滅多に外で食事をしない私に、親友から突然のお誘いが。
「カフェランチしよう!」
「はい? いいけど…どうして? いつもはわが家での、お気軽ランチ会なのに?」
「いいから! 今回は外でごはんするの!」
私とは正反対の猪突猛進型の性格で(けれどその実とてもデリケート)、いつでも何事においても説明不足な人だけど、彼女が言い出したからにはそうするだけの理由(たとえ「そういう気分だった」程度のことでも)があるのだろうと思ったので、それ以上は問わずに
「はいはい、わかりました」。
そしてその数分後。
「ぱりまりん家のすぐ近くにいいところを見つけた! 予約したから!」
早っ!
――ということで。
ワケが分からないまま連れて行かれた先は…森でした。
10席に満たない小さなレストランと小さなカフェ、更にはギャラリー(画廊)まで併設された施設は、屋久島をイメージしたという広い庭園を中心とした造りになっていて、まるで林、まるで森。
郊外とはいえ街なかで暮らす身の、身近にはない杉の木が立ち並ぶ風景に、うっかりすると山の中かその麓にでも来たのかと錯覚しそうになるけれど。
ここは市の中心部にほど近い、古い住宅街のど真ん中。
それゆえに、わが家からほど近いとはいえども用事がなければ足を運ぶことのない地区だったので、「こんな場所があるだなんて知らなかった…!」と、緑の中でしばし呆然としてしまいました。
杉の木が濃い木陰を作る庭には、日陰に強い植物が数多植えられていて、苔の色がひときわ鮮やかでした。
草木の配置はとても自然で里山を思わせるのに、石の小道、石の壁と、石を多用した庭園には石造りの小川まであって、計算し尽くされた造形美も感じられ。
庭へのちからの注ぎかたが半端じゃないなぁと思って眺めていたら、スタッフのかたにこの施設の母体が造園会社だと教えられて、大いに納得。
どうりで植物のチョイスがマニアックで、『通好み』だと思った!(笑)
(「これらをマニアックだとわかる私も大概マニアックだ」と親友には笑われましたけれど)
ナチュラルだけど凝った庭を眺めながらいただく料理は、これまたさりげなく凝っていて。
どれもさっぱりとしているのに深みのあるお味で、とてもとても美味しかったです。
――で。
デザート(楽しくいただくあまり写真撮るのを忘れた…)をくちにしながら親友が言うことには、「今日のランチは誕生日プレゼントだから」。
…はい?
「私の誕生日は、もう40日も前に終わったんだけど…」
「知ってる。 遅くなってごめん」
「いや、それはいいんだけど。 あなたの誕生日は来週だよね? これが誕生祝いのランチだと言うならば、あなたのお祝いにしたほうがふさわしいのでは…?」
「私のはどうでもいい。 誕生日おめでとう」
「…ありがとう???」
かくの如き会話が繰り広げられたのち、脳内に盛大なクエスチョンマークを浮かべつつも、結局ごちそうになりました。
――後から思うに。
私の誕生日を祝うために、私が好みそうなお店を探してくれたのでしょう。
庭や植物になんて、少しも興味がない彼女なのに。
私が滅多なことでは外食をしないと、知ってるくせに。
だからこそ、わざわざ外へと連れ出してくれたんだね。
30年来の親友ならではの剥き出しのやさしさが心に沁みた、しあわせな一日でした*