「止まりなさい!! 止まりなさい!! 聞こえてるか!? 止まりなさい!!」
そんなことを警官がいってる。でも勿論だけどそんなので止まるやつはいない。だって彼らは正気じゃないんだ。それは見たらわかるだろう。それぞれが変な動きをしてるし、ただ歩いてる人だって見ただけであれはヤバい……とわかる。
アンゴラ氏達は一体あの警官たちが何を見てるのか……と思ってしまう。実際、逃げたい……と思ってる警官だっているだろう。けど警官という職業柄、それはできないのかもしれない。上司の命令だってあるだろう。警官という立場なら、軍隊ほどではないにしろ、命令というのは絶対だろうし。盾を構えて、バリケードを作ってる人たちは一番良く見える位置にいるのに、声とか挙げれなくて大変だと思う。
それに一番におかしくなるのは確実にあの人達である。そしてそのときは一刻、一刻と迫ってきてる。
「このままじゃ警官達もおかしくなってしまいます」
そんな風にミカン氏がいう。けど確かにそうだ。このままだと彼らもそのうち……というか後ちょっとしたら先頭の盾を構えてる人たちは力の影響下に入る。そうなったら、あんなバリケードを作ってても意味なんてない。警官が阿鼻叫喚に成るのは確実だ。
そうなったらどうなるのか……と考えると、きっと次は自衛隊が出張る事になってしまうだろう。軍隊を持っていない(ということになってる)国である。警察の上の武力的な機関となったらもう後は自衛隊しかいない。それかもしかしら特殊部隊? 的なものが出てくるのかもしれない。
けど……だ。
(何がきたとしても……)
そう考えてしまうこの場の全員。だってそうだろう。防ぐ手段がない。今のところ、近づかない……という風にするしかない。幸いなことに壁とかを透過して影響を与える……ということはないらしい。なにせ室内にいる人達には影響はなさそうだからだ。なにせそうだとしたら、これまで歩いて来た中で、一軒くらいは家の中からもおかしくなった人が出てきてもおかしくない。
だが、比較的早い段階からこの場にやってきた彼らはまだそんな風に室内から外へとおかしくなって出てきた人をみてない――ということはきっと窓とかドアを閉めてたら、室内までは力の影響はきっとないんだろう。
もしかしたらそうじゃない可能性もあるが、建物の中とかなら大丈夫だと思いたいと皆が思ってる。
「どうにかして、彼らを誘導とかできないですか? アンゴラさんの力なら……それか猩々さんが結界を張るとか……そういう事……できたり……」
大川左之助がそんなことをいってくる。確かにこのまま警官隊まで巻き込まれたりしたらまずいとは思う。彼らは銃だって携帯してるのだ。もしも……意識が混濁した中でそれを使ったりしたら……死人がでたりするかもしれない。
「そもそもが彼らが何を目的にしてるのか……何に反応してるかもわかりませんぞ!」
そういう風にミカン氏がいった。そうなのだ。彼らの習性というのはまったくもってわからない。おかしな行動をするやつはおかしくなった瞬間にそれを行うし、ゾンビのようにただ歩く人達もどういう意図で襲いかかるのかとかまったく持ってわからない。多分目についた手近な存在に襲いかかるんだろうが、脅威度的にはアンゴラ氏とか猩々坊主とかそんな人達を優先的に襲いかかったほうがいいが、別に力を使ったからといって、彼らがそれに反応することも無いのである。
そしてどんどんと増えるおかしくなっていく人たちに、アンゴラ氏の力だけでは対応ができてないし、猩々坊主も結界とかは難しいという。そもそもがそんな誰かを封じ込めたりはできないらしい。
「某が出来るのはもっと曖昧な者を閉じ込める程度の結界だ。人間を閉じ込める事はできぬ」
ということらしかった。
「お、お待たせしました皆さん!」
そんなことをいって現れたのは世界の聖女になりつつある草陰草案だ。