「店番なら僕がいます。お茶会やりましょうよ」。僕が言ってハルさんが笑った。「コンビニの店員さんでしたよね、あの節はどうも」とけっこうきれいなあの人が言った。
はじめて会ったときのあの人はジーンズで、化粧もほとんどしてなかった。優しい笑顔は生まれつきだと思うけど、今明るい色のスーツを着ているきれいな人はほかの人みたいだ。
「こんなきれいな人に覚えていてもらえたなんて、幸せです」と正直に僕が言うと、あの人は優しく笑って「お世辞でもうれしいわ」と言った。「きれいだなんて、最近夫にも言われません」
ハルさんがあの人に声をかけた。「このお菓子ならトオルも食べそうね」
あの人はハルさんが指さした抹茶のカステラを見た。「トオルさん、抹茶もカステラも大好きですもの、きっと喜びます」。あの人が僕の前から離れた。
あの人はトオルさんの奥さんなんだ。ハルさんや、きっと子供たちのことで大変でも、トオルさんがいるからステキな笑顔でいられるんだ、と僕は思った。僕は絶対トオルさんには勝てない。サトウさんにも、お父さんにもヨシユキさんにも勝てない。死んでしまった茶道の先生にも。
はじめて会ったときのあの人はジーンズで、化粧もほとんどしてなかった。優しい笑顔は生まれつきだと思うけど、今明るい色のスーツを着ているきれいな人はほかの人みたいだ。
「こんなきれいな人に覚えていてもらえたなんて、幸せです」と正直に僕が言うと、あの人は優しく笑って「お世辞でもうれしいわ」と言った。「きれいだなんて、最近夫にも言われません」
ハルさんがあの人に声をかけた。「このお菓子ならトオルも食べそうね」
あの人はハルさんが指さした抹茶のカステラを見た。「トオルさん、抹茶もカステラも大好きですもの、きっと喜びます」。あの人が僕の前から離れた。
あの人はトオルさんの奥さんなんだ。ハルさんや、きっと子供たちのことで大変でも、トオルさんがいるからステキな笑顔でいられるんだ、と僕は思った。僕は絶対トオルさんには勝てない。サトウさんにも、お父さんにもヨシユキさんにも勝てない。死んでしまった茶道の先生にも。
寒さはパソコンにも人間にも意地悪をするんですね。皆さんもあたたかくすごしてください。