ユーゴー ? !
今日は暴風雨の日なんだそうである。が、
先週末とはまた別の煎餅焼きで缶詰状態なので、
外の様子が判らない。小林麻美女史の、
♪耳だれをふさぐ指をくぐり、
好きとつぶやく雨だれの調べ♪
という歌謡曲を聴きながら仕事に精を出してる。
暴風で木々の葉が擦れ、その藤原の
摩擦熱でせっかく咲きかけた
中(・)黒川の桜の花が散ってしまうのかどうかは、
[うつりゆく、雲に嵐の、声すなり。散るか(。)まさかの、桜木の山]
という歌が小泉ヤクモノ「耳垂れ芳一」に出てきたかどうか言えず、
恵比寿駅西口の恵比寿像とつのだひろの違いを判別できない、
拙脳なる私には解るはずもない。
メリー・慈円の自作の「拾玉集」に、次のような歌がある。
[かねて知りぬ、あなしの風を、思ふより、心つくしの、波路なりとは]
いかなる状況で詠まれたものか知らないので拙大意は附さない。が、
「あなしの風」=戌亥(乾)の風、北北西の風、
冬に西日本で吹く強烈な季節風のこと、である。
「し」自体が「風」を表す語である。
「穴があくほどの強風」という意味ではないと思うが、
「魔が抜けてく穴がある方位が北北西」
と考えられてたかもしれない。冗談はともかく、
「喜怒哀楽の感動詞」と説明される「あな」という古語がある。
「強い」感情を表してるのである。また、
「あながちなり」という形容動詞があるが、これは
「強いる」「強引だ」というのが原義である。つまり、
「あな」という大和言葉には「強い」という意味がある。
この意味から「あなし」という名が
この風につけられたのではないかと、
私は推測してる。また、
「東風」を「こち」という。東からの風が
「こちら」からとすればそれと対比して、
「遠方」を意味する「あなた」から「あなし」と言った可能性もある。
アンドレア・アガシ夫人シュテフィ・グラフ女史とリチャード・ギアの顔が瞬時には
判別できない拙脳なる私の憶測にすぎない。
いずれにしても、
前大僧正慈円は英文学好きではなかっただろうし、
女優アン・ハサウェイ女史のファンでもなかっただろうから、「ハムレット」の
"I am but mad north-by north-west.
(北北西の風が吹くときのみ余は気がふれるのだぞよ)"
を引用したとも思えない。ちなみに、
今年の恵方は「壬」、おおよそ「北北西」である。ともあれ、
「あなし」が「西日本の風」であることを
"かねて知りぬる"周知のこととすれば、
「心つくし」=考えを尽くした(が答えが出ない)→気を揉む、
という古語の意味と併せて推量すると、
「心つくし」の「つくし」は「筑紫」と掛けてるというのは、
アナガチ私の思いスギナことでもないような気がする。で、
筑後、否、逐語の意味を繋げて意訳すれば、こうなる。
「あらかじめわかってた
戌亥の方角からの強風のことを予想するよりも、
筑紫の海がこれほど気を揉む航路であるとは
あれこれ考えをつくしても予想さえつかなかったことであるよ」
天台宗の開祖最澄のいにしえの
渡唐・帰唐のことを想って詠ったものなのかもしれない。
さて、
航海といえば、コロンバンのではなかったかもしれないが、
フランスパンの窃盗を後悔してもしきれなかったのが、
ジャン・ヴァルジャンである。出所してからも
ヴァルジャンはアルジャントリを恩人から盗む。もっとも、
その後の人生はやつもガンバルジャンというほど
前向きに生きることになる。今日、
2012年4月3日は、Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴ)、1802-1885)の
"Les Miserables(レ・ミゼラブル)の第1弾が現行暦
1862年4月3日に発売されて150年めにあたる。当時、
ユゴは60歳だったが、共和派という政治思想と新作の内容のため、
ナポレオン3世の第二帝政下のパリにはいれなかった。で、
ベルギー経由で"Crown dependencies(英国王室属領)"に
トンズラしたのである。が、
新作の売れ行きがどうか「心つくし」たユゴは、パリの出版社に
手紙を送……(検閲されるから)れない……ので、
次のような符号で打診した。
「?」
すると、出版社はこう返信した。
「!」
これは「世界一短い手紙のやりとり」として
ギネスに登録されてるかどうかは知らない。が、
日本記録は、本多重次の
「一筆啓上。火の用心、お仙泣かすな、馬肥やせ。
始めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋とるな」、
追風参考、である!? 冗談はともかくも、
「?」は「売れ行きは?」という質問であり、
「!」は「売れ行き絶好調!」という返事である。ときに、
この「故事」を使った米映画があった。が、
拙脳なる私はそのタイトルをすっかり忘れてしまった。おそらく、
1960年代のC級青春映画の大スターだった
Troy Donahue(トロイ・ドナヒュー、1936-2001)が主演してたものだと思う。
邦題で「恋愛専科」あたりではなかっただろうか。
画中で、ナンパ(難破ではなく、男が女性に声をかけること)する際に、
ビーチの砂に
「?」
と書くのである。つまり、
「俺とデイトok?」
という意味である。が、
ナンパの成否ではなく、重要なのは、
「このユゴの逸話を知ってる」
というナンパする男とされる女性双方の、そして、脚本家の、
教養の高さ、だったのである。ところで、
日本の大学受験業界には、
「Z会」という添削通信講座があった。
東大合格者・京大合格者の数十パーセントもが利用してる、
というのが売りだった。そういう
難関大学に合格できれば将来は
ゼータくな暮らしが待ってる、
ということだったのかもしれない。ちなみに、
「z」が小ゼットだとするとそれを並字にすれば「Z」になる。
ともあれ、この
「?」や「!」などは、まだ写植だった頃の印刷・出版業界で
「約物(やくもの)」といって句読点や括弧などの記号を指した。
そのうちのいくつかは符牒が用いられ、
「?」は「耳だれ」、「!」は「雨だれ」、
と呼ばれてたのである。
「耳だれ」なんて慢性中耳炎みたいな名であるが、
「雨だれ」のほうは変に聞こえることもなく、むしろ
風情があると思われそうな言いかたである。
♪ミーー>ド・>ソーーー・・ーーーー・<ラーーー│
<シーーー・ーーーー・・ーーーー・<ドーーー│
<レーー<ミ・<ファーーー・・ーーーー・>ミーーー│
ミーーー・ーー>レー・・>ドーーー・(<レ)レ<ミ>レ>♯ド<レ<ミ<ファ♪
このショパンのピアノ曲は、
日産フェアレディZでもなければホンダ・プレリュードでもないが、
「耳垂れ」という愛称で呼ばれなくてよかった。
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