横浜中央市場 水産物部仲卸 村松です。
魚の熟成について説明しています。
「コリコリ食感=鮮度=うまいという感覚」
一方、日本人は、コリコリした触感を鮮度が良いと好む(勘違いしている)ので、K値である頂点のAMPにいくちょっと前の段階で料理人が刺身としてお客様に出すことをよく見かけるが、実はこの段階(死後硬直)までは身の味はしない。
また、PHはアルカリ性なので味に関しては美味しいとはならず、不味いとなるはずだが、これを醤油や紅葉おろし等の調味料で誤魔化していることが多い。
本来は、頂点のK値をちょっと過ぎた段階で、お客様に提供することが好ましい。
特に硬直した魚は、硬いだけでうまくない。
ギンポの硬直比較写真です。「夏の代表的な天ぷら食材江戸前の逸品」
養殖業者に多く見られるが、鮮度保持で売ることが、魚の味を良くすることではない。味の良いものを売らないと魚屋の将来はないと思う。
ちなみに養殖の魚は大海で運動をしていないので、細胞組織の繋がりが弱く、ATPからAMPまでの変化が早い。舌触りがネットリとして身が柔らかい。脂も乗る。K値の曲線はシンメトリー(対称)となるので、K値(死後硬直)までの時間が早く短いということは、頂点のK値からHx(腐敗)までの段階も早い。
したがって、天然と比べて養殖は持ちが悪い、という理由がここにある。温度が0℃で酵素の働きがほとんど止まるので、氷で0℃まで冷やして輸送させることが鮮度を保持する(腐敗させない)ことにつながる。
また、冷やすと細胞が細くなり、身も引き締まる。固くなりすぎるという欠点もある。
さきほど、PH(ペーハー)の話をしたが、魚のPHは7.1である。魚が暴れると尿酸値が上がるとPHは低く落ちる。PH5で魚はエサを食べなくなる。PH6以下では美味しくない魚とされ、低いほど味がなくなる。
とはいえPHが7.1を上回っても、魚の味は美味しくはないということも知っておいて欲しい。
注意して欲しいのは、魚を獲るときは、魚を暴れさせてはいけないということだ。静かに、穏やかに、苦しませずに獲ってあげるのが良い。
PHが低いとATPからAMPまでの変化も早くなってしまう。
したがって、獲ってから水槽で一日休ませてから〆ると、もとのPHに戻るので良い。
養殖のタイは、関東の小売店に売られるまで36時間、ずーっとカゴに入れられている。そのため身が白く悪い。産卵期の浅瀬にいるタイはこの色であり、4月のタイの色である。
カゴから生け簀に出してからは、一日自由にさせて落ち着かせ、PHを元に戻すことを行う方が良い。
関西のタイは生け簀からその都度取ってくるので、身が飴色で良い。
魚は脂がのると黄色くなる。冬場のタイは海の深いところにいるので、身がクリーム色となり良い。
余計な話もしたが、鮮度と旨味の認識の違いを分かってもらえたであろうか。
K値は鮮度の求め方であり、旨味の求め方でないことは分かって欲しい。
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