3月5日(火)尾高忠明 指揮 札幌交響楽団
~札幌交響楽団 東京公演2013 ~
サントリーホール
【曲目】
1. シベリウス/交響詩「フィンランディア」Op.26
2. シベリウス/交響曲第3番ハ長調 Op.52
3. シベリウス/交響曲第1番ホ短調 Op.39
【アンコール】
エルガー/弦楽セレナーデ ホ短調 Op.20~第2楽章
5年半ぶりに聴く札響。透明で柔らかい音色と繊細なタッチの演奏が印象に残っていて、また聴きたいと思っていた。尾高さんの指揮でシベリウスのプログラムというのも魅力的。
開演前、団員が入場する際に客席からずっと送られた拍手からは、北海道から遠征してきた優秀なオケへの敬意と歓迎の気持ちが込められているようでいい。さて、最初は「フィンランディア」。予想していたのとは違う、武骨なほどの逞しさが伝わってきた。各パートが熱く一丸となって突き進み、大きな力を生み出す。大地の底からグワングワンと沸き上がってくるようなエネルギーに圧倒されるパワフルな「フィンランディア」を聴いて、この先の曲目に、最初に抱いていたのとは別の期待も加わった。
続くは第3シンフォニー。弦のさざめきが大地の鼓動を伝える確かな刻みとなり、金管の雄大な調べが響いて、これぞシベリウス!的な命ある息遣いが感じられ、期待が高まった。だが、この曲では「フィンランディア」の乗りや押しだけでなく、柔らかな陰影やニュアンスがより求められるが、そうした表現に大切な木管のアンサンブルなどが平べったく聴こえてしまう。ここぞという聴かせどころでも「フィンランディア」ほどのパワーが発揮できなかったように感じた。それでも第3楽章終盤で持続するオルゲルプンクトではあの「大地の息遣い」が感じられ、なかなかの盛り上がりを聴かせてくれた。
後半の第1シンフォニーは、全曲を通して強い働きかけが伝わってきて、ぐっと引き寄せられた。最も特徴的に感じたのは、大きな息遣いで粘りのある熱い歌、それと音楽を先へ先へと推し進める強い力。今夜の席は2階RDブロックで、ステージからは一番離れていたが、演奏者の顔の表情がズームアップで見えるような「近さ」が、耳からだけでなく五感を通して感じられた。これは、楽員たちの前向きな姿勢がうまく一つにまとまって、実際の音に乗せられていることの証。このことがなぜかとても新鮮に感じられた。
これまでの札響の演奏から予想していたものとはちょっと異なる、もっと濃くてアグレッシブな演奏を体験した今夜の演奏会だったが、これは尾高さんの思い描くシベリウス像にも関係しているのだろう。このオケは、そうした指揮者の指向に敏感に反応し、アプローチを巧みに変化させる柔軟性も持ち合わせているようだ。アンコールで演奏されたエルガーは、かじかんだ手をそっと息で温めるような静かで心温まる素晴らしい演奏。尾高さんと楽員がこの曲を本当に大切にしているハートが伝わってきた。
札幌交響楽団 2007年東京公演 07.11.13 東京芸術劇場
~札幌交響楽団 東京公演2013 ~
サントリーホール
【曲目】
1. シベリウス/交響詩「フィンランディア」Op.26
2. シベリウス/交響曲第3番ハ長調 Op.52
3. シベリウス/交響曲第1番ホ短調 Op.39
【アンコール】
エルガー/弦楽セレナーデ ホ短調 Op.20~第2楽章
5年半ぶりに聴く札響。透明で柔らかい音色と繊細なタッチの演奏が印象に残っていて、また聴きたいと思っていた。尾高さんの指揮でシベリウスのプログラムというのも魅力的。
開演前、団員が入場する際に客席からずっと送られた拍手からは、北海道から遠征してきた優秀なオケへの敬意と歓迎の気持ちが込められているようでいい。さて、最初は「フィンランディア」。予想していたのとは違う、武骨なほどの逞しさが伝わってきた。各パートが熱く一丸となって突き進み、大きな力を生み出す。大地の底からグワングワンと沸き上がってくるようなエネルギーに圧倒されるパワフルな「フィンランディア」を聴いて、この先の曲目に、最初に抱いていたのとは別の期待も加わった。
続くは第3シンフォニー。弦のさざめきが大地の鼓動を伝える確かな刻みとなり、金管の雄大な調べが響いて、これぞシベリウス!的な命ある息遣いが感じられ、期待が高まった。だが、この曲では「フィンランディア」の乗りや押しだけでなく、柔らかな陰影やニュアンスがより求められるが、そうした表現に大切な木管のアンサンブルなどが平べったく聴こえてしまう。ここぞという聴かせどころでも「フィンランディア」ほどのパワーが発揮できなかったように感じた。それでも第3楽章終盤で持続するオルゲルプンクトではあの「大地の息遣い」が感じられ、なかなかの盛り上がりを聴かせてくれた。
後半の第1シンフォニーは、全曲を通して強い働きかけが伝わってきて、ぐっと引き寄せられた。最も特徴的に感じたのは、大きな息遣いで粘りのある熱い歌、それと音楽を先へ先へと推し進める強い力。今夜の席は2階RDブロックで、ステージからは一番離れていたが、演奏者の顔の表情がズームアップで見えるような「近さ」が、耳からだけでなく五感を通して感じられた。これは、楽員たちの前向きな姿勢がうまく一つにまとまって、実際の音に乗せられていることの証。このことがなぜかとても新鮮に感じられた。
これまでの札響の演奏から予想していたものとはちょっと異なる、もっと濃くてアグレッシブな演奏を体験した今夜の演奏会だったが、これは尾高さんの思い描くシベリウス像にも関係しているのだろう。このオケは、そうした指揮者の指向に敏感に反応し、アプローチを巧みに変化させる柔軟性も持ち合わせているようだ。アンコールで演奏されたエルガーは、かじかんだ手をそっと息で温めるような静かで心温まる素晴らしい演奏。尾高さんと楽員がこの曲を本当に大切にしているハートが伝わってきた。
札幌交響楽団 2007年東京公演 07.11.13 東京芸術劇場