On The Road

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2010-02-14 20:12:54 | OnTheRoad第4章
 車のドアがあいて運転席から娘さんが降りて助手席側に回ってハルさんのためにドアをあけた。ハルさんは娘さんの手を借りてだけど車から降りて、杖もつかずにしっかり立った。

 今日のハルさんは薄い緑とピンクの着物を着ている。薄緑の地に満開の桜が描かれた品のいい着物だ。

 和服のハルさんを見たとき、僕は2つのことがいっぺんにわかった気がした。サトウさんがはりきったわけとハルさんにあこがれたサトウさんの気持ちだ。 はじめてハルさんに会ったとき、僕はたしか品のいいおばあさんだと思ったんだ。ハルさんはおばあさんなのに背がピンと伸びていて、ゆっくりな動作も優雅な感じがする。 美人ではないと思ったあの女の人も、ハルさんと顔はそんなに似ていないけど優雅な動作はそっくりだ。
「ハルさんが来るって、わかってたんですか?」と僕はサトウさんに聞いた。どう考えてもそうとしか思えない。
「今日は先生のショーツキ命日なんだ」とサトウさんが言って、僕はショーツキ命日の意味を教えてもらった。茶道の先生の命日は3月だけど、毎月先生がなくなったのと同じ日にハルさんは家族とお茶会をするんだそうだ。ショーツキ命日にはハルさんはいつもあの着物を着てくるらしい。コンビニに来たときはワンピースだったけど、やっぱり桜の花柄だったと思う。


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