「うーん」
なんか差し出した手のひらを野々野小頭にぷにぷにと触られてる草陰草案。そしてさらにそこから袖をめくられて腕の方も触られる。
「あははは、くすぐったい」
さらには腕を上げさせて両脇から腰の方までポンポンとする野々野小頭。
「ふっふふふ」
なんかもじもじしてる草陰草案。さらには背中を向けさせて、背中をさわる。それでようやく納得したらしい野々野小頭。
「なにもないね」
「当たり前でしょ」
「でも……『力』とか言われても……」
どうやら野々野小頭は草陰草案が素早く枯れた花を新鮮な花に入れ替えるような手品をしたと思って、それならどこかに枯れた花が草陰草案の体のどこかにある――と仮定して探ってたらしい。けど結果はこの通りどこにもそれらしきものはない。
つまりは手品ではなかったということだ。それには一応納得した野々野小頭。でも……流石にこれが『力』なんていう事は一概には納得なんてできなかった。
「うーんそれじゃあ……小頭ちゃん怪我とかしてない? この力で治してあげる」
「ええー、てかしてないし」
「てかそっちがしてたじゃん……ってもしかして?」
そこで野々野小頭は気づいた。確かに草陰草案は奇跡的に瓦礫の山に覆われたが軽傷だった。軽傷だったといっても、傷はおってる。だから病院ではそこそこガーゼとかしてた。でも……だ。でも、今やどこにも絆創膏一枚してない。
誰もがきっと軽傷だったからもう治ったんだ……くらいにしか思ってなかっただろう。でも……と野々野小頭考えた。
(流石に軽傷でも早すぎるんじゃ?)
――ってね。なにせまだあれから三日である。軽傷でもガーゼをするほどの擦り傷である。かさぶたくらいは出来るだろう。けど……どこにもそれもみえない。どこも綺麗な肌だ。確か顔にも傷があった筈……もちろん傷が残るほどの傷ではなかった。でも……三日程度ならまだ跡があってもおかしくないと野々野小頭は思う。
でもないのだ。草陰草案の体はとてもきれいになってる。
「ふふ……そうだよ。私がこの力に気づいたのは、自分自身の傷を治しちゃったから……なんだよね」
そんなとんでもない発言を草陰草案はしてきた。そして草陰草案は自分がこの『力』って奴に気づいたときの事を話し出す。