証券税制、変更前に再チェック
2015/11/8 6:30
来年1月から証券税制が大幅に変更になる。
公社債やNISAなど個人投資家に身近なものも多い。
手続きが始まっている制度もあるので、
節税の観点からも見落としがないよう改めて点検したい。
■外債や外貨建てMMF、含み益あれば年内売却
「外国債券や外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)をお持ちではありませんか?
年明け後は税制ががらっと変わりますよ」。
ファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦氏は
個人投資家向けセミナーで壇上に立つたび、
欠かさず注意を促している。

税制改正に関する証券会社各社のパンフレットや冊子
画像の拡大
2016年から大きく姿を変える証券税制。
中でも多くの投資家に関係しそうなのが、
外債や外貨建てMMFを含む
「公社債・公社債投資信託」の税率変更だ。
譲渡益は上場株式や株式投信と同じ扱いになり、
税率は一律で20.315%(復興特別所得税含む)になる。
現在は非課税だが、年をまたぐと
大増税というケースがあるだけに、
個人投資家は「節税のために年内に売却すべきか否か」
という決断を迫られる。
特に円安の進展で含み益が膨らんだ
外貨建ての金融商品を持っている場合は影響が大きい。
千葉県に住む50歳代女性は1ドル=90円台で
1万ドル分の米ドル建てMMFを購入し、今も保有している。
この女性は年内に売却すべきだろうか。
答えは税金面に限れば「イエス」だ。
足元のドル相場は1ドル=123円台なので、
30万円以上の含み益がある。
15年末までは為替差益を含めて
外貨建てMMFの譲渡益には税金がかからないが、
16年以降に売ると譲渡益に20.315%の税金がかかるようになる。
画像の拡大
定期的に利子が支払われる「利付債」という債券も、
現在は譲渡益が非課税だが、
16年からは譲渡益に20.315%の税金がかかる。
含み益がある場合は
やはり年内売却の方が有利だ。
1豪ドル=60円台で購入した豪ドル建て債を
売るべきか悩む顧客から相談を受けたFPの藤川太氏は
「現在は1豪ドル=90円前後で、
売却手数料を考慮しても十分メリットがあり、
年内売却を強く勧めた」という。
同じ外債でも「ゼロクーポン債」と呼ばれるものは、
かかる税金が一般の利付債とは異なるため注意したい。
ゼロクーポン債は、利子が付かない代わりに
額面より低い価格で発行され、
満期に額面で償還される債券。
購入金額と償還金額との差が投資家のもうけとなる。
現行ではゼロクーポン債を売った際に為替差益で
譲渡益が生じた場合、譲渡所得として
給与などと合算したうえで総合課税となる。
年50万円までの特別控除が付いているので、
譲渡益が50万円以下なら税金はかからない。
50万円を超えるときは、債券の保有期間や
投資家自身の給与などによって税率が変わる。
「ゼロクーポン債を年内に
売却した方がいいかどうかはケース・バイ・ケース」
(柴原一税理士)なので、
専門家に相談した方が良さそうだ。
ちなみに発行から1年たてば中途換金できる個人向け国債は、
換金金額が「元本から直近2回分の利子を差し引いた額」。
利子を引くと譲渡益は発生しないため、
今回の税制変更はあまり関係がない。
個人投資家の「節税売り」は
外国為替をも動かすかもしれない。
外貨建て資産を売って円に戻すと、
円買いの需要が発生するためだ。
証券会社が個人投資家に販売した外債の残高は9月末時点で
4兆2,300億円、外貨建てMMFの残高は
2兆1,600億円で、合わせて6兆円あまりの資産規模がある計算だ。
ブラジルレアルなど新興国通貨建ての外債は
含み損を抱えたものもあるようだが、
米ドル建てなどは含み益が出ているものが多い。
これが年末にこぞって売られれば
「一定の円買い圧力になる」(三菱東京UFJ銀行の内田稔氏)。
実際、外債の残高は今夏から減少傾向にあり、
すでに節税売りが始まっている可能性もある。
■損益通算、債券と株式で可能に
2016年からの税制変更は、公社債に投資する個人投資家にとって
悪い話ばかりではない。
株式や株式投信との損益通算が16年から認められるようになるのだ。
現行ではいくら株式で投資損失を出していても、
同じ年に得た公社債の利子などと相殺することはできず、
利子にかかる20.315%の税金を納める必要がある。
損益通算が認められると、株と債券の垣根を越えて
