酒が飲める学園祭は年々減る一方… 負けるな藝祭!
藝祭2014 1日目 9月5日(金)
-KIKIT- 開幕のファンファーレ
トランペット科2年生によるTrumpet Ensemble
~第2ホール~
1.清水大輔/5 star shining
2.プーランク/犬飼伸紀編/フランス組曲~1,2,3曲
3.金子美保/アニメドレー
4.Z.アブレウ/関根哲郎編/Tico Tico
アンコール:犬飼伸紀編/バードランド
藝祭のオープニングにふさわしいトランペットアンサンブルのステージ。5本のトランペットが輝かしく鮮やかなサウンドを奏でた。華やかで颯爽としているだけでなく、柔らかなニュアンスも伝え、トランペットの魅力を硬軟織り交ぜて楽しませてくれた。
中でも最初に演奏した"5 star shining"は、美しいハーモニーと滑らかな歌い回しが際立っていた。速いパッセージも難なくこなして爽快!ピアノ、ベース、パーカスも加わった団員自らの手によるアレンジものも楽しかったが、ジャズのナンバーなんかは体の動きで「見せる」パフォーマンスも加えると、出てくる音も更に伸びてくるのでは?
E年オペラ:ドニゼッティ「愛の妙薬」
~奏楽堂~
3年生による藝祭のE年オペラ公演で「愛の妙薬」を観るのは6年ぶり。あの公演は今でも印象深いが、今回も素晴らしかった。まずこの公演が、一つのまとまったオペラ作品としての魅力を十分に伝えていたこと。魅力的なアリアやアンサンブル、合唱が散りばめられ、ストーリーも分かりやすく、コミカルな場面にも事欠かない。作品自体がコンパクトにとてもよくまとまってはいるが、このオペラに共感して楽しむには、オペラの各場面の見せどころ、聴かせどころでの歌い手達の出来もさることながら、合唱やオーケストラ、更にはステージ上での人物の表情や動きなど、あらゆる要素が大切になる。この公演では、それぞれの要素が映え、またお互いに生き生きと調和していた。それを実感し、納得しつつ楽しめた公演だった。
幕が上がって、まず美しいステージが目を奪った。藝祭のオペラ公演はこれまで思いっきりシンプルで物足りなかったが、今回は総合芸術大学ならではの持ち味を発揮した。そんなステージで歌い、演じたソリスト陣は誰もが与えられた責任をしっかり果たしていた。感心したのはどの歌い手も、自分の役のキャラクターの特徴をうまく表現していたこと。一つの役を幕ごとに2人で分担した場合は、そこにそれぞれの歌手の個性やアプローチの違いが見れたのも面白かった。
歌手陣で最も印象に残ったのは、2幕でアディーナを歌った小川栞奈さん。キリッと引き締まり磨かれた歌唱で、アディーナの細やかでかつエモーショナルな気持ちの移ろいを鮮やかに表現していた。全幕を通してドゥルカマーラを歌った下牧寛典さんは、朗々とした声と起伏に富んだ表現、そして体格や態度も適役で存在感を示した。出番は少なかったがジャンネッタ役で出演した福田夕華さんのしなやかで深みのある声と滑らかな表現力も光っていた。他の歌い手達も大健闘で、それぞれに印象的なシーンがあった。声と表現力に更に磨きをかけて更なる高みを目指して欲しい。
合唱もいい。瑞々しくボリューム感もたっぷり、一人一人の顔の表情も豊かで、集団としての動きも決まっていた。ソロと合唱の配置や動きも自然で、演出上のちょっとした気配りが生えていた。オケは最初は精彩と勢いに物足りなさを感じたが、場面が進むに連れてテンションが上がってきて、オペラでの重要な役割を果たした。キャスト、演奏陣、スタッフ全員の力で素晴らしい公演を実現した。楽しかった!
