2016年1月から孵化補助法が新しくなりますので、お知らせさせていただきます。
孵化補助法(アシステッドハッチング)とは、移植する受精卵の殻に切りこみを入れ、孵化しやすいような出口をあらかじめ作っておく技術です。
当院で従来行ってきた孵化補助法は、針で透明帯(卵子の殻)に切りこみを入れるPZD法でした。
PZD法は技術的に難しく、新人の胚培養士が習得するには時間がかかり、どの胚培養士でもできる方法ではありません。また、受精卵に針を刺すことから(正確には透明帯ですが)、受精卵に傷をつけてしまわないかと心配される患者様の声もありました。
そこで、より安全面を考え『レーザー法』による孵化補助を導入いたしました。
最近では多くのクリニックさんで導入されていますので、ご存じの方も多いかもしれません。レーザーアシステッドハッチング(Laser Asisted hatching;LHA)と呼ばれています。
このレーザー法は倒立顕微鏡下に受精卵を置き、パソコン操作で透明帯にレーザーを照射します。一発だけの照射ではなく、直線やカーブで連続照射ができるため、透明帯を薄くしたり、切りこみを入れたりすることができます。PZD法に比べると非常に簡単に作業することができます。
受精卵にレーザー照射して大丈夫?と心配される方もいらっしゃると思います。レーザー照射をすると若干熱が発生しますが、その影響は小さいと思われます。なぜかというと、受精卵には隙間が空いている部分があり、細胞に影響を与えないように、その隙間がある部分にレーザーを照射するからです。
レーザーを導入するにあたって、少し実験をしてみました
研究目的での廃棄依頼があった凍結受精卵(初期胚)を融解し、PZD法とレーザー法で孵化補助を行い、熱の影響や孵化の仕方を観察しました。
その結果・・・
レーザー照射後、変性(茶色くなる)した受精卵はみられなかった
発育停止する受精卵もあったが、受精卵の質によるものと思われる
胚盤胞まで育った受精卵はPZD法・レーザー法どちらも孵化をした
完全に透明帯から脱出できた受精卵はレーザー法のみであった
実施個数が少ないので確実なことは言えませんが、レーザー法で孵化補助を行った方が孵化がしやすいようです。また、透明帯をレーザーで薄くするよりは、切りこみを入れた方が完全に脱出しやすくなるという学会報告もあり、当院では、切りこみを入れる方を採用します。
孵化補助については、移植の前に胚培養士からご提案させていただきます。移植する受精卵の透明帯の厚さや硬さによって、孵化補助が必要かどうかを判断いたします。ご質問があれば、いつでも胚培養士にお声かけください
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