会社で使っているトラックの幌（ほろ）を固定するゴムが切れて
倉庫にあった替えのゴムも使い切り
今は何かの紐で代用して固定していたが
やっぱりそこはゴムを使わないと
幌がビシッ！とならないのだ
まぁ、どんなゴムなのかと言うと自転車のタイヤのチューブみたいな
黒くて平たいゴムなのであるが
誰も直そうとしない
鳩のオッサンの知り合いが会社に来た時に、このゴムの話がチラッと出たら
『オラ、自転車屋の外に置きっぱなしになってるの勝手に貰って使ってるぞ！』
なんて言っていた
…泥棒の知り合いも泥棒なのだなと。
前置きが長くなりましたが
このゴムが無いのが俺はどうしても気になって気になって
不要なチューブがあったら譲ってもらえないかなと自転車屋さんに向かった
しかし、お店が閉まっていた…
んで、思いついたのは
前に勤めていた会社でお世話になっていた業者さんだった
やっぱりトラックの幌に使うゴムを何度か譲られた事があった
俺は以前の会社を辞めている訳だし
俺が今勤めてる会社はその会社と付き合いもないし
良かったらゴムを売って欲しいとお願いしに行くことにしたのだった
10年ぶりくらいにお邪魔した
社長さんは薪ストーブにあたって、奥さんと雑談していた
『こんにちは〜社長さん元気でした？俺のこと分かる？？』
『わっかるよ！ハナクソ商事で働いてた人だ！』
『よかったー覚えてくれてて〜！社長さんも元気で良かったよ〜』
『どうした？急に〜』
って言うので幌を止めておくゴムを譲って欲しくて来た事を言うと
『ナンボでも持ってけ！10メートルか、20メートルか』
『いや、いや、トラック2台分あればいいの』
『なに〜そんな事言わないで好きなくらい持ってけばいいのに』
そう言うと新品のゴム10メートルくらい束ねたやつを持ってきて
『ほれ！使って！』
『いやいやいや、お金払う！なんぼ？？』
『いらねぇ！持ってけ！いいから〜』
…
廃棄された何かのチューブを適当に切ってるんじゃ無い
ちゃんとした新品の綺麗なゴムだ
タダでなんて貰えない
『いや、本当にお金取って！タダでなんて貰えない〜』
会社から5000円は貰って来ていた
『いい！いらねぇ！やるから使って！』
…なんてこった
何だか、ただただ物をもらいに来たみたいじゃないの
俺の事を覚えてくれていたことも
社長さんが元気だったことも嬉しかった
当時から結構なお爺ちゃんだからもしかして…と、思っていたけど
いやいや、元気で何より
『欲しかったらいつでも来て！いいから、遠慮しないで！』
俺と社長さんのやりとりに
鳩のオッサンが割り込んできて
『いやーなんかすいません！本当にお金取っていいんですよ！』とか
お前はしゃしゃり出て来るんじゃねぇよ！！！
頂いたこのゴムは倉庫に置きっぱなしにして置くと
小鉢くんが私用で何かに使いたいから持ってくとか言い出しそうなので
俺の管理で隠しておく事にした
…いいよね
社長さんの奥さんも元気で良かった
俺が行くと必ずコーヒーをいれてくれた
よほど冷まさないと口を火傷するぐらい
ぐらんぐらん沸いたお湯でいれてくれるコーヒーだったな
懐かしいな。
会社に戻ってきて
知り合いの社長さんから無料で譲っていただいた話をして
預かってた5000円を事務に返すと
俺の後ろで鳩のオッサンが
『にゃびさんの顔で無料だったんで、にゃびさんに5000円あげてもいいぐらいっすよ！』
と、クソくだらない事を言って
俺のほっこりした気持ちをひどく汚してくれた。
…
…
ふぅ。
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