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横山幸雄(Pf)/趙 静(Vc) ~横山幸雄 ピアノ・リサイタル・シリーズ Voyage

2013年03月06日 | pocknのコンサート感想録2013
3月6日(水)趙 静(Vc)/横山幸雄(Pf) 
横山幸雄 ピアノ・リサイタル・シリーズ Voyage
~ショパンからラフマニノフを結ぶ音楽の旅路~ 第5回 ラフマニノフ没後70年記念①~

三鷹市芸術文化センター・風のホール
【曲目】
1. ドビュッシー/チェロ・ソナタ ニ短調
2.ショパン/チェロ・ソナタ ト短調 Op.65
3.ラフマニノフ/チェロ・ソナタ ト短調 Op.19
【アンコール】
ラフマニノフ/ヴォカリーズ


横山幸雄が三鷹市芸術文化センターで行っているリサイタルシリーズで唯一ゲストと共演して室内楽をやる回を聴いた。これを選んだのは、趙静のチェロをじっくり聴け、曲目にも引かれたというのが大きいが、この機会に横山幸雄のピアノが聴けるのも楽しみのひとつだった。第一線で活躍する日本人ピアニストは大勢いて、みんな聴くわけにいかないので、何人かひいきのピアニストに絞って聴いているが、横山幸雄はその中に入ってはいないけれどずっと気になる存在だった。その横山さんのピアノを聴くにも、これは絶好の選曲。

最初のドビュッシーは、硬質なカキッとしたピアノに導かれて、チェロがサラっと入ってくるセンスがいい。しつこさのないドライなタッチで、手堅く全体をまとめ、上々の始動。

続いてショパンのソナタ。後半のラフマニノフもそうだが、チェロの名品の誉れ高いわりに演奏されることはあまり多くないので貴重な機会だ。横山さんは演奏される機会が少ない理由を最初のMCで「ピアノパートがたいへんだから」と紹介していた。そのショパン、横山さんのピアノは淀みなく流麗。優しく美しい音色で、手触りのいい上質な布地を織りあげてゆくよう。趙静さんのチェロはくっきりとフレージングを描きながら、ドビュッシーのときと同様に堅実に弾き進めていく。二人とも到って冷静な姿勢を崩さず、要所を押さえつつ息を合わせ、きれいにまとめた。けれど、何だかお手本のような演奏で面白味にはちょっと欠けるかも。趙静さんは、中国のアーティストによくあるような骨太の逞しさとか、アグレッシブな主張をするタイプではなく、引き締まったスタイルで集中力を高め、掘り下げて行くタイプに思えるが、もう一つ特徴がはっきり伝わってこなかった。

けれど、最後のラフマニノフではその持ち味がフルに開花した。この曲は演奏される機会が少ないなかで、去年、上村文乃さんのリサイタルで聴いた素晴らしい演奏が記憶に新しい。これを、今回はまた別のタイプの演奏で堪能することができた。趙静さんのチェロは、集中力に加え熱気も高まり、ドラマチックな展開を見せた。音色を様々に変化させるよりも、明確な色を基調にして勝負に挑むという感じで、そのブレのないアプローチが、前半に増して深く掘り下げて音楽の核心に迫っていった。

横山さんのピアノは相変わらず冷静沈着に見えるが、ポーカーフェイスでテンションをガンガン高めているように感じた。とてもスケールが大きく、ラフマニノフらしい濃厚なドラマを伝え、大きな波で音楽を揺さぶってチェロを焚きつけている。個人的には、ピアノももっと情念をむき出しにしてチェロとバトルする場面を見せてほしい気もしたが、冷静さを失わずに聴衆をどんどん熱くして行く一流の役者の顔を見た。チェロパートの音のあいだの隅々までピアノが入りこんで潤す様子も印象に残ったが、これは横山さんの耳の良さを物語っているのだろう。「横山幸雄リサイタルシリーズ」のタイトルを前面に出すだけのことはある存在感!

趙静/仲道郁代 ベートーヴェンのチェロ・ソナタ 07.5.30 JTアートホール
ブラームスのピアノカルテット(樫本大進・川本嘉子・趙静・小菅優) 10.6.10 紀尾井ホール

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