もんく [とある南端港街の住人になった人]

空が青い

昨日の空は青かった。

それは奇跡のように青かった。奇跡でなければもしかしたら自分はもういつの間にか死んでいて死後の世界に入り込んだのではないかとさへ思った。

そう思わせるもう一つの要素がそこにあった。昼間だと言うのに町には人が一人もいなかった。家々のシャッター式雨戸はアイボリー色に太陽光を反射して閉まったままだしアスファルトは白っぽく乾いた色をしている。蟻一匹いない。

こんな良い日に誰もこの空を見ていないなんて全く信じられない。映画で良くある住民全員が忽然と消え去った町そのものだった。


我に返って思う。
普通の日本の郊外の町はこんなものかも知れない。きっと夜になると車が家の前に帰ってきて家のあかりが点されるだろう。テレビも点けられてご飯になって風呂に入るのだろう。別にそらが青かろうが赤かろうがそんなことはどうでも良いのかも知れない。

久しぶりに見るこの町の様子はゴーストタウンそのものだ。全ての商店はシャッターを下ろしてしまって人影は無い。もう人々はこの町には寝に帰るだけなのだろう。

子供のころ見たここは何かもっとしっとりとした、例えば人の吐いた息の中で暮らしているような雰囲気があったと思う。今は乾いてしまって砂漠の風が吹くようだ。記憶の中のこの町では特に良い事も無かったように思う。他の人達もそうだたのだろうか。だからこうなってしまったのだろうか。
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