ガキイイイイイイイン!!
そんな音が響く。既にこの腕の右手は指が欠損してるし、左腕はなんとか紙一重で繋がってる状態。そこまでボロボロになってる。なのに……
(押し切れない!? これで……)
驚愕の執念。意地……みたいなのを感じる。けどそんなわけはないだろう。こいつは機械だ。アイ殿のように感情があるシステムって訳でもないのだろう。ただ与えられた役割を全うしようとしてるだけ。
けど……
(そうか。役割を全うする。それが出来るのは人にだって案外少ない)
けどこいつはそうじゃない。機械だからこそ、それにしか存在意義がない存在だ。だからこそ、愚直に……まっすぐにそれを実行してるだけに過ぎない。
でもそうだからこそ、こいつには迷いなんてものが一切ない。人が色々と迷うことで迷走するようなことが一切ないのだ。自分の体がここまでボロボロになってたら、普通は役目よりも自身の体の事。命の事を心配するだろう。
けどこいつにはそんなのはない。常に自身に与えられた役目が最上位の物で、それに比べたら、こいつにとっては自分自身さえもその役目よりも下なのだ。
だからこそ、こんなになっても食らいついてくる。でもそれでもボロボロなのに変わりはない。とりあえずなんとか繋がってた左腕をぶった切る。それによって肘から下の部分が落ちていく。ガシャーン! とか音がしてるが、そんなのはどちらも気にしてない。これで腕は一つだ。残ってる右腕もボロボロ。
これで攻めきれなかったから、何が勇者だ!! 気合いを入れろ自分。ここで決める!! アイ殿も、そしてミレナパウスさんもよくやってくれてる。なのにここで自分が決めないでどうする!!
出し惜しみせずに力を開放する。黄金の輝きが周囲を照らす。聖剣が光を纏い。その刀身を大きくする。次の瞬間――手のひらを斜めに切った。でもまだだ。切り替えして次には手首と肘の間の部分を切る。
僅かな抵抗を感じた。けどそれだけだ。これまでの様な頑丈さはなくなってる。それを維持するだけのなにかがなくなったのが、機能してないのかはわからない。でも――斬れる――ことが自分にとっては重要だった。二の腕にも剣を伸ばし、腕の背後の輪っかも同時に切る。真っ二つ……というのは無理だっだが、腕が繋がってる輪っかも一部部分が切れた。
もう腕は使いものにならないだろう。この輪っか部分が何なのか、正直分かってない。けど、見逃すなんて選択肢はない。これも斬る!! けどその時だ。目の前の輪っかがとても鋭い光を一瞬走らせた。
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