Rainbow
学部1年生によるフルート七重奏
~第2ホール~
1.レスピーギ/古風な舞曲とアリア 第3組曲~第1,3,4曲
2.モーリー/チェンジズ
フルート7人のアンサンブル。アルトフルートやコントラバスフルートも加わり、フルート属としての均質な音色と、澄みきった高音域からふくよかな低音域までの広い音域に渡るグラデーションで作り出される響きは、柔らかくて深みがあり、人の声のようにも聴こえて心地いい。それぞれのプレイヤーの淀みない呼吸と滑らかな運指がこのキレイなハーモニーと表情を生み出しているわけだが、2曲目の「チェンジズ」では、バレーボールのローテーションのように1曲ずつでポジションを変え、一人一人のソロも楽しめた。
Vox in caelum ~祈りの音楽~
~第1ホール~
1.ブリテン/みどり児がお生まれになった
2.ペロタン/この日こそ
3.デュファイ/めでたし天の女王
4.パレストリーナ/アヴェ・マリア
5.アネーリオ/スターバト・マーテル
6.モンテヴェルディ/父と子と聖霊に栄光あれ
7.M.ハイドン/地上は暗闇となりて
8.ブルックナー/正しき人の口は
9.ホルスト/アヴェ・マリア
10.グスタフソン/グロリア
11.ラター/一輪の花が
「祈りの音楽」と題し、17人の歌い手に、曲によりオルガンとチェロの伴奏つきで行われた演奏会、中世から現代まで、幅広い時代に渡る宗教曲が取り上げられた。人数編成を変えつつ、5度の音程を基調にした中世の音楽、ダブルコーラスや3群のコーラスを配し、音の3D効果で荘厳さを演出したルネサンスの作品、美しい歌とフォルムが浮き上がるM.ハイドン、多彩なハーモニーで細やかな表情を伝えるロマン派の作品… 時代によって異なる音楽様式を短いコンサートのなかで的確に演奏しただけでなく、作品それぞれの匂いが、風に乗って運ばれてくるようだ。
メンバー一人一人の、愛情ともいえる作品への共感と確かな表現力(声もみんなビューティフル!)を結集させ、素晴らしいアンサンブルに仕上げられた。最後に演奏したラターの「一輪の花が」も宗教曲だろうか。とてもプライベートでナイーブなラブソングのようにも聴こえ、心に深く沁みた。
邦楽大演奏会
~奏楽堂~
1. 雅楽:「千秋楽」
2. 尺八:松本雅夫/尺八三重奏曲「鼎」
3. 能楽:舞囃子「融」
4.生田流筝曲:沢井忠夫/二つの群のために
5.山田流筝曲:江の島曲
6.長唄・日本舞踊:長唄「神田祭」
いつもは前半か後半だけしか聴けない邦楽の大演奏会を今回は全演目鑑賞した。舞台も衣装もどれも本格的で、たっぷりと邦楽の世界に浸った。
宮廷の雅な世界に誘ってくれた雅楽、現代の作品を演奏して「ハーモニー」を楽しませてくれた尺八三重奏、スピリチュアルな世界を堪能した能楽、いろいろ楽しめたなかで特に今回印象に残ったのは生田流筝曲の演奏と、長唄・日舞の公演。
生田流筝曲は、琴と十七弦それぞれのソリスト+24名のメンバーの合奏による現代作品。ばちを用いるなど様々な奏法を駆使し、伝統的な筝曲や日本的な節回しを取り入れた現代邦楽とは異なる、シリアスな一方で情緒にも富み、幽玄の光がゆらめく独特の世界を作り上げていた。ソリストは白、合奏は黒という象徴的なコスチュームに身を包み視覚的にもアピール、弦さばきや呼吸の合わせも鮮やかで、琴という楽器の新たな魅力に開眼した気分。
最後の長唄は日本舞踊が加わった華やかな舞台に目も耳も奪われた。生の演奏をバックに日舞を観れる機会も貴重。舞いには総勢6人が登場し、入れ替わり立ち替わり優美でキリッとした身のこなしで生気溢れる舞いを披露。最後は祭り囃子の音曲も加わり、粋で芳しい江戸文化の華やぎのなかに身を置いた気分で心から楽しめた。
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