利益と損失を合算し、トータルで納税額を圧縮できるようになる。
例えば、株式で10万円の譲渡損が出ていて、
公社債の利子所得が10万円ある場合、
差し引きゼロとなり、税金を支払わずに済む。
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公社債の投資損失の繰り越しも可能になる。
購入額よりも安い価格で売却した譲渡損、
安い価格で償還した償還損を繰り越し、
翌年以降3年間で公社債や株式投資で利益が出た際に
損益を相殺できる。
ただ、逆に16年から損益通算の対象から外れてしまうものもある。
非上場株式だ。今は上場株式と損益を相殺できるが、
これが16年からはできなくなる。
非上場の中小企業のオーナーが代替わりのために
自社株を子供に承継する際、発生した譲渡益を
上場株の譲渡損で相殺して納税額を抑えるという手法が
これまでは一般的だった。この手法がとれなくなると、
中小企業のオーナー一族にとっては頭の痛い問題になりそうだ。
証券税制の変更は、証券会社間の「顧客囲い込み競争」を
激化させる可能性がある。
「お持ちの公社債を弊社の特定口座で管理し、
一本化しませんか」。
国内大手証券がこんな内容の
ダイレクトメールを顧客に送り始めた。
16年からは債券の利子収入や譲渡益について
確定申告が原則必要となる。
そこで役立つのが証券会社や銀行の
「源泉徴収ありの特定口座」だ。
金融機関が口座内にある証券の損益を通算したうえで、
納税手続きを代行する仕組み。
投資家は自分で確定申告しなくて済む。
現在、特定口座に対応しているのは
株式や株式投信だけだが、
16年からは公社債や外貨建てMMFも入れられるようになり、
使い勝手が向上する。
特定口座を活用するメリットは、
確定申告をしないで済むという手間の問題だけでない。
確定申告をすると、投資で得た利益は
「所得」としてカウントされてしまう。
給与などとあわせた所得の水準が高いと
「国民健康保険料が高くなったり
扶養者控除の対象から外れたりするケースがあるが、
特定口座活用でそういった事態を避けることができる」
(FPの深野氏)。
ただ、特定口座のメリットを最大限に受けるためには、
1つの金融機関の口座に一本化する必要がある。
複数の金融機関で特定口座を開いていると結局、
確定申告をしなければならないからだ。
これまでは株式はA証券、
外貨建てMMFはB銀行と取引する金融機関を使い分けていた個人投資家も
今後は口座集約に動くかもしれない──。
金融機関の間でこうした思惑が膨らみ、
顧客の囲い込みに向けて営業を強化しているというわけだ。
特定口座を開く金融機関を選ぶ際は、
商品の品ぞろえを吟味したい。
■NISA、ジュニア版口座はや争奪
「お孫さんと一緒に株主優待を楽しめる企業をご紹介します」。
2日、SMBC日興証券が東京・茅場町で開いた個人投資家セミナー。
約50人の参加者は来年から始まる子供向けの
少額投資非課税制度「ジュニアNISA」の解説に耳を傾けた。

ジュニアNISAが始まる来年に向け、投資家の関心が高まってきた(2日、東京・茅場町)
画像の拡大
会場で配った資料には、オリエンタルランド(4661)
や子供写真館のスタジオアリス(2305)など
子供にも身近な銘柄名がずらりと並ぶ。
株主優待は子供が喜ぶ東京ディズニーランドの入場券や
スタジオアリスでの撮影券などだ。
孫が生まれたばかりという参加者の男性(72)は
「非課税の利点を生かしながら
将来の教育資金づくりに役立てたい」と話す。
来年から変わる証券税制の目玉の一つがジュニアNISAの創設だ。
専用口座で購入した元本80万円までの株式や
投資信託については、売却益や配当に本来かかる
20%の課税を免除するのが特徴だ。
2023年まで毎年、80万円という新しい枠が付与される。
ただ、子供が18歳になるまでは非課税での払い出しはできない。
画像の拡大
口座が開設できるのは来年1月、
その口座で株式や投資信託が購入できるのは4月からだが、
金融機関の間では早くも顧客の争奪戦が激化している。
大和証券は10月19日からジュニアNISAの事前申し込みの受け付けを始めた。
投資家が個人情報を記入した申込書を提出すれば、
同社が来年1月に口座を開設する。
問い合わせを受けて申込書を送った先は
既に約1万5千件に上る。
30~40歳代と60~70歳代の投資家からの取り寄せが半々といい、
それぞれ子供と孫の口座開設を検討しているようだ。
SMBC日興証券も10月5日から
ジュニアNISA口座開設の事前申し込みの受け付けを開始。
