野叟解嘲(やそうかいとう)ー町医者の言い訳ー

老医師が、自ら患者となった体験から様々な症状を記録。その他、日頃、感じていることや考えていることを語ります。

鎮痛、除痛の重要性

2023年07月09日 | 日記

ある姿勢をとることで症状が軽くなる話で、初めに気づいたのが智歯を抜く手術後の麻酔の覚め際だったことを書きましたが、その後も別の手術を受ける機会があり、その都度、麻酔が覚めきらない時に、すべり症による足のしのしびれが軽くなることを経験しました。

これは何故だろうと考えたとき、術後経過のところで紹介した膝の痛み(ハムストリングスなどの異常な緊張)を思い出しました。痛みは、筋肉の緊張が解放されることで消えましたが、その根本原因は腰椎病変に対する無意識の防御姿勢にあることも説明しました。

麻酔の覚め際の、いささか不自然な姿勢でしびれが軽減するのは、前回紹介した、姿勢そのものによる効果に加えて、麻酔により、腰の異常な防御姿勢、筋緊張が軽減され、姿勢による脊柱管の拡張を手助けしたと考えます。

その後も、ごく偶に睡眠導入剤を使う機会があり、このときも起床時の症状軽減が得られました。主にゾルピデムを少量使ったのですが、おそらく自然な睡眠より筋緊張の軽減があったと想像します。メーカーの説明では、Ω1,2受容体に対する選択特性から、ゾルピデムは筋緊張低下作用は弱いので、高齢者の転倒を 引き起こしにくいとされていますが、小生には十分筋緊張低下をもたらしたようです。

さて、麻酔学を学んだ方ならばお分かりでしょうが、麻酔の目的の第一は、もちろん痛みを取り除くことですが、単に痛みをのぞくだけではなく、痛みから生じる望ましくない反射(反射的な体の反応)を防ぐということも重要な目的です。麻酔まで大袈裟にしなくても、痛みを取り除く、或いは軽減するということは、体に不利な反射を抑制し、全体としての症状の軽減が得られる方法だと考えます。

人は薬について、可能ならば使用したくないと考えます。当然であり、妥当な考え方だと思いますが、場合によっては、鎮痛剤は本来の効能よりも広い影響を及ぼすことがあり、それは副作用という意味ではなく、癒すための手段として重要なものではないでしょうか。



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