釘は打ってありますが、あくまでも“下から突き上げを喰らった”と言う図式にしないとマズイです!」「うむ、そこを踏み外してはならんな。何せ我々は、塩川の授業を受けた事が無いのだからな。“静”と“動”の役目を明確にしなくてはならん!生徒会の閣僚達はどうするのだ?」「原田が概略を説明して、“会長一任”を取り付ける算段です。総会も“会長権限”で開かせます。もっとも、その前に3期生と4期生のクラス委員長達に“強訴”させる必要はありますがね!」「よし、よし、軌道に乗ってきたじゃないか。後は、細かい段取りを組むだけか?」「ええ、細部までは詰める必要はありませんが、大枠は決めなくてはなりません。総会そのものが“成り行き次第”ですからね。目的は“塩川に重加算税を!”で決まっています。それで団結して“反乱”を起こせばいいんです。鎮圧しやすい様に形だけですがね!」僕はぬるくなったアールグレイを流し込んだ。「署名活動はどうするのよ?」道子が聞いてくる。「3期生と4期生のクラス委員長達が“強訴”したら作戦開始さ!これも下から上へと持ち上げてくるのが原則だ。一応、全員が署名する事になるだろうよ!」「先生方の“嘆願書”とかはどうなるの?」さちも聞いてくる。「今回は、その手の文書は出さないだろう。卑劣な行為を働いたんだ!庇う理由は無いと思うよ!何なら先生達も署名させればいい。“援護はしません”って意思表示をさせるにはいい機会だ!」「いずれにしても、大車輪でかからなくては間に合わないのは事実だ。今、話したことはワシから個別に伝えて置く。参謀長は、“事情聴取”に備えてくれ。形だけとは言え、誤ってはいかん!しかと塩川を地獄へ送る様に証言を頼むぞ!」「お任せ下さい。そっちは直ぐに済みますよ。長官の方こそ急がせて下さい!日が迫ってます。10日と言うのはあくまでも目安に過ぎません。前倒しもあり得ますよ!」「うむ、早速手を回そう。お茶をごちそう様」長官は勇んで生物準備室を出て行った。「西岡、上田と遠藤達に手を回せ!今回の“反乱”は彼女達が主役になるし、4期生達からも援護をもらわなくてはならない。今の内から乱に備えて“演習”に励ませろ!筋書は分かっているな?」「はい、直ぐにも言い聞かせて置きます。参謀長、どうされました?顔色が悪いですよ。保健室へ・・・」と西岡が言っている先へ僕は倒れ込んだ。カップとソーサーが砕けて床に散乱する。「Y!Y!どうしたの!返事をして!」さちの悲鳴にも似た声が遠くで聞こえたが、答える事は出来なかった。

気が付くと、保健室のベッドの上に寝かされていた。何とか左手を動かすと時計に見入る。午後2時を回っていた。「何だ?どうなってるんだ?」生物準備室で西岡に指示を出していたところまでは思い出した。だが、倒れた時の記憶が無かった。「“アイツ”が暴れだしたか?」だか、発熱や倦怠感は感じられない。ただ、猛烈に疲れてはいた。個室のドアが開くと丸山先生が顔を出した。「気が付いた?猛烈に疲れてる様だけど、何があったのかな?もしかして、塩川先生がらみ?」「そうかも知れません。朝から校長先生とやり合ってますから、緊張の糸が切れたのかも」「大活躍だったらしいじゃん!塩川先生は官舎に閉じ込められたそうよ。取り調べは明日からだって。同じ職員としては、気味が悪いを通り越して“恥さらし”としか思えないけど!」丸山先生は額の冷却ジェルを貼り換えてくれた。左手を取ると脈を測る。「うーん、やけに遅いね。Y君、お医者さんに“徐脈”って言われてない?」「毎度、聞かれますよ。人よりゆっくりだって」「ふむ、だとすると微熱以外に主な症状は無いね。何が原因かな?」丸山先生は首を傾げる。