子供向けの傷害保険を“おまけ”で付けるキャンペーンも展開している。
14年に導入した成人向けの一般のNISAも、
来年1月から制度が拡充される。
非課税の投資枠が年100万円から120万円に増える。
月10万円を12カ月続けて積み立てる「コツコツ投資」
に使いやすくなるほか、これまで上限内に収まらなかった100万円超、
120万円以下の株もNISA口座で購入できるようになる。
また、ジュニアNISAと合わせれば、
投資枠の上限が大きく広がる。例えば、
夫婦2人に子供2人の世帯は、
年200万円だった非課税枠が400万円まで増える計算だ。
■上場株、時価70%に下げも
金融庁は2016年度の税制改正で、
上場株式にかかる相続税の評価見直しを要求する。
これまでは原則、時価の100%が評価額となっていたが、
これを70%に引き下げるのが柱。
改正が認められれば、来年4月にも実現する公算がある。
土地や建物に比べて相続税が高くなりがちな税制を改め、
上場株式を相続しやすくする。
相続税は株式や土地、建物、預貯金などの財産によって、
評価の仕方が異なる。例えば価格変動の大きい土地の評価額は
公示地価の8割程度で、建物は建築費の50~70%ほどだ。
この評価額に税率をかけ、実際の納税額が決まる。
一方、価格変動のない預貯金は100%が評価額となる。
節税対策として、預貯金を取り崩して
マンションを購入する人が増えているのは、
こうした背景がある。
上場株式は土地や建物と同様に価格が変動するにもかかわらず、
現在は原則として被相続人が亡くなった日の終値の
100%が評価額となり、そのまま税率をかける。
相続時の2カ月前までさかのぼり、
各月の終値の平均額で評価することもできる特例もあるが、
株価の下落が続いてきたケースでは
評価額が高くなってしまうので節税にならない。
国税庁によると、13年の相続財産額は12兆5,326億円で、
うち上場株式は8777億円と全体の7%にとどまる。
評価額の見直しで税負担が軽くなれば、
上場株式の相続が増える可能性もある。
[日経ヴェリタス2015年11月8日付]
2015/11/8 6:30
来年1月から証券税制が大幅に変更になる。
公社債やNISAなど個人投資家に身近なものも多い。
手続きが始まっている制度もあるので、
節税の観点からも見落としがないよう改めて点検したい。
■外債や外貨建てMMF、含み益あれば年内売却
「外国債券や外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)をお持ちではありませんか?
年明け後は税制ががらっと変わりますよ」。
ファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦氏は
個人投資家向けセミナーで壇上に立つたび、
欠かさず注意を促している。

税制改正に関する証券会社各社のパンフレットや冊子
画像の拡大
2016年から大きく姿を変える証券税制。
中でも多くの投資家に関係しそうなのが、
外債や外貨建てMMFを含む
「公社債・公社債投資信託」の税率変更だ。
譲渡益は上場株式や株式投信と同じ扱いになり、
税率は一律で20.315%(復興特別所得税含む)になる。
現在は非課税だが、年をまたぐと
大増税というケースがあるだけに、
個人投資家は「節税のために年内に売却すべきか否か」
という決断を迫られる。
特に円安の進展で含み益が膨らんだ
外貨建ての金融商品を持っている場合は影響が大きい。

千葉県に住む50歳代女性は1ドル=90円台で
1万ドル分の米ドル建てMMFを購入し、今も保有している。
この女性は年内に売却すべきだろうか。
答えは税金面に限れば「イエス」だ。
足元のドル相場は1ドル=123円台なので、
30万円以上の含み益がある。
15年末までは為替差益を含めて
外貨建てMMFの譲渡益には税金がかからないが、
16年以降に売ると譲渡益に20.315%の税金がかかるようになる。

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定期的に利子が支払われる「利付債」という債券も、
現在は譲渡益が非課税だが、
16年からは譲渡益に20.315%の税金がかかる。
含み益がある場合は
やはり年内売却の方が有利だ。
1豪ドル=60円台で購入した豪ドル建て債を
売るべきか悩む顧客から相談を受けたFPの藤川太氏は
「現在は1豪ドル=90円前後で、
売却手数料を考慮しても十分メリットがあり、
年内売却を強く勧めた」という。
