今回は、『顕微授精』についてお話させて頂きます
顕微授精は、卵細胞質内精子注入法(Intracytoplasmic sperm injection)といい、英語を略してICSI(イクシー)とも呼ばれています。他にも、精子の選別方法が異なるIMSI(イムジー)やPICSI(ピクシー)などがあります。IMSIやPICSIについては今後記事にしていきますね。今回は一番シンプルなICSIを取り上げさせて頂きます
その方法は『卵子1個につき、精子1個を針をさして注入』します。体外受精に比べると、より人工的な方法になりますが、精子の数が少なくても授精させることができます。
顕微授精を行う前に準備することがあります。卵子の周りの細胞(顆粒膜細胞)を取り除いて(卵子裸化処理)、卵子が成熟しているかを確認します。顕微授精は成熟している卵子にしか実施することができないのです。
さて、以下からがICSIの具体的な方法です。
●ステップ1『精子の選別』
上の写真では200~400倍の倍率で精子を選んでいるところです。中央の白いのが精子です。選別の基準は『動きが速くて形がキレイな精子』です。右側にある針で精子を捕まえて、培養皿の底に擦りつけることで精子の動きを止めて、同時に精子を活性化しています(精子不動化)。そして下の写真のようにしっぽから精子を吸引します。
●ステップ2『卵子内へ精子を注入』
次に卵子の中に針を刺して精子を注入するステップです。
下の写真のように左の針で卵子を押さえて、右の針(精子が入っている)で卵子に針を刺します。実は針を刺す位置が決まっています。成熟している卵子には極体と呼ばれる、『でべそ』のようなものがみられます。それが12時または6時の位置にあるときに、3時の方向から針を刺して精子を注入すると決まっているのです。写真では極体が1時方向にずれていますが、それについては今後アップする予定の『紡錘体観察』についての記事で書かせて頂きますね。
上の写真のように、卵子の中になるべく培養液を入れないようにするために、針先のギリギリのところまで、精子を移動させます。そして下の写真のように針を刺します。そのとき卵子の膜を少し吸うことで、完全に膜をやぶり、確実に卵子の中に精子を注入します。
そして下の写真のように、ゆっくりと針を抜いて、顕微授精終了です。卵子の膜が少し凹んでいますが、時間がたったら元に戻るのでご安心ください。卵子を新しい培養液に移して、翌日受精しているかを確認します。
以上が『顕微授精(ICSI)』に関するお話でした
ご意見・ご質問等がございましたら、胚培養士までお声かけください
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