そこへ内線が鳴った。「ちょっとごめんね。はい、校長先生。ええ、微熱はありますが特に目立った事はありません。はい、分かりました。放課後まで経過観察ですね?自宅へ連絡で宜しいですか?はい、無理はさせません。タクシーを呼びます。はい、分かりました。聞こえたと思うけど、校長先生の指示で今日はこのまま時間が来るまで休んでいなさい!帰宅時にはタクシーを呼ぶから乗って行きなさい。荷物はクラスから運んでもらうわ!さて、ちょっと出かけて来るね。大人しく寝てるのよ!」と言ってドアは閉じられた。「やれやれ、また校長に吊るされるし、中島先生からも大目玉を喰らいそうだ!」そうブツブツと言っていると、そっとドアが開けられて、ジャージ姿のさちが入り込んできた。「Y-、大丈夫かー?」と言うとタオルケットを被って馬乗りになる。「さち、サボリだろう」と言うと「何を言うのよ!治療しに来てあげたのに!」と言うとジャージを脱いで行く。ブラと下着だけになると、体を密着させて来る。大きく柔らかい胸と太腿が手や顔に触れる。「邪魔だから取っちゃおう」と言うとブラを外した。僕の左手を取ると下着に持って行く。「触っていいよ」と言って中へ手を導く。「さち、したいの?」「そう、抱いてよ」ゆっくりと体が重なった。残っている力を振り絞ると僕が上になって体を激しく動かした。一通りの行為が終わると、2人して全裸で抱き合う。「まだ、元気だね」さちが嬉しそうに言う。今度は、さちが激しく体を動かした。行為を終えると、薄っすらと汗ばんだ体を預けて来る。「ずっと待ってたの。こうして2人で愛し合う事を」さちが照れながら言う。「誰にも邪魔されない部屋だな」と言うと「そう、あたし達だけの空間。本当は1日中このままで居たい」さちは胸に顔を埋めて言う。午前中に別の女性を抱いたとは、とても言えない。しばらくの間、さちは裸のまま離れなかった。幸い、保健室へ訪れる者も居なかった。

翌日、朝から中島先生と佐久先生による“取り調べ”が行われた。室内にはエアコンが入れられ、明美先生が大量のアイスティーを用意してくれていた。「昨日の今日で申し訳ないが、一応形式的な“取り調べ”になる。時系列を追って話を進めよう」佐久先生が淡々と言う。「校長が“体調不良にならん程度に留めろ!”と煩くて敵わん!お前が倒れると天地がひっくり返ったかの様に騒ぎ立てるのだ!まず、楽にしろ。調査手法については不問とする。事実だけを述べてくれ」中島先生がいつになく優しく言う。まずは、手紙が届いた経緯から始まり、水面下での調査を西岡に依頼したところまで進んだ。「原田も4期生に対してそれなりの組織力を持っているのに、何故独力での調査に踏み切った?」佐久先生から質問が飛んでくる。「あの時点では、誰が塩川と繋がっているか推測できませんでした。組織力を頼みにはしたかったのですが、情報統制上と安全上の理由から差し止めました。壁に耳あり障子に目ありの中では仕方なかったのです。後に原田にも同じ手紙が届き、向こうも“信用できる”と確信が持てるまで、概要を秘したのはそう言う理由です」「ふむ、細心の注意を払ったと言う事か。情報漏洩による証拠隠滅をさける意図か?」「はい」次は一気に授業音声の入手まで進んだ。「俺達も聞いた音声は、誰かにレコーダーを仕込んだのだな?」「はい」“耳”を使ったとはとても言えなかった。「録音をした意図は?」「塩川の顔を暴くためです。今回の件は授業中に起こっています。実際になにがあったのかを確かめるには録音をする以外に手がありませんでした」「そして、わざと塩川の神経を逆なでさせて、暴言を引き出したか?」「はい、危険な賭けではありましたが、仕掛けは成功しました。