同じ外債でも「ゼロクーポン債」と呼ばれるものは、
かかる税金が一般の利付債とは異なるため注意したい。
ゼロクーポン債は、利子が付かない代わりに
額面より低い価格で発行され、
満期に額面で償還される債券。
購入金額と償還金額との差が投資家のもうけとなる。
現行ではゼロクーポン債を売った際に為替差益で
譲渡益が生じた場合、譲渡所得として
給与などと合算したうえで総合課税となる。
年50万円までの特別控除が付いているので、
譲渡益が50万円以下なら税金はかからない。
50万円を超えるときは、債券の保有期間や
投資家自身の給与などによって税率が変わる。
「ゼロクーポン債を年内に
売却した方がいいかどうかはケース・バイ・ケース」
(柴原一税理士)なので、
専門家に相談した方が良さそうだ。
ちなみに発行から1年たてば中途換金できる個人向け国債は、
換金金額が「元本から直近2回分の利子を差し引いた額」。
利子を引くと譲渡益は発生しないため、
今回の税制変更はあまり関係がない。
個人投資家の「節税売り」は
外国為替をも動かすかもしれない。
外貨建て資産を売って円に戻すと、
円買いの需要が発生するためだ。
証券会社が個人投資家に販売した外債の残高は9月末時点で
4兆2,300億円、外貨建てMMFの残高は
2兆1,600億円で、合わせて6兆円あまりの資産規模がある計算だ。
ブラジルレアルなど新興国通貨建ての外債は
含み損を抱えたものもあるようだが、
米ドル建てなどは含み益が出ているものが多い。
これが年末にこぞって売られれば
「一定の円買い圧力になる」(三菱東京UFJ銀行の内田稔氏)。
実際、外債の残高は今夏から減少傾向にあり、
すでに節税売りが始まっている可能性もある。
■損益通算、債券と株式で可能に
2016年からの税制変更は、公社債に投資する個人投資家にとって
悪い話ばかりではない。
株式や株式投信との損益通算が16年から認められるようになるのだ。
現行ではいくら株式で投資損失を出していても、
同じ年に得た公社債の利子などと相殺することはできず、
利子にかかる20.315%の税金を納める必要がある。
損益通算が認められると、株と債券の垣根を越えて
利益と損失を合算し、トータルで納税額を圧縮できるようになる。
例えば、株式で10万円の譲渡損が出ていて、
公社債の利子所得が10万円ある場合、
差し引きゼロとなり、税金を支払わずに済む。

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公社債の投資損失の繰り越しも可能になる。
購入額よりも安い価格で売却した譲渡損、
安い価格で償還した償還損を繰り越し、
翌年以降3年間で公社債や株式投資で利益が出た際に
損益を相殺できる。
ただ、逆に16年から損益通算の対象から外れてしまうものもある。
非上場株式だ。今は上場株式と損益を相殺できるが、
これが16年からはできなくなる。
非上場の中小企業のオーナーが代替わりのために
自社株を子供に承継する際、発生した譲渡益を
上場株の譲渡損で相殺して納税額を抑えるという手法が
これまでは一般的だった。この手法がとれなくなると、
中小企業のオーナー一族にとっては頭の痛い問題になりそうだ。
証券税制の変更は、証券会社間の「顧客囲い込み競争」を
激化させる可能性がある。
「お持ちの公社債を弊社の特定口座で管理し、
一本化しませんか」。
国内大手証券がこんな内容の
ダイレクトメールを顧客に送り始めた。
16年からは債券の利子収入や譲渡益について
確定申告が原則必要となる。
そこで役立つのが証券会社や銀行の
「源泉徴収ありの特定口座」だ。
金融機関が口座内にある証券の損益を通算したうえで、
納税手続きを代行する仕組み。
投資家は自分で確定申告しなくて済む。
現在、特定口座に対応しているのは
株式や株式投信だけだが、
16年からは公社債や外貨建てMMFも入れられるようになり、
使い勝手が向上する。
特定口座を活用するメリットは、
確定申告をしないで済むという手間の問題だけでない。
確定申告をすると、投資で得た利益は
「所得」としてカウントされてしまう。
給与などとあわせた所得の水準が高いと
「国民健康保険料が高くなったり
扶養者控除の対象から外れたりするケースがあるが、
特定口座活用でそういった事態を避けることができる」
(FPの深野氏)。
ただ、特定口座のメリットを最大限に受けるためには、
1つの金融機関の口座に一本化する必要がある。
複数の金融機関で特定口座を開いていると結局、
確定申告をしなければならないからだ。
