OCTAVEBURG 外伝

ピアニスト羽石道代の書きたいことあれこれ。演奏会の予定は本編http://octaveburg.seesaa.net へ

いっぷく亭つれづれ 其の2

2017-02-24 | 日記
写真はいっぷく亭の父と母。その昔るるぶに「気さくな店主...」と紹介されたことがある。(ちなみに写真を撮ってくれたのは私のお友達です。いい写真をありがとうございます。)それも相当昔だ...。いっぷく亭は2017年3月末までの営業、という方向で進んでおります。

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重ね重ね申し上げるがいっぷく亭は中華屋さんではなく、正しくは
ら〜めん・餃子処 いっぷく亭
であるので、メニューはラーメンと餃子である。この味について私が覚えている全く勝手な意見を書いていこうと思う。

ラーメン
何と言ってもうちはスープがキレイ。お客様にも見た目から楽しんでいただいてきました。鶏ガラとトンコツ、煮干しなどとお野菜でとる透明でキラキラしている丁寧に作られたスープです。厨房では「お骨の処理」と呼ばれる作業でキレイにして丁寧に雑味を取り除きます。日々研究なので実は色々変えてました。マグロ節を使っていた時期もあったような...それはそれでいい香りでした。
麺にも実は色々な歴史がありますが、麺屋さんに協力していただいてオリジナル麺・スープに一番あう麺を追求し続けてきました。

・中華ラーメン
醤油ラーメン。うちの味を決めている醤油だれの魅力を存分に味わえる。この醤油だれがなんともいい香りで一口飲めば旨味のかたまりのように飛び込んでくる。ついつい他のメニューを頼みがちだが改めて食べるとサイコーに美味しい。最近は結構な細麺で提供、その細さに味がよーく絡んで最後まで旨味たっぷりです。トッピングはチャーシュー、ねぎ、のり、メンマ。「マル得」はいわゆるトッピング全部のせ(上記に加え角煮と煮卵)があります

・塩ラーメン
某人気サクソフォーン奏者がスープを「バイカル湖」とコメントをしてくださって有名。笑 気に入っているので繰り返し書かせていただきます。塩だれに干しエビの旨味がプラスされ、スープの甘みといい香りを最大限引き出している名品。塩は一見さっぱり、でも旨味レベルとしてははこっくり、です。トッピングは中華と同様。「マル得」あり。

・みそラーメン
みそ。結構見落とされているのですがこれも美味しいんです。寒い時にぴったりです。上品なみそだれで、ちょっと香るニンニクが味をキリッとさせています。味噌ラーメンにはうるさいという北海道出身の方にも気に入っていただきました。
昔、風邪をひいた時に病院で点滴を打たれ、帰宅してさらに元気つけようと思って餃子とみそラーメンを食べました。こんなに食べられるなら点滴いらないでしょ...と自分で突っ込んだ記憶が蘇った。昔はここにもやしものっててそれも美味しかったな。にんにく、辛味の薬味はお好みで。

・ごまからラーメン
これぞいっぷく亭の看板娘。うちを「ごまから屋」と呼んでいるお客様もいらっしゃいます(いっぷく亭です...!)。これは、ピリ辛の濃厚な特製ゴマだれを醤油ベースのスープで仕上げたものでスーパー美味しいラーメンなのです。太麺で食べるのもいいですが、標準は中麺でご希望で太麺も選べます(という時期もありました、だったらごめんなさい)。これは一度食べたら皆さんトリコ。麺にごまが絡んできて充実した味わいでお腹いっぱいになります。ごまからデラックス、という全部のせに、さらに白飯を注文して、最後にスープをかけて食べる、という若者にしかできない食べ方もあります。標準のトッピングはチャーシューではなく肉みそ。これ、美味しい。
ごまからで心を掴まれた方が何かのきっかけで塩を食べると今度は塩ばっかりになってしまうという現象も多々あったようです。(経験あり)

冷たい麺
・ゴマだれ冷やしつけ麺
夏季限定。冷たい麺を冷たいゴマだれでいただくのですが、食欲のないときでもぺろっといけるものです。辛くないタレにさらにむきごまをプラスするのが正解です。トッピングは別盛りの肉味噌とネギ。

・ごまから冷やしつけ麺
途中から登場。こちらのゴマだれはピリ辛。やみつきですよ。

つけ麺ブームがやってきた時に一時期つけ麺もやりました。冷たい麺と温かい汁。醤油ベースで結構ガツンとしていた記憶が。そのガツンは魚粉(というと美味しくなさそうですけど、旨味です)をプラスしてつけダレが薄まらないように工夫をしていたような... 冷やし中華のような醤油ダレの麺もあったような...。いつのまにかやめてた。笑

餃子
・焼き餃子
冷凍・焼きのお持ち帰り、冷凍は発送もさせていただいています。とはいえ、やっぱりお店で食べるのが一番。お店で焼くと皮の底はカリッと、上の部分はモチっと、中の具はジュワッと。宇都宮餃子らしくキャベツ多めの軽い味わいなのでパクパク食べられます。

・水餃子
実はいっぷく亭の餃子は水餃子向きなのです...。ちょうどいい皮が水餃子のモチっと感をうまく出してくれます。

・スープ餃子
水餃子のバリエーションでラーメンのスープとともに餃子を楽しみます。醤油、塩。

餃子とともに使っていただくラー油。これもいっぷく亭は自家製です。ごま油と唐辛子をゆっくり熱していくのですが、作っている時は香ばしくていい香りが漂います。さらにご好評いただいているのがお持ち帰りにつくブレンドされた餃子のタレ。これは実はお持ち帰り専用ダレでお店では味わえませんが、なんだかすっごくいい配合なんですよね...。最近の私の流行りはこのタレを辛味大根にかけて焼き餃子を食べる。アレンジもきく良いタレなのです。

その他
・角煮
トッピングの花形。角煮、ってやっぱり目にしたら頼みたくなっちゃいますよね。いっぷく亭の角煮は脂抜きをきちんとした美味しい脂を楽しめる一品です。これはラーメンに入ってよし。ご飯にのせてよし。おつまみで単体で食べてもよし。というパーフェクトな存在です。OCTAVE主催の演奏会の時には角煮丼ぶりをお弁当として共演者のみなさまにも食べていただいていました。これ小さくして混ぜご飯でおにぎり、というのも海苔といいバランスで美味しいんですよね...。

・煮卵
絶妙な半熟具合と味のしみ方で皆さんのハートを鷲掴んできました。母が担当していますが時間通りやってるだけよ、と。とはいえ手間と小技で美味しくできているようです。

・チャーシュー
醤油だれで煮込む肩ロース。角煮の陰に隠れがちですが食べると驚きのおいしさです。もちろん両横綱なので文句なし。厚切りチャーシューも流行った時代もありますが、私はチャーシューは薄いほど美味しく感じるのですが。
そうそう、チャーシュー麺というメニューもあります。これはご褒美的な響きがするのはなぜでしょう...。角煮丼ぶりにも負けずチャーシュー丼ぶりは禁断のおいしさです。

・メンマ
実は私、昔これも嫌だったんです。しかしこれもお店で優しく煮ておりますので上品な味わいでエグくないのです。一味をふるとお酒の良いつまみになります。

・ごはん
これねえ。いっぷく亭で出される白いご飯はお客様がびっくりするくらい美味しい。栃木の美味しいお米とガスで炊くおいしさ、だけでもないくらいです。一粒一粒立ってるんですよね...。らーめん屋のごはんの域を超えています。
ちなみに生ビールも皆さんびっくりしてた。なにこれ美味しい的な。今は瓶ビールのみです。

・もやし
昔ラーメンに乗ってた記憶が...これまたキレイな状態でパリッとしてました。もやしのファン、という方もいらっしゃいました。

美味しさは伝わったでしょうか。この味も3月末までです!
何か忘れてはいないかしら...思い出したら追記します。

いっぷく亭つれづれ 其の1

2017-02-15 | 日記
いっぷく亭が2017年3月末で閉店する方向で動いています。最後に思い出して少し書いておこうかなと思います。
それまでは月・火定休 昼のみ(14:30頃まで)営業となります。

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この19年と半年くらい
「どちらのご出身ですか?」
「宇都宮です」
「あっ、じゃあ餃子ですねー」
「実家餃子屋なんですよー」
「えー!中華屋さんですか?
「いえいえ、ラーメン屋で餃子もやってるんですよ...」
にどれくらい助けられてきたか。
結局話はこれで盛り上がって別れる頃にはピアノを弾いていることは忘れられていたりした。初対面の方にイマイチ気の利かない対応をしてしまう自分としては、このような話題に救われてきたものだった。そういう意味でも両親にはお世話になってきたわけだ。

昔から羽石家は商売の家で、同じ場所で洋品店を営んでいた。父で3代目。「やっぱり子供の頃はおやつはラーメンですか?」と言われたりするが、そういうわけではないのだ。マダム向けのお洋服を仕入れて販売していた。母は裁縫が得意だからお直しなんかもしていたが、そのおかげで私は一切お裁縫ができないというオマケつき。

私が高校終わりか大学に入った頃、それまでとあるラーメン屋さんで修行させてもらっていた父が独立して店を始める話になった。最初は洋品店は残して別の場所でラーメン店を、という話もあったが結局家を立て直して始める方向でまとまった。何度も家族会議があって親戚一同に挨拶もかねたラーメン試食会を開いたりした。

ここで言うのもなんだが
当時私はラーメンが嫌いだった。

といっても、外で食べたことなんてない。母には悪いが「家庭のラーメン」がとても嫌いで、栄養バランスを考えて作られた茹でられた野菜の山と、スーパーの生ラーメンのラードのにおいが苦手すぎて小学校高学年頃にはもう「ラーメン食べません宣言」をして母に勝手にしろとキレられラーメンの日は一人でうどんを茹でて食べていた。
だからラーメン屋になる話になってもあまり興味がなかったのだが、試食会の前に父が

「お前が今まで食べていたのはラーメンではない。これが本当のラーメンだから」

と言われて(ますます母には悪いが)食べてみたら、美味しいと思った。
今と変わらず澄んだキレイなキラキラしたスープで、1口目はちょっと薄いかな?でも2口目はあっウマイな、食べる終わる頃には満足、という「いっぷく亭 黄金バランススープ」(今考えました)。今でもそんなに他のラーメンは食べないが、うちのラーメンは食べたいなあと思って、食べると美味しいなあと思う。本当の成長期にこれで育ったわけではないが、やっぱりこれが私の「家の味」なのかもしれない。

そして1999年8月、いっぷく亭はオープンした。友達は海外に夏期講習に行くなんて聞こえてもきたが、私は兄弟と入れ替わり立ち替わりピアノも弾かずに店を手伝った。もちろんバイト代はないが私の貴重な「音楽ではないバイト」経験。その後もエプロンをつけて店に立ったりしたが愛想がないのは相変わらずだったので看板娘にはならず。笑それにしてもオープンからたくさんのお客さんが来てくれて、嬉しかった。
生き生き忙しく働いている父は楽しそうだった。元から働き者の母ではあるが、ラーメン屋のおばちゃんになって頑張る母もえらいなと思っていた。
改めて数えてみればちょうど今の人生の半分は「ラーメン屋の娘」で生きているらしい。どおりで馴染んできたわけだ。
其の2では愛すべき味のことを書きたいと思います。つづく。