運が良かっただけです」「まあ、これ以上は突っ込まない方がいいだろう。お前たちもギリギリの線で渡り合っていたのだからな。何が一番危険だと感じた?」「先生方に知られる事ですね。誰が塩川と繋がっているか、まったくわからない事でしたから、我々としても最も警戒した点です」「そして、現像室の細工を見破りネガフィルムも手にした。そして、ワシ達に話を持って来た。何故だ?」「冷静に考えた結果、塩川から遠く校長先生に近しい方を選んだところ、お2人に行き着いた訳です。佐久先生は校長先生の秘蔵っ子ですし」「正着だったな。“親父”に眼を付けたのは誰だ?」「小佐野ですよ」「小賢しいヤツめ!だが、結果としてはお互いに利のある結果となった。お前は正しい手を指した訳か」佐久先生は熱心にメモを取っていた。「よし、もう良いだろう。後は聞いている事だし、これからやる予定の乱の事もある。お前はそっちに勢力を傾けろ。勝負はこれからが肝心だ。上手くやれよ!」佐久先生が肩を叩いた。「くれぐれも慎重にな。自分の体力を過信するなよ!校長の騒ぎは手に負えん!倒れるのは勘弁しろよ!」中島先生も肩を叩いた。「お茶を飲んでゆっくりして行け。次は西岡だったな。どれ、呼んで来るか」先生方は慌てて教室へ走った。お茶のおかわりを頂きながら、僕は次の手を思案し始めた。「さて、いよいよ“反乱”だな。出来るだけ派手にブチ上げなくては意味が無い!」策は練り上げてあるし、役者も原田を筆頭に演技派が揃っている。「実行あるのみ」そう呟くと僕は教室へ向かった。

平行して行われている塩川に対する尋問は、苛烈を極めていた。校長の怒りは天を突く程に凄まじいものだった。教頭と各教科主任が尋問官となり、じわじわと真綿で首を絞める様に塩川は追い詰められて行った。黙秘をしていた塩川だったが、ネガフィルムとアルバムの写真について執拗に追及されると、ヤツは落ちた。そして人が変わったかの様に自供を始めたのだ。そこには、ある打算があったからだ。“親父は県教委の大物。これしきの事は揉み消してくれる”と言う身勝手なモノだった。「仮面が剥がれたな。親父さんに揉み消してもらうつもりだろう。だが、そうはさせん!」校長は断固して言った。「生徒会に通告を出しなさい。彼らに動いてもらう時が来た!」校長は悠然と教頭に命じたと言う。

「来たぞ!学校側から通告があった!原田に“決起しろ”との命令だ!」伊東が転がるようにして知らせに駈け込んで来た。「うむ、いよいよか!まずは、生徒会役員会からだな!伊東、その席で対応を“会長一任”へ持って行け!そして“署名活動”を開始させるんだ!」「了解!千秋、行くぞ!」「ええ、急ぎましょう!」2人は急いで生徒会室へ向かった。「西岡、4期生達に“署名活動”を始める様に指示を送れ!1人残らず署名させるんだ!」「はい!直ぐにもかからせます!」西岡も教室を飛び出して東校舎へ向かった。「明日には塩川の暫定処分が発表されるはず。久保田、竹内、ビラを撒く用意を。そして、あらゆる場所に貼り紙を貼りだせ!」「用意は完了してる。明日の朝からベタベタと貼りまくってやる!」「場所を選ぶな!あらゆる場所で目立つ様にするんだ!」長官が続々と指示を与えていく。僕は、“生徒総会”の台本の最終チェックをしていた。「参謀長、どうだ?」「良いですねー。この台本通りに進行すれば、塩川は逃げられませんよ!“親の光は七光り”と言いますが、今回ばかりは光も失せるでしょう!」「共倒れを狙ってみた。塩川一族もこれまでだな!」長官が不敵な笑みを浮かべる。「さあ、開演だ!派手に打ち上げよう!」長官が言うと査問委員会のメンバー達が頷いた。壊滅作戦の狼煙は挙げられた。