朝 レッスンに行ったら
ドアの前に茶髪のいまどきの若者が立っていた
「あれ~Sくん
」
「先生 お久しぶりです
あれから 僕 音大に行って
今はトランペットプレイヤーを目指しているんです
」
カッコよくピアノの椅子に腰かけて 聞かせてくれた曲は
ムーンリバー
ん~~~~しぶいねぇ Sくん
また 懐かしい生徒が逢いに来てくれた
この前は yちゃんが来てくれたよ
あの頃の生徒たちは ふとしたときにここを思いだしてくれるんだ
お別れのとき
「 先生はね おばあさんになっても
ずっと みんなのことを覚えているからね
苦しい時は いつでも 逢いに来てね
そのために ずっと ここの教室で頑張って
レッスンを続けているからね 」
いつもそう言って お別れする
そうやっておわかれした生徒たちが
逢いに来てくれた時
一番 うれしい
「この仕事 辞めようかな
」と いう考えがよぎった時
決まって やってくる 懐かしい声
やっぱり こうやって逢いに来てくれる生徒たちの為にも
まだまだ頑張るべきなのかな
迷える子羊 思春期の若者たちの話を聞きながら
私も 相当 迷える大羊なのに
何でもないふりして
子羊たちに 生意気にアドバイスしたりなんかしてる