これまでは株式はA証券、
外貨建てMMFはB銀行と取引する金融機関を使い分けていた個人投資家も
今後は口座集約に動くかもしれない──。
金融機関の間でこうした思惑が膨らみ、
顧客の囲い込みに向けて営業を強化しているというわけだ。
特定口座を開く金融機関を選ぶ際は、
商品の品ぞろえを吟味したい。
■NISA、ジュニア版口座はや争奪
「お孫さんと一緒に株主優待を楽しめる企業をご紹介します」。
2日、SMBC日興証券が東京・茅場町で開いた個人投資家セミナー。
約50人の参加者は来年から始まる子供向けの
少額投資非課税制度「ジュニアNISA」の解説に耳を傾けた。

ジュニアNISAが始まる来年に向け、投資家の関心が高まってきた(2日、東京・茅場町)
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会場で配った資料には、オリエンタルランド(4661)
や子供写真館のスタジオアリス(2305)など
子供にも身近な銘柄名がずらりと並ぶ。
株主優待は子供が喜ぶ東京ディズニーランドの入場券や
スタジオアリスでの撮影券などだ。
孫が生まれたばかりという参加者の男性(72)は
「非課税の利点を生かしながら
将来の教育資金づくりに役立てたい」と話す。
来年から変わる証券税制の目玉の一つがジュニアNISAの創設だ。
専用口座で購入した元本80万円までの株式や
投資信託については、売却益や配当に本来かかる
20%の課税を免除するのが特徴だ。
2023年まで毎年、80万円という新しい枠が付与される。
ただ、子供が18歳になるまでは非課税での払い出しはできない。

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口座が開設できるのは来年1月、
その口座で株式や投資信託が購入できるのは4月からだが、
金融機関の間では早くも顧客の争奪戦が激化している。
大和証券は10月19日からジュニアNISAの事前申し込みの受け付けを始めた。
投資家が個人情報を記入した申込書を提出すれば、
同社が来年1月に口座を開設する。
問い合わせを受けて申込書を送った先は
既に約1万5千件に上る。
30~40歳代と60~70歳代の投資家からの取り寄せが半々といい、
それぞれ子供と孫の口座開設を検討しているようだ。
SMBC日興証券も10月5日から
ジュニアNISA口座開設の事前申し込みの受け付けを開始。
子供向けの傷害保険を“おまけ”で付けるキャンペーンも展開している。
14年に導入した成人向けの一般のNISAも、
来年1月から制度が拡充される。
非課税の投資枠が年100万円から120万円に増える。
月10万円を12カ月続けて積み立てる「コツコツ投資」
に使いやすくなるほか、これまで上限内に収まらなかった100万円超、
120万円以下の株もNISA口座で購入できるようになる。
また、ジュニアNISAと合わせれば、
投資枠の上限が大きく広がる。例えば、
夫婦2人に子供2人の世帯は、
年200万円だった非課税枠が400万円まで増える計算だ。
■上場株、時価70%に下げも
金融庁は2016年度の税制改正で、
上場株式にかかる相続税の評価見直しを要求する。
これまでは原則、時価の100%が評価額となっていたが、
これを70%に引き下げるのが柱。
改正が認められれば、来年4月にも実現する公算がある。
土地や建物に比べて相続税が高くなりがちな税制を改め、
上場株式を相続しやすくする。
相続税は株式や土地、建物、預貯金などの財産によって、
評価の仕方が異なる。例えば価格変動の大きい土地の評価額は
公示地価の8割程度で、建物は建築費の50~70%ほどだ。
この評価額に税率をかけ、実際の納税額が決まる。
一方、価格変動のない預貯金は100%が評価額となる。
節税対策として、預貯金を取り崩して
マンションを購入する人が増えているのは、
こうした背景がある。
上場株式は土地や建物と同様に価格が変動するにもかかわらず、
現在は原則として被相続人が亡くなった日の終値の
100%が評価額となり、そのまま税率をかける。
相続時の2カ月前までさかのぼり、
各月の終値の平均額で評価することもできる特例もあるが、
株価の下落が続いてきたケースでは
評価額が高くなってしまうので節税にならない。
国税庁によると、13年の相続財産額は12兆5,326億円で、
うち上場株式は8777億円と全体の7%にとどまる。
評価額の見直しで税負担が軽くなれば、
上場株式の相続が増える可能性もある。
[日経ヴェリタス2015年11月8日付]