チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#30/アポテオーズ(a)ファンファーレ」

2010年12月14日 00時01分40秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第30曲「フィナル」は、
1)マズルカ
[Allegro brillante(Tempo di mazurka)、3/4拍子、2♯]
→[Presto、2/4拍子]
と、
2)アポテオズ
[Andante molto maestoso、2/4拍子、2♭]
の2つから構成されてる。その
2)Apotheose(アポテオズ=大詰め)はまた、
a)変ロ長調のファンファーレ
b)ト短調の「アンリ4世讃歌」
から成る。そのa)。

その前に、
apotheose(アポテオズ)について。
apotheose、apotheosis(アポテオスィス)とは、
ギリシャ語apotheoun(アポテオウン)がもとである。
apo-は「-離れて」という意味の接頭辞である。
そこからさらに、程度が甚だしいことを表す。
the(o)は「神」である。したがって、
apotheosisは「完璧に神」→「神格化」
あるいは「完パケ(完璧な物)」→「仕上げ」→「大詰め」
ということになる。そして、
このバレエ「眠れる森の美女」においてapotheoseは、
次のような意味を持つ。
ブルボン朝開祖であるアンリ4世が狂信的カトリック教徒によって
刺殺されたあと、妃であるマリ・ドゥ・メディスィスは、
リュクサンブル宮殿に飾る絵をルーベンスに発注した。
"L'Apotheose de Henri IV
et la proclamation de la regence de Marie de Medicis"
(ラポテオズ・ドゥ・アンリ・カトル・
エ・ラ・プロクラマスィヨン・ドゥ・ラ・レジョンス・ドゥ・マリ・ドゥ・メディスィス)
「アンリ4世の神格化と(倅ルイ13世に対する)マリ・ドゥ・メディスィスの摂政宣言」
である。現在はルーヴルに置かれてるその絵の中では、
亡きアンリ4世は天に昇ってく。つまり、
「理想化」「神格化」されてるのである。そして、
この絵を想定してバレエ「眠れる森の美女」のアポテオズは設定された。
Mulholland Driveと日光いろは坂の違いも見分けれない
拙脳なる私でも心得てるこれしきのことすら知らない
「プロ」のバレエ関係者、音楽学者がウヨウヨいるのは驚きである。

[アンダーンテ・モルト・マエストーゾ、2/4、2♭(変ロ長)]
ニ長調のマズルカの強烈なプレストが一時停止すると、
一転して変ロ長調のファンファーレが吹奏される。
コルネット1管+トランペット1管、そのオクターヴ下の
コルネット1管+トランペット1管が、
***♪ドー・ドド│ドー・ーー♪
とffで吹く。この2小節めの裏拍に
弦群が変ロ長調の主和音を重ね、
pfがその分散を鏤める。このpfが
じつに効いてるのである。チャイコフスキーの
図抜けた音楽センスには舌を巻く。ともあれ、3小節めには、
上記のラッパに加え、ホルン2管とトロンボーン2管が混ざり、
変ロ長調の主和音を形成して、
***♪<ミー・ミミ│ミー・ーー♪
と吹奏する。そこにまた、
弦群とpfが合いの手を入れる。そして、
オーボエ2管とホルン2管がさらに加えられて、
***♪<ソー・ソソ│ソー・ーー│ーー・ーー│ー♪
とファンファーレの締めくくりを吹き上げ、
弦群とpfが追い打ちをかける。
pfの分散和音が上下を繰り返し、
続く「アンリ4世讃歌」を準備する。
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