チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「さざなみの水面の点描の妙/ポール・シニャック生誕150年」

2013年11月11日 16時10分13秒 | 絵画・カウンタ(寓意がある希ガスる

ポール・シニャック 生誕150年


本日は、
点描画法で知られる新印象派の画家、
Paul Signac(ポル・シニャキ、1863-1935)の
生誕150年にあたる日である。
若死にしたスラが開拓した点描画法を継承し、
かつ先人を超えなかった奥ゆかしい人物である。
スラやゴッホやゴーギャンなどと違って、
人間関係を通常に築ける常識人だった。
海を愛し、サントロペの海岸でヨットに興じ、画作もする、
といった、ごく一般的な人物だった。
ということで判るように、
スラのような理論派でもなく、画風も
言葉は悪いがちゃちなものだったが、
その中にときどき光るものがある、
というレヴェルの画家である。そのいっぽうで、
対象物を点にぶっこわして絵画に再構築する、という画作ゆえか、
政治思想的には同じく点描芸風のピサロとともに
無政府主義者だった。とはいえ、
仕事に穴を開ける、といった芸風ではなかった。

シニャックの作品は多いはずで、東京でも
国立西洋博物館、松岡美術館、ブリジストン美術館が
それぞれ1枚ずつ所蔵してるが、それでも、
個人蔵が多くを占めてるのでポピュラーではない。
フランスの最西に近い、ビスケ湾のConcarneau(コンキャルノ)も、
シニャックお気に入りの港町だった。
そこでのレガッタやイワシ漁船などを描いた絵も、
ほとんどが個人蔵である。10年ちょっと前までは、
日本で"印象派展"の類が開催されても、
ごったがえす会場ではみなモネやルノワルに集中し、
カイユボットのコーナーには人はまばらだったものだった。が、
そのカイユボットが今では人気画家のひとりとなってる。
シニャックも所有してる個人がここ数十年で死んでって
美術館などに寄贈されるようになれば、ひょっとすると
もう少し知名度が上がって人気も出てくるかもしれない。

ともあれ、
そうした個人蔵のシニャックの絵……たとえば……
上記のようなコンキャルノの港の風景、
「コンキャルノーのレガッタ」「コンキャルノーのイワシ漁船」では、
紫の帆がおだやかな波の水面に映えるさまが、
絶妙な点描で配されてるのである。これはまた、
個人蔵のものだけではなく、オルセーに収められてる
"Bords de riviere, la Seine a Herblay
(ボル・ドゥ・リヴィエル、ラ・セヌ・ア・エルブレ=エルブレ近郊セーヌ河岸)"
という1889年に制作された絵や、
NYのMoMAに所蔵されてる
"Concarneau, Calme du soir(allegro maestoso).Opus 220
(コンキャルノー。キャルム・ドゥ・ソワル=夕方の静寂(アッレーグロ・マエストーゾ)、オピュス(作品)220)"、
"Concarneau. Peche a la sardine.Opus 221(adagio)
(コンキャルノー。ペシュ・ア・ラ・サルディヌ(イワシ漁)。オピュス(作品)221(アダージョ)"
という1891年に描かれたものでも、
見て取ることができる。
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