OCTAVEBURG 外伝

ピアニスト羽石道代の書きたいことあれこれ。演奏会の予定は本編http://octaveburg.seesaa.net へ

夏が終われば冬を見据えて

2017-09-02 | 日記

今年の関東地方の夏は猛暑だったのか、冷夏だったのか。ちょっと振り回された感じもあって、早く季節よ落ち着いて...と願いながら過ごしていました。それでもなんだか今日はすっと空気が涼しく感じられ、季節の変化と同時に自分の中でも夏が終わった気持ちが生まれたので、久しぶりにこちらで書いてみます。

私が大変お世話になっているサクソフォーン界でも一つの区切りがありました。3年に1度の日本管打楽器コンクールが開催され多くのサクソフォニストたちがしのぎを削り、各ステージで多くの名演が生まれました。私も数人の伴奏を担当し夏のはじめから準備を重ねた結果、演奏を共にさせてもらったうち3名・本堂誠くんが1位、住谷美帆さんが2位、齊藤健太くんが3位を受賞という結果になりました。さらには4つの部門の1位の人たちがオーケストラと協演して特別大賞、内閣総理大臣賞を決める演奏会でも、本堂くんが大賞、聴衆賞も合わせて受賞されました。
私は勤務していることもあり藝大生と弾くことも多く学生時代の早い時期から一緒に弾くことがあるので「優秀な学生さん」から「魅力的な演奏家」になっていく姿を見てきました。今回も、この3人の中でも一番付き合いの長い本堂くんが、確実に変身を遂げていたことはなんとも頼もしいことでしたし、コンクールという特殊な場にもかかわらず、評価ができないくらいの「記憶に残る演奏」をされていたことが評価につながったことと思います。歴代の入賞者の皆さんに続いて、今後も活躍の場を広げていかれることでしょう。

このようなコンクールという比較的フレッシュな刺激の日々の合間に、もはやサクソフォーン界の巨匠のジャン=イヴ・フルモーさんと今年も共演の機会をいただきました。彼の愛するドビュッシーのラプソディと、私の心の友ヒンデミットのソナタ。幸せすぎる。溢れる音に包み込まれながら弾くという幸せな時間を過ごしながら、きっと何10年経った時にも思い出せる素晴らしい瞬間に自分がいるのだと感動していました。私も同じように与えらる立場になれたらいいなといつも思っています。

これも栄養剤の1つではありましたが、自分が弾くだけではやっぱり心が乾いてくるので、時には栄養剤をガツンと入れないといけません。

夏の初めには、皆大好き、そして私も本当に大好き!な小曽根真と、これで引退されるというゲイリー・バートンのコンサート。小曽根さんは私の人生を変えてくれた(正確にいうと勝手に私が変わった)ピアニストの1人です。私の欲しいものは全部そこにありました。
信頼。尊敬。友情。情熱。真剣。愛。キャリア。技術。優しさ。楽しさ。
演奏会の最初は色々な思いがこみ上げて(ただのファンなので 笑)感動し過ぎて胸が痛くて、涙が溢れそうで恥ずかしかった。音楽で何かができるかもしれないという気持ちになりました。 

そして夏の最後に栃尾克樹さんのバリトンサクソフォーン と高橋悠治さんのピアノで、私のバイブル「冬の旅」を聞いてきました。楽器だけですから言葉はもちろんないのですが、音楽の解釈とアイディアと実現が私の想像を超えていました。すごすぎる。終わった頃には会場の全員が心のさすらいの旅を共にしたような、静かな一体感が生まれていました。ああ私にできるかな..と不安がよぎりました。

そうなんです。

羽石道代プラスシリーズ第10回は「冬の旅」をバリトン池田直樹先生をお迎えして2018年3月9日(金)JTアートホール・アフィニスにて行います。

この夏、色々な人の人生の大事な局面で私の心も何度も同期しました。その心の動きに心が少し疲れた感もなくはないですが、整理して人生見つめ直すいい経験でした。人生の旅「冬の旅」とも向き合っていける喜びと恐れがリアルになってきました。

と言って。写真は初夏に仕入れた大ヒットの福井の銘酒 梵 の「道」!名前にあやかりたい。