チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「チャイコフスキー『眠れる森の美女』の中のヴァルス」

2009年07月23日 04時08分16秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[Valses in tchaikovsky's ballet THE SLEEPING BEAUTY]

小澤征爾と同年の指揮者若杉弘が死んだらしい。
故人のことはあまりよく知らないし、
一度も実演を聴いたこともない。が、唯一、
リヒャルト・シュトラオス翁のバレエ"Schlagobers(シュラークオーバース)"
(邦題「お菓子のクリーム」「泡立ちクリーム」=ホイップクリームのこと)の全曲を
東京都交響楽団と録音したCDが20年ほど前にDENONから出たので、
それを買ったことがある。都響ってN響より巧いじゃんか、
って思った記憶がある。シュトラオス自身も、その中の
"Schlagoberswalzer(シュラークオーバースヴァルツァー)"
(ホイップクリームのワルツ)だけベルリン放送管と録音してる。もちろん、
シュトラウスのほうが若杉のより演奏時間が短い(5分39秒と6分23秒)。
いずれにせよ、若杉のほうも今ではこのナンバーしか
iTunesに落としてない。CD自体はどこの書庫に置いてあるか、
大コケしたらしい邦画「櫻の園」と「群青」のどちらも観にいってしまった
(福田沙紀女史や長澤まさみ女史を大画面で見たかっただけのこと)
おバカジジイな私ゆえ、にわかには思い出せない。ともあれ、
"Schlagoberswalzer(ホイップクリームのワルツ)"は、
チャイコフスキーの「くるみ割り人形」の「雪片のワルツ」にインスパイアされてる。

いっぽう、チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」には、
tempo di valseなvalse(ヴァルス)が6つある。

(プロローグ)
■第2曲:踊りの情景(3部構成の第3部) 踊り手=若い廷臣・女官ら
【3♯イ長調】***♪ラー・ーー>・ソー│ーー・ー、<ラ・<ド<ミ│<ラー・ーー>・ソー│ーー・ー、<ラ・<ド<ミ♪
■■第3曲:パ・ドゥ・スィス/ヴァリアスィョン6 踊り手=リラの精
【0 ハ長調】***♪ファー・ーー・ーー│>ミー・ーー・>レー│<ミー・ーー・ーー│>レー・ーー・>ドー♪
(第1幕)
■■■第6曲:ヴァルス 踊り手=若い村人男女ら
【2♭変ロ長調】***♪ドー・ーー・ーー│>シー・ーー・ーー│<ドー・ーー・>ラー│<シー・<ドー・>ラー♪
□第8曲:パ・ダクスィョン/コーダ後半(※) 踊り手=オロール(死の……百年の眠りの……舞踏)
【3♭変ホ長調】***♪ミー・ーー・ーー│>♯レー・ーー・ーー│<ミ、>ミ・<ソ<シ・<ド<♯レ│<ミー・ーー・ーー♪
(※)tempo di valseとは書かれてないが、実質的にはあきらかにヴァルス
(第2幕)
□第15曲a:パ・ダクスィョン後半[アッレーグロ、3/8拍子、(1♭)](※) 踊り手=オロール+デズィレ王子
【1♭ヘ長調】***♪ソ│<ド、・>ミ・<ラ│>レ・ー、・<ソ│<ド、・>ミ・<ラ│>レ・ー♪
(※)tempo di valseとは書かれてないが、実質的にはあきらかにヴァルス  
(第3幕)
■■第23曲:パ・ドゥ・カトル/ヴァリアスィョン1 踊り手=金の精
【3♭変ホ長調】***♪ドー・ーー・ーー│<レー・ーー・>シー│<ドー・ーー・ーー│<レー・ーー・>シー♪
■■第25曲:パ・ドゥ・カトル/ヴァリアスィョン1 踊り手=煤だらけ姫+金満王子
【0 ハ長調】***♪●●・ミー・<ラー│>ソー、・<ミー・<ラー│>ソー、・<ミー・<ラー│>ソー♪
■第26曲:パ・ドゥ・カラクテル/b後半(※※) 踊り手=煤だらけ姫+金満王子
【2♭変ロ長調】***♪ラー・ーー・ーー│ー>ソ、・>ファ>レ・>シ>ファ│>ミ<ソ・<ド<ミ・<ラ>ミ│<ラー・ーー・>ミー


(※※)tempo di valse(括弧書きでModeraro)→Vivace assai、という変則テンポなワルツ

以上の6つ(ムツ)のワルツのうち、ナンバーがまるまるワルツなのは、
「怒りの日」を冒頭動機として引いてる第6曲のワルツのみである。
ナンバーの枝番ではあってもその曲が終始ワルツなのは
第3曲・第23曲・第25曲である。その他は
曲の途中からワルツになる、という具合である。
第8曲と第15曲は実質的にはヴァルスであるにもかかわらず、
ヴァルスでははい、というタテマエである。それぞれの踊り手が、
百年の眠りにつく直前のオロール、と、幻影のオロール、
という性質のものである。つまり、
タイトルロウルがワルツを踊るのは、ほんとうはあってはならないこと、
タブーとチャイコフスキーは想定してたのかもしれない。なぜなら、
ワルツという踊りは「男女が体を寄せ合って」「クルクルと旋回しながら」
踊る性質のものだからである。ツム(spin)を指に刺して、
毒がまわったんだかなんだか、オロールはフラフラ・クラクラして、
独りクルクルと旋回(spin)しながら、ついには力尽きて
倒れてしまうのである。いっぽう、
第2幕でデズィレ王子の后候補として狩についてきてる各貴族の娘らは
やはりけっしてワルツを踊らない。踊るのは、
メヌエット、ガヴォット、ギャロップ、ファランドル、マズルカなど、
他の舞曲なのである。

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