「なにあれ?」
小頭はギコギコとちゃりを漕ぎながらそういった。廃村が見えて来た段階で鬼たち二人はなんか厳しい顔をしてたけど、廃村に近づくと小頭とおばあちゃん……育代にもそれが認識できたみたいだ。
「魔が育ってるな」
「どうやらあそこには魔が好む怨嗟があるみたい」
そんな事を鬼たちはいってる。小頭は後ろで二人乗りしてる育代をみる。
「あの村は、呪われるからね」
「そんな場所に私達を連れて行ったの?」
それはどうなの? と思った野々野小頭だ。だってわざわざ呪われてる場所に連れていく? そんなのはテンションがぶちあがってる若い連中がやることだよね? 肝試しとか、小頭くらいの男子たちも好きそうな遊びだ。
中学、高校、大学生とかさ。けど育代の中身はおばあちゃんだったわけで、もうそんなのはとっくに卒業してるはず。それにおばあちゃんにとっては小頭も足軽もかわいい孫だ。
そんなかわいい孫を危険な場所に? おばあちゃんにしてはおかしなことだと小頭は思った。
「そうね……浅はかだったわ。ちょっと取っておきたい物があったの。あの時は見つけれなかったけどね。それに私にとっては呪いって危険なものじゃなかったし」
そういうおばあちゃん。いや今は育代……か。育代はあの場所で育って、きっと呪いと近い位置で接してきたんだろう。だから呪いを今の人達と同じようには受け取ってないのかもしれない。
呪いは小頭たちには邪のようなイメージが言葉的に強いが、育代にとってはそうじゃないんだろう。
ごふぅぅぅぅぅぅぅ――
「それよりもあれ……どうするの?」
小頭はそれを指さす。なにせ村には大きな……まるで鏡モチを何弾も重ねたような腹をした不気味なやつが、まるで温泉につかる様に、のぼせるような顔をして村に居座ってるんだ。なかなかに大きいそいつは村を包むようにそこに居座ってる。
そして周囲の木をベキポキとつかんで折っては、口までもっていって、ぼりぼりと食ってた。
どうみてもやばい奴じゃん……と小頭は思ったよ。けど、そんな小頭の思いとは裏腹に、鬼たちは動揺なんてしてない。
「任せて」
そんな鬼女の言葉と共に、二人は並走してた小頭たちをおいて、一気に突き進んだ。そして更に勢いをまして、二人して、村に居座ってるそのブヨンブヨンのお腹の化け物に文字通り風穴をあけてしまった。