第5話-39

　「藍原さんが男に捕まりました」銃声が聞こえてすぐに緑川から連絡が入った。「撃たれたのは彼女ではありません」
　銀行の前には、太りすぎの男が尻を撃たれて倒れている。緑川が送ってくれた映像で、女子行員とはしゃいでいた男だ。

　「男の要求は車に金を積んで、藍原さんを人質に逃走すること。
　藍原さんは男に催眠を施そうと、会話を試みていますが、男は怒鳴るばかりで会話になりません」

　「他のメンバーが銀行に向かった。私もすぐにそばまで行く。銀行は金の入ったケースを車に運んでくれている。引き続き、監視を続けてくれ」
　黒木から返事があった。

　緑川は「はい」と答えて、腹這いの姿勢でカメラを覗いた。ダクトを壊して飛び出せば手の届く場所に藍原がいるが、男が銃を持って藍原を人質に取っている以上、突入は危険すぎる。
　自分はまた仲間を助けられないのか？緑川は弱気になっている自分に気付いた。さっきの銃声のせいだろう。「突入の指示を待ちます」

　「おーい、この負傷者運んでいい？」村崎の声が聞こえた。「悪いけど邪魔なんだ」

　「そんなブタはさっさと場に連れて行っていいよ。金が用意できるまでに掃除しておいて」
　藍原を捕らえている眼鏡の男が答えた。