チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「エドゥアール・マネの右手の第二法則『笛を吹く少年(Le Joueur de fifre)』はどの音を吹いてたのか?」

2014年08月10日 20時26分15秒 | 絵画・カウンタ(寓意がある希ガスる

マネ 笛を吹く少年


7月から10月まで、
六本木7丁目の国立新美術館で、
「オルセー美術館展(サブタイトル=印象派の誕生 描くことの自由)」
が開催されてる。また「印象派」なのだが、
さすがに客も飽きると察したのか、
"印象派の誕生"として、
"非印象派"であるエドゥアル・マネをフィーチャーした催しとしてる。
モネのような大衆受けネライの安っぽい絵とは違い、
「絵は醜い現実やリアルタイムを描いたっていいじゃないか。
絵画は所詮二次元世界なんだから、対象物を
三次元に見えないように描いたっていいじゃないか。
ど根性ガエルは平面ガエルでいいじゃないか!。芸術は爆発だっ!」
と言ったとかいわなかったとかいうマネの
"革新性"と法務省キャリアの倅で裕福なその"マネー"のもとに群がってきたのが、
のちに「印象派」として成り上がる貧乏画家らだった。

ともあれ、今回の「オルセー美術館展」の目玉が、
Edouard Manet(エドゥアル・マネ、1832-1883)の
「笛を吹く少年(Le Joueur de fifre)」(1866年)
なのである。この油彩画は
縦160cm 横98cmと、そこそこ大きいものである。つまり、
少年の実物大に近いものなのではないかと思われる。

前年、サロンに(審査員らのさまざまな思惑の中で)入選した「オランピア」が
またしても物議の的となって騒動のパリから逃れてスペインに旅立ったマネは、
マドリードでベラスケスの「道化師パブロ・デ・バリャドリードの肖像」の
無背景に浮かぶ像のすばらしさに感嘆した。それは、
当時パリでブレイク中だった日本の浮世絵の人物画の
大判絵の背景が人物をより浮き立たせる効果をマネに
納得させるものだったのである。それがマネに創作意欲をかきたたせた。
帰国したマネはさっそくこの「笛を吹く少年」を描いたのである。

絵の少年のモデルは第二帝政近衛軍鼓笛部隊の鼓笛兵だという。
顔だけはマネの子とされてるレオンだとされてる。それはともあれ、
この絵に関して、モデルの少年が何を吹いてたか、
という話題はいままで一切聞いたことがない。
実際の鼓笛兵だとしたら、本当に何かしらの曲を吹けてたはずである。
絵の少年は、
♪ふえを、ふ~いて、あ~るこ~お~♪
とは吹いてないだろうが、
"Le Joueur de fifre"(ル・ジュウェル・ドゥ・フィフル)
というフランス語のタイトルでもわかるように、
この少年が吹いてる横笛は
fifre(フィフル)である。英語では
fife(ファイフ)という。

fife(ファイフ)という語は
pipe(パイプ)と同源である。小鳥や人間の赤ちゃんの
ピー・ピー・ピーヒャララという囀りや泣きの擬声である。ともあれ、
(少なくともこの絵で描かれてる)ファイフはプリミティヴな横笛である。
キーなどなく、運指は日本の小学校の音楽で用いられる
縦笛と同じである。したがって、
絵では左手の人差し指・中指・薬指の3ホウルと、
右手の人差し指・薬指のホウルが閉じられていて、
右手の中指だけが開けられてる。
左手の人差し指・中指・薬指と右手の人差し指のホウルが閉じられてると、
全開音の5度下=全閉音の4度上
(ハ調の音階だとすると上のドの5度下=下のドの4度上)、つまり、
ファの音になる。これは、
我が愛器のピッコロでも確認したが、
右手の薬指のホウルを押さえてても同じである。

したがって、
この少年が持つファイフがトラヴェルソやピッコロと同じく移調でないD管だったら
ファである。
少年が手にしてるファイフが何管だかは、ヒトの耳の縦長が
成人男性で6.5cm、同女性で6.0cmであることから推測すると、
この少年の耳の縦長を6.0cmと見做して、
管長は約35cmである。するとやはり、
トラヴェルソやピッコロと同じく移調でないD管ではないかと思われる。
すると、
この少年が吹いていた音は、
二点もしくは三点ト(英語でG4)…………だが、
この少年の口もと、唇を見れば一目瞭然…………
口をあててるだけで吹いてない、のである。したがって、
この少年が吹いてた音楽は、ジョン・ケイジ籠の中の鳥のさえずり、
4分33秒、なのである。

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