チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「チャイコフスキー『ヴァルス・変イ長調(pf独奏用)』op.40-08/12」

2010年07月24日 04時08分35秒 | チャイコ全般(6つの目のチャイコロジー
イケてないメンのオヤジなのできれいなお姉さんと飲めないし、
稼ぎも頭髪も薄いオヤジなので高級なワインバーにもイケナイし、
とある多店舗居酒屋の恵比寿東口店で、やはり
こぎれいなお姉さんとこじゃれた店にはイケナイようなオヤジと
ふたりで寂しく安酒をしこたま飲んでから帰宅したら、
サブカル・ライターの村崎百郎が練馬の自宅で、
通院歴のある読者に包丁で腹など二十数箇所刺されて、
即死したというニュースをやってた。村崎氏の著書を読んで、
「騙された」と恨んでの犯行に及んだという。
こういう下手人の思考過程が知りたくなる。
「何がこの男を刺激したのか」ということを、
詳らかに発表してほしいものである。ともあれ、
同棲相方の漫画家森園みるく女史は外出中で難を逃れた、とか。
村崎氏のオトモダチの唐沢俊一の著書「唐沢先生の雑学授業」には、
<日本最後の仮性天然痘罹患者はお笑い芸人コンビ
 「オセロ」の中島知子だ>
と書かれてるらしい。予防接種を受けた家族から感染したのだ、と。
直に読んだわけでないので、その出典・根拠が書かれてるのか、
裏を取ってあるのか判らないが、きちんと黒白はっきり
おせーろ、と言いたい。

さて、
教えて、といえば先日ネットに、
<質問=チャイコフスキーの「ゆるやかなワルツ」の無料楽譜を探しています。>
という記事が躍ってた。
<趣味のピアノで次に弾く曲は「ゆるやかなワルツ」がいいな~と思って、
 無料の楽譜を探していたのですが・・・自分では見つかりませんでした。
 誰か、この曲の無料楽譜のアドレスを知っていたら、教えて下さい。
 →「Tchaikovsky Waltz In A Flat, Op.40-8 」です。>
という内容のものである。すでに回答は寄せられてたのだが、
知りたい欲求が旺盛な私はどうしても伺いたかった。
「このop.40-8のワルツがなぜ「ゆるやかな」ワルツなのかが知りたいので、
よろしかったら、その出典を教えていただけますでしょうか」
と。

まず、この「op.40」というのは、独奏pfのための
「中難度の12の小品集」である。第10曲がもっとも著名な曲である。
「白鳥の湖」で書き足した「ロシアの踊り」である。ともあれ、
第8曲は"上記のとおり"「変イ長調のヴァルス」である。
楽譜には、[Tempo di valse]とだけ指定されてる。
「3/4拍子、4♭(変イ長調)」
***♪ソ<ラ<シ<ド│<ミ>レ(<ミ>)レ>♯ド<レー│
         ●●<ファーー>ミ│
         ミーーー>レー│
         ●●>♯ド<レ<ミ<ファ│
         <ラ>ソ(<ラ>)ソ>♯ファ<ソー│
         ●●<シーー>ラ│
         ラーーー>ソー│
         ●●>♯ファ<ソ<ラ>ソ│
         <ド>ファ(<ソ>)ファ>ミ<ファー│
         ●●>♯レ<ミ<ファ>ミ│
         <ラ>レ(<ミ>)レ>♯ド<レー│
         ●●>♯ド<レ<ミ>レ│        
         <ソ>ドドー、<シ>ド│
         ドーッ、<♯ド<レ<ミ>レ│
         <ソ>ドドー、<シ>ド│
         ドーッ、<♯ド<レ<ミ>レ│
         <ソ>ドドー、<ミ>ファ│
         ファーッ、>ミ>ファファー、│
         <ラ>ドドー、<レ>ソ│ソ●♪

[●●<ファーー>ミ│ミーーー>レー]/[●●<シーー>ラ│ラーーー>ソー]
というリズムが耳に付くが、これは
バレエ「白鳥の湖」第2曲の「ヴァルス」の第1ヴァルスの律動と同じである。
アゴーギクを用いるのは当然としても、総じて
「ゆるやか」というふうには逆立ちしてもならない。
なぜに"ゆるやか"なのだろう? 

お答えは、すぐさまいただけてたらしい。
次に見たときにはもうご回答いただいてた。
ご返事はこうである。
<えっと・・CDを借りたときに、
 「flat」とあったので「ゆるやか」かと・・。
 ごめんなさい、勝手に解釈していました。でもたしかに
 「waltz In A flat~」とはありました。
 CDは図書館のだったのでよく分かりませんが・・・
 ラフマニノフ自身が演奏したものでした。>

私は衝撃を受けた。
ラフマーニノフの演奏なら私もCDを持ってる。が、
ラフマーニノフはけっして"ゆるやかに"など弾いてないことは
言うまでもない。でも、
そんなふうに曲解する人が
クラ音を嗜む程度の知識階級にもはいるのである。
音楽のオの字も解らない人のために、たとえば、
真っ当な寿司に手は届かないし
寿司がどういうものか判かりっこないけれど
食の本能から寿司みたいな形をしてれば何でもいいから
食いたいという人の欲求を満たすために
代用魚を使って江戸前の仕事をしてない安価な
回転寿司があるように、ポップスはある。が、少なくとも
楽譜を求めてるのだから、楽譜が読めてピアノも弾けるのだろうに、
"ウォールツ・インナ・フラット"……Aは定冠詞のaと解してるのである。
大文字になってたって、そんなもの、気にゃしない。
大は小を兼ねるってなもんである。でも、
"in a flat"でも"ゆるやかに"なんて意味には、
どこをどうやってもならない。せいぜいが"平板な"ワルツである。が、
このop.40-08はどうしてけっこう広い音域を使ってるのである(※)。
だから、このかたは高尚な機知で、故意に
そのようにボケてみせたのだろう。

「中難度の12の小品集(op.40)」は、
チャイコフスキーが結婚禍から逃れた西欧放浪の旅先のひとつである
フィレンツェで、1878年2月に書き始められた。旅には、
召使いアレクセイ、弟モデスト、モデストが家庭教師をしてるコーリャが
お伴をしてた。一行はクララン、そしてカーメンカへと移動。
4月下旬にカーメンカで下書きがすべて終わる。前年、
フォン=メック夫人からの編曲依頼→支援、
山林資産を持ってると思われたミリュコーヴァからのアプロウチ、
によって金の問題が解決すると有頂天になって
創作意欲がきらめくように降りてきたチャイコフスキーにとって、
山林の価値がさほどなく、仕事の妨げにしかならないと判った
ミリュコーヴァは苦痛以外の何物でもなかった。
その結婚禍から救ってくれたのが、
フォン=メック夫人であり、双子の弟アナトーリーとモデストである。
チャイコフスキーは大変に感謝してる。そして、その
スイス・イタリア逃避行の1877年から1878年にかけて
オーケストレイションされ、あるいは作曲された、
「交響曲第4番(op.36)」「6つのロマンス(op.38)」「中難度の12の小品集(op.40)」
がそれぞれに献呈された。その逃避行に
ずっと付き添ってくれてたこともさることながら、
"Moderate difficulty"なので当然に、
弟"Modest"に献呈